HIVE3号潜入ミッション

(ガーディアンズコロニー:「暗黒の惑星」&「SEEDの胎動」より)


 パルムにある同盟軍本部、その中である会議が行われていた。
「…という訳で、2号は『ルツ』と決まった訳だが…同時に発見された3号にもコードネームを決めたいと思う」
進行役の同盟軍仕官がパネルを操作すると、画面には元々は発電衛星だった『モノ』が映し出される。
「あれで終わりだと思ったんだがな…」
「2号に関しては既に攻撃準備が進められています。」
「しかし、2号にはガーディアンズの方から遠まわしではありますが、攻撃延期の要請がきるそうだが?」
「SEED事件の重要参考人がそこに潜伏している可能性が高いとかなんとか言っていた奴か?それこそ、そやつごと攻撃してしまえばいいのではないか」
「ランディール号が単艦潜入したとの未確認報告もあるが…」
「なら、尚更…ではないかな?」
「え〜、2号に関しては担当士官が既に準備に入っていますので、それくらいに。今は3号のコードネームの件を…」
話が脱線しかけていたのを進行役仕官が補正をかける
「候補には何があったかな?」
仕官の質問に進行役仕官がパネルを操作すると、映像の横に幾つかの名前が列挙される。
「『ライア』なんてどうだ?」
「しかし、いきなりダルガンの娘の名前を使うのは…」
「『ルウ』や『マガシ』は?」
「前者もガーディアンズへの配慮があるだろう?後者も残党の反発を招く恐れがある」
「あの『マヤ』てのはなんだ?」
「ああ、あのイーサンと親交のあるニューマンのガーディアンです。じつにけしからん娘です」
「けしからん?」
「ええ、性格もですが、体の一部が特に…」
「そうか、ならばこの『マヤ』にするか?」
「いや、その名前を使うのはどうかと!!」
「どうしたのかねカーツ大尉?やけに力が篭っているようだが?そういえば、君もイーサンとその仲間とは交友があったようだな」
「いえ、我が対SEED177遊撃隊は彼女に対して貸しがありますので…決して個人的感情によるものではありません!!」
「ならばよいが…なら、君ならどの名前にするかね?」
「では、僭越ながら、その一つしたの名前を推したいと思います!!」
この会議の後、同盟軍の関係者に通達されたHIVE3号のコードネームは『ルミナス』となっていた。

 ガーディアンズ・コロニーの中にあるガーディアンズ本部、その一角になぜか存在する黒コート愛好会本部のミーティングルームに一番、二番の隊長が呼ばれたのはある日の事であった。
一番隊隊長のジャバウォックはビーストの特性を生かしたその戦闘力で愛好会の突撃隊長の異名を欲しい侭にしている。
一方、二番隊の封神はヒューマンだが、ツインセイバーやダブルセイバーでの近接戦闘と、双銃を主に使った中距離戦闘を自在にこなし、状況に応じた対応に定評がある。その戦闘スタイルから組むことが多く、その戦果も十分評価に値する二人であるが、隊内ではこの二人に関しては「ナンパコンビ」の方が通っているのも事実である。
 そんな二人がミーティングルームで待機していると、局長のレニオスと副長のゼロが入ってきた。待機していた二人と軽く挨拶を交わしたレニオスは即刻本題に入った。
「お前達二人を呼んだのは他でもない、一番隊と二番隊に2週間の休暇をとってもらおうと思ってな…」
『休暇!?』
異口同音に聞き返した二人にレニオスは黙って頷く。すると…
『おっやすみだ、あっそれっ、お休みだぁ〜』
踊りだす二人…暫くそれを苦笑しつつ見ていたレニオスであったが…
「うるさい」
鉄製の円盤型灰皿をサイドスローで投げると、それは空中で二手に分かれてそれぞれの眉間に縦にヒットする。額を押さえて席に座る二人。
「いたたたた、きょ、局長…ここって禁煙なのに、なんで灰皿があるんです?」
「細かいことは気にするな、休暇と言ってもそれはある任務についている間の表向きの話だ」
「表向きって…、結局はお仕事の話ですか」
レニオスの言葉に肩を落とす封神。
「ああ、今回の任務は極秘であることを先に言っておく。その為にガーディアンズ的には休暇をとって旅行にでもいっている事にしてもらう。」
レニオスがそういって机のパネルを操作すると、部屋の壁に張ってあるスクリーンにある『モノ』が映し出される。
「あれ?それって…HIVEですか?」
ジャバウォックの言葉に頷くレニオス。
「そう、今回はこの内部に潜入し、中心部にあるAフォトンリアクターを抑えてもらう。それが、今回の特命だ!!」
「って、局長…なんで副長を指差すんです?」
「…深い意味はない、気にするな。兎に角、3日後にゼロの指揮のもとコロニーを出発。両名共にこの後隊員に通達を行い、今日中に全員の休暇届を俺に持って来い。遅れた場合は書類へのハンコ押しを全てやらせるからそのつもりで、以上だ!!」
『了解!!』
レニオスは二人の声を背にミーティングルームを出て行った。

 3日後…
「しっかし、同盟軍も怖いもの知らずだよなぁ…」
窓から見えるHIVEを眺めつつジャバウォックは呟いた。
「何がです?」
隣の席に座って、ミッションプランの確認をしていた副隊長が端末の画面を見たまま尋ねる。
「いや、あれのコードネームさ…『ルミナス』なんて名前つけちゃってさぁ」
「本人聞いたらどうしますかね?」
「とりあえず、本部の担当者のとこに殴りこむんじゃないかな?」
「担当者だけで済めばいいですけどね…」
「まったくだ…」
『アハハハハ』
等と言っている内に、シャトルはHIVEに接岸する。同盟軍からの資料によると、まだ攻撃機能は備わっていないらしく、後数日もすればこうはいかないとの事であった。
「別ポートにそれぞれ同盟の部隊と二番隊も到着したようです」
通信担当の隊員がジャバウォックに報告する。同時に二番隊に同行しているゼロから中央部への進入指示がきた。ジャバウォックは副隊長に指示を出して、シャトルの防衛要員と通信確保要員、そして4人一組の進入組3組へと隊の人員を割り振る。
「では、作戦開始だ!!」
ジャバウォックが槍を振り下ろすと、進入組の隊員がポートにある自分の担当となった各扉の中へと入っていった。

 一時間後…
「さて、どうしたものか…」
ジャバウォックは『一人』HIVEの通路を歩いていた。
「まさか、一方通行のワープなんてあるとはなぁ〜」
途中にあったワープに先陣を切って入った所、一人専用一方通行なワープだったらしく、部下とは分断されてしまったジャバウォックである。なんとか通信で無事は確認し、それぞれのルートで作戦は進行する事となったが…。
「さすがに一人ではちときついなぁ」
今のところ大丈夫ではあったが、SEEDフォームが数に任せて襲ってきており、精神的にもかなりまいっているのである。
「さてさて、どうしたもんかなぁ〜」
と、通路を曲がると…
「おや、ジャバじゃないか」
封神とゼロがT字路の正面からやってきているのが見えた。
「…なんでここに?」
「って、途中合流するようにミッションプランを設定したはずだが?」
ジャバウォックの問にゼロが即答する。ジャバウォックははぐれた副隊長にその辺は全て任せた為に覚えていなかったのである。
「で、ジャバは一人か?部下はどうした?」
「ははははは、はぐれてしまって…」
「途中のワープは全員が乗ってから起動しろと言ったはずだが、一人で乗り込んだか?」
「ふきゅ」
ゼロの指摘に何も言えなくなるジャバウォック。その様子に肩をすくめる封神。
「まぁ、いい…向こうのルートも最終的には合流できるはずだ。こっちは3人でいくか」
『了解』
と、3人で歩き出す。…と、数歩進んだところでジャバウォックが歩みを止める。
「…どした?」
封神が振り返って尋ねる。ジャバウォックは腕を組んで頭を傾けている。
「いや、そういえばそっちはどうして二人だけなんだ?と思って」
「そりゃ、副長がワープを起…」
「予定通りだ!!」
封神が言いかけた言葉を遮る形でゼロが言い放ち先へと進むのであった。

 扉を開けると、そこは広い空間になっていた。
「いかにも、何か出ますって感じの空間ですね」
ジャバウォックが斧を取り出して広場を見渡す。
「だよなぁ〜」
「いくぞ」
ゼロが広場に入ると…目の前に黒い霧が立ち込め、四足獣の背中に鎌の様な腕を持った人の上半身がついたSEEDフォームが現れた。
「うわぁ〜、でかいのがでたなぁ」
ジャバウォックが苦笑しつつ突撃する。そして突進してきたSEEDフォームと正面からぶつかる。その腕を斧で受け止め、暫しの力比べの後その巨体を弾き飛ばす。そのまま後ろに下がってジャバウォックは左右を見ながら呟く。
「こいつは手強いな…、二人共ここは俺に任せて先に行ってくれ」
『もとからそのつもりだ、がんばれジャバ』
異口同音に応えてSEEDフォームの脇を駆け抜ける封神とゼロ。
「って、あれ?うぉい!?本気かよ!!」
ジャバウォックの言葉にゼロは振り返り、
「ジャバ、後から必ず来るんだぞ、待っているからな」
「そこ!!妙なフラグを立てない!!うぉ」
ゼロを指差して叫ぶジャバウォックの前をSEEDフォームが駆け抜ける。と、ゼロの後ろで扉を調べていた封神が、
「副長、この扉ロックかかってますね、あれを倒さないと進めないようです」
「あらら…」
暫し顔を見合わせた後、同時にジャバウォックと戯れているSEEDフォームを見た二人は、
『ちっ』
「なんだ!!本気でその残念そうな顔はぁぁぁぁぁ!!」
ジャバウォックの抗議を無視して、二人はそれぞれの得物を手にSEEDフォームに攻撃を始めるのであった。

 巨大SEEDフォームをかろうじて倒した3人は、そのまま通路を進んでいく。その後SEEDフォームの攻撃が激しくなり、ゼロも軽口を叩くこともなく、浄化に専念するようになった。定時連絡では他の組も同様であるらしいが、負傷者が出てるものの、なんとか想定のルートを進めているらしかった。
「にしても…」
「どした、ジャバ?」
「いや、どうも攻撃が効き難いSEEDがいるんだが」
ジャバの疑問にゼロが
「なんでも打撃や法撃に耐性があるSEEDがいるらしいな、他の惑星の原生生物にも時折見られる特性らしいけどな」
「ほうほう」
等と言っている間にも、両腕が翼になったSEEDフォーム数体が襲い掛かってくる。
「!?って、こいつもかよ!!」
ツインセイバーで斬りかかった封神がその手応えに、一度間合いを外す。その足元に何かが転がってくる。ゼロの仕掛けたトラップが炸裂し、周囲が炎に包まれる。その炎に巻き込まれたSEEDフォームが苦痛の咆哮を上げる。
「ナイス、ゼロにゃん」
炎の中を突き進み、SEEDフォームに斧の一撃を叩き込むジャバウォック。よろめいた所を更に封神がツインセイバーで止めを刺す。が、顔を上げた封神の目に映ったのは今倒したタイプのSEEDフォームが5体こちらに向かってくる姿であった。
「やべぇな、こりゃ…」
封神が呟いた時、SEEDフォームを横手から一斉射撃が襲う。見ると別の扉の入り口に一番隊の副隊長達がライフルを構えていた。
「あいつら、美味しいぜ」
封神の横でジャバウォックが苦笑交じりの呟きを漏らす。更に後ろからは二番隊の隊員も到着した。
「よ〜し、数で一気に押すぞ」
ゼロの号令の元、黒コートの面々が一斉にSEEDフォームへの攻撃を始めた。

「全員、装備の確認は済んだか?」
中央制御室と書かれた扉の前でゼロが一同に確認を促す。この扉の向こうにAフォトンリアクターがあるはずなのである。全員が各々の装備とそのフォトン残量を確認しOKのサインを隊長に送る。全員分のそれを確認し自分の装備も確認した上で、ジャバウォックと封神はゼロにOKのサインを送る。
「おっし、俺は観戦してるから、みんながんばれ!!」
親指を立てて激励を送ったゼロに
『あんたもだ!!』
ジャバウォックと封神の蹴りが入る。その勢いで扉が開き、なし崩しに部屋に飛び込む黒コートの面々。そこにあったのは…
「ははは、リアクターを取り込んだSEEDフォームってか?」
元は何かの作業用アームであったであろう両腕をふりあげて地面に叩きつけているSEEDフォームが今度はその中心部、口のように見える部分にフォトンを収束し始めた。
「散開!!」
いち早く我に返ったゼロが号令を出し、その元左右に散る黒コート。直後、フォトンビームが黒コートが元々いた場所を貫く。
「ジャバと封神がフォワード、一番隊はその援護、二番隊は俺と共にバックスに回れ…総員かかれ!!」
『了解!!』
黒コートの面々がそれぞれのポジションに散り、攻撃を始める。ジャバウォックの斧が、封神のツインセイバーがSEEDフォームの腕を掻い潜りながらそれぞれ、攻撃を加える。
と、SEEDフォームは半球状のフィールドを展開する。そのフィールドに斧が弾かれるジャバウォック。ジャバウォックとが、隊員の一人が巨大な腕に攻撃が効くのに気付くと、二番隊は左右の腕に攻撃を開始する。やがて、腕が根元から下に落ちるとフィールドも光を失った。
『チャンス!!』
封神とジャバウォックが同時攻撃でそのSEEDフォームは自らの体で起きる小爆発に苦悶の声を上げながら、倒れこんだ。

 暫くSEEDフォームの前で様子を伺っていたが、復活の気配が無い為、ゼロはAフォトンラクターの停止作業に入る。
「ほい、ほい、ほほいっと、で完了っと」
ゼロの操作で周辺に低く響いていた駆動音が停止する。
「任務完了だ。撤収準備」
「はいはい、帰りましょう〜」
「おいおい、本部に帰るまでがミッションだぜ」
談笑しながら撤収準備を始める黒コート達であった。

 パルムにある同盟軍本部、その中である会議が行われていた。
「あの『ルミナス』の潜入ミッションを成功させたガーディアンのチーム、あなどれないぞ」
「我が軍の潜入部隊を完全に出し抜いてミッションを成功させたという奴らか」
「誰が指揮をしていたんだ?」
「確かレニオスとか…」
「丁度いい、4つ目の名前はそれにしよう…」
「で、今度は同盟軍だけでミッションを…」
会議はその後も暫く脱線を挟みながら続くのであった。


メインメニュー 奮闘記メニュー 戻る


inserted by FC2 system