プロローグ


 何もない、しかし果てしなく広がっている世界、『彼女』がいるのはそんな場所であった。
既に年月という概念も忘れるほどの時間、そこに佇んでいた『彼女』が『彼女』たる存在を保持しえたのは2人への想いからであった。『あの方』と『あの女』、それぞれ相反するその想いだけを抱いて『彼女』はそこに存在していた。

 ある時、そんな『彼女』の周囲に既に忘れていた概念、『変化』が起きた。
2つの存在の衝突、そして、その片方に護るように寄り添う1つ存在…『彼女』はその成り行きを黙って見守った。やがて、一つの存在が弾け飛び、残った二つの存在は『彼女』の前から遠ざかっていく。
 しかし…
 その二つ存在から溢れ出している『光』は『彼女』にはとても眩しく近寄り難いものであった反面、その存在を見失わずに済むまさしく篝火となっていた。やがて、『彼女』は悟る。その存在が向かっている先がどこであるかを…

それはかつて『彼女』がいた場所…。

それは『あの方』がいるはずの場所…。

そして『あの女』がいるはずの場所…。

『彼女』はその存在に気づかれぬ様にその後についていく、幸いな事にその存在は進む事に集中しており、『彼女』には気づく余裕はないようであった。

そして、存在が掲げる篝火が一際大きくなり…

『彼女』も目指す場所へと降り立ったのである。

 これは、遠い遠い世界のお話…。
 そこはグラール太陽系と呼ばれる星系で、パルム、モトゥブ、ニューデイズの3惑星が太陽の周囲を周っており、ヒューマン、キャスト、ニューマン、ビーストの4種族が暮らしていた。その4種族間で長きに渡って続いてきた戦争の終結100周年を記念した式典の最中に後に『SEED』と呼ばれる生命体の襲撃が始まる。
 SEEDはSEEDウィルスと呼ばれる侵食細胞を放出して、それに侵された動植物は凶暴化させる性質がある、グラール太陽系は混乱の渦に晒されるが、4種族が互いに協力し、旧時代の遺産である封印装置を用いた『合の時』を発動させ、SEEDの発生源と目されたHIVEと呼ばれるコロニーを破壊したが、SEEDの残滓やヒューマン原理主義を掲げるイルミナスの破壊活動により、グラールは混迷の渦から抜け出す事が出来ず、それらの対応に奔走していたグラール最大の民間警護組織『ガーディアンズ』もイルミナスにその本拠地を破壊され、壊滅寸前に追い込まれる。
 しかし、新生したガーディアンズを中心に再び4種族はその力を合わせ、『真の合の時』を発動させてグラールに残った全てのSEEDを湾曲空間の彼方へ封印するに至る。

 これにより平和な日々を取り戻したかに思えたグラール太陽系ではあるが、SEEDとの戦いの傷跡は各所に深く刻まれ、また資源枯渇問題が各惑星の復興を阻む障害となっていた。

「SEED事変」と呼ばれるこのSEEDとの戦いから3年が過ぎたグラール太陽系、物語はここから始まる…



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