第10章 イルミナスの野望(後)〜闇が深くなるのは…〜

(ストーリーモード:「イルミナスの野望」より)


ホルテスシティ・・・
ホルテスシティの市街地での戦闘は収束しつつあった。そんな中、アルトとオクリオル・ベイが同盟軍本部入り口に築かれたバリケードの前にいた。
「とりあえず、これで同盟軍本部の閉鎖は完了したな・・・」
「ですねぇ、カーツ殿の177部隊が上がってしまったのが、こちらにとっては運が良かったですがねぇ・・・上に押し付ける形になりましたね」
「ま、そればっかはしょうがないさ、ルミナスやてんて〜がいるんだ。案外戦艦を、コロニー接近前に撃沈したりしてな」
アハハハハと笑いつつ、「洒落になってない」と思う二人であった。

居住区、宇宙船ドック入り口・・・
「だから、動くのはいやなんだ・・・」
レニオスが柱にもたれ掛って座っている、その視線の先には、黒コート愛好会の突撃隊長を自認するビーストが残った同盟兵を相手に暴れている。
「残敵はジャバ達にまかせるとして・・・ん?」
呟いたレニオスの前にルミナスがやってきた
「何か御用で?」
「同盟軍の空挺部隊が他の箇所から潜入に成功したらしくて、避難民の誘導とシェルター防衛の指示が来たわ」
「やれやれ・・・今日は超過勤務だな」
立ち上がろうとしるる、ふと見た天窓のパルムが視界に入りレニオスの動きが止まる
「パルムってあんなに大きく見えていたっけか?」
「ほら、さっさと動く!!」
「はいはい」
レニオスはそれを気のせいと判断した・・・

ガーディアンズ本部・・・
ラドルスとりりなは見知った人物との戦闘中であった。
「なんで玄関前にこの人がいるんだよ!!」
叫びつつ、ネーヴの拳を剣で逸らすラドルス。受け止めたら刀身が保つかどうか分からない・・・
「お出迎えって訳じゃなさそうですけどね・・・」
牽制の為にノス・ゾンデを放ちつつりりな、その雷球は拳で消滅させられている。数分前、ガーディアン本部に入った二人の前に、身構えた姿勢でネーヴが立っていた。驚きつつも動かない事を確認し、通り過ぎようとした途端、襲ってきたのである。
「止まっていたのは、突発性機能停止症候群・・・でしたっけ?あれだったようですね・・・ふきゅ!!」
りりなの言葉の最後にネーヴの攻撃が重なり、りりなが悲鳴をあげつつ回避する。避けつつも、ギ・バータを発動させるあたりは流石である。
「まさか、倒す訳にもいかないし・・・」
「倒せるんですか!?」
「いんや・・・今、かなり真面目にやってて、これだもんなぁ」
なんだかんだでまだ余裕ありそうだなぁ、とりりなは思うのであったが、りりな自身も攻撃テクがかわされ続けて、上手く足を止めることができないでいた。
と・・・、ネーヴの動きが止まり、ラドルス達に背を向けて奥へと走り出した。
「どうしたんだ?」
と後を追おうとしたラドルスとりりなの耳に男の悲鳴が聞こえた。見ると、エレベータの中から、数人のニューマンが傷だらけでこちらに向かって走ってくる。
「たたたたた、助けて〜、SEEDフォームがぁ〜」
そう言いながら、ニューマンの一人がラドルスの背中に隠れる。と、エレベータからパノンがこちらに向かってくるのが見えた。情けない、と思いつつもそのニューマンが確か総裁の秘書の一人だったという事を思い出し、しょーがないと片付ける。確か名前はクラ・・・
「ラド様!!」
思考がりりなの声で止まる。パノンだけでなく、他のSEEDフォームの姿が見えるが、数が少々多くなってきていた。
「時間稼ぎか・・・」
ニューマン達を庇う形で立ち、剣を構えるラドルスであった。

ラドルスとりりなはSEEDフォームを掃討したものの、かなりの時間が経っていた。
「コロニー内は同盟軍とSEEDでひっちゃかめっちゃかな状態よ、本部からここまで非戦闘員が来るのは危険なんだけど・・・」
通信機でルミナスがそういって考え込む。どうやら、護衛をまわす余裕もないらしい。
「わかった。なんとかする・・・」
「あ、それと・・・」
りりなには一瞬表情がこわばったラドルスが見えただけで通信の内容は聞こえていなかった。そして、「それ」を聞いたラドルスは・・・
「りりな、頼みがある・・・」
「なんでしょ〜」
トテテテテと駆け寄るりりな
「一階のシェルターへ彼らを連れて行ってくれ」
「・・・!?ラド様は・・・、どうされるんですか?」
「本部に残っている人がいないか確認・・・」
「嘘です!!一人で行くつもりですね」
「・・・ま、そんなところだ・・・」
りりなは目に涙を浮かべつつ、ラドルスを睨む。が、突然ブンブンと頭を振って無理やり笑顔を浮かべる。
「了解しました。でも、すぐに戻ってきますからね、無理しちゃダメですよ」
そんなりりなの頭を撫でながら・・・
「無理するのは俺の趣味じゃないのは知ってるだろ?」
「えへへ、知ってます」
と、そのままラドルスに抱きつくりりな
「・・・無茶なんかしたら、半年はコーヒーあげませんからねぇ〜」
「・・・そりゃたまらんなぁ、いい子にしてるよ」
絶対ですよ〜と、何度も念を押しつつ振り返りながら、りりなはニューマン達を連れて本部を出て行った。それを見送った後、ラドルスは通信機でルミナスを呼び出す。
「あ、ラドさん。もう少ししたら、黒コートの連中から何人か・・・」
「いや、りりなを付けて今そちらに向かわせた。出迎えを頼む・・・」
「りりなちゃんだけ・・・って!!無茶する気でしょ!!」
「りぃといい、ルミルミと言い・・・無茶は俺の趣味じゃないさ。でも念の為に・・・なんかあったらりぃを・・・」
「あ〜あ〜、見えない〜、聞こえなぁ〜い」
画面に目を瞑って、耳を塞ぐルミナスが映る。
「なんにも見えないし、聞こえないから、ちゃんと戻ってくるように〜以上〜」
そのまま画面が消える。暫くその灰色の画面を見つめていたラドルスだったが・・・
「はいはい、了解しましたよ」
そう呟いてエレベータを降りていった。

「まったく・・・」
通信機を切って、ルミナスは周囲を見回す。ここはシェルターの入口、同盟空挺部隊とSEEDフォームの混成部隊が断続的にやってくる為、それを防戦しているレニオス達がいる。
「レニしゃ!!りりなちゃんが非戦闘員を連れてくるから、諸々よろしく!!」
「やれやれ・・・まったく、ラドの奴は・・・」
ルミナスの「諸々」を理解し、ゼロを呼び出して指示を出し、数人を出迎えに向かわせる。
「ま、これでりりなに恨まれるのはゼロの奴っと・・・」
「・・・レニしゃ・・・」
自分もその役をやりたくなかったのでレニオスに振った以上、余り文句の言えないルミナスであった。
―――ゼロ達がニューマン数人と当身で気絶したりりなを連れて帰ってきたのは暫く後の話である。

総裁の執務室に向かう途中には待合室を兼ねたロビーがある。そこの扉を開けたラドルスだったが、丁度執務室側の扉が開いた。
「ん?まだ人がいたのか?」
そこから出てきたのは、白いコートを着た褐色の肌の男でかなりの長身である。顔には目の下辺りに真横に傷跡があり・・・マガシにそっくりであった。
と、そこに考えが至った時点でその男が誰か分かりソードを構えるラドルス。
「・・・ハウザー!!」
その男の名前を叫びつつ、ラドルスは突進していく。
「ガーディアンがまだいたか・・・仕方ない相手をしてやろう!!」
と、ハウザーの周囲の空間が揺らぐ。その雰囲気をラドルスはここ最近、嫌というほど感じたことがあった。
「SEEDフォーム・・・いや、そんなモノじゃないな・・・」
そのままソードを振るうが、その直前にハウザーの姿が霞のようになって消える。
「なに!?」
ソードを振り下ろしたままの姿勢のラドルスの背後から声がかかる。
「何を余所見している。私相手に余裕な事だ・・・」
背中に灼熱感が生まれ、そのまま吹っ飛ばされるラドルス。が、壁に当たる直前でどうにか受身を取り、転がりつつも体勢を立て直す。
「ほう、少しは出来るようだな・・・」
片手を突き出したままの姿勢で唇の片方を吊り上げるハウザー。と、再びその姿が消え。今度はラドルスの頭上に現れ、そのまま蹴りを入れようとする。ラドルスはソードを手放し、セイバーを振り上げそれを迎撃する。蹴りは防いだものの、ラドルスの手には重い衝撃が走った。再びソードを拾い構えるが・・・それをナノトランサーにしまい、別のソードを取り出す。ラドルスの手の先でヒュージカッターmk2がフォトンの白い刃を展開する。
「対SEED用のソードか、面白い物を引っ張りだしてきたものだ・・・しかし!!」
ハウザーの姿が三度消え、ラドルスの横に出現、回し蹴りが背中に入り、ラドルスはまた吹っ飛ばされる。
「私に当てる事ができなければ意味はないなぁ〜」
腕を組んで、不適な笑みを浮かべるハウザー。
「くっ、まさか相手が人間辞めてるとは思わなかったな・・・」
そう呟きながら立ち上がり、ヒュージカッターmk2を構えた直し、ハウザーを見た時、ラドルスの脳裏に根拠のない考えが浮かんだ・・・
「あいつ、人間を辞めたんじゃなく、まさか・・・」
と、ハウザーの笑みが視界一杯に広がる。反応し、剣を横薙ぎにするが、ハウザーの右手がそれを掴む。その掌にある紫のフォトン光が剣の白いフォトンとぶつかって火花をあげている。
「・・・お前、人間'だった'のか?」
「・・・ふっ、ご想像におまかせしよう」
「・・・そういう事か・・・全くこれこそ、俺の趣味じゃないな」
ラドルスが剣の石突にあるスイッチを入れると、ソードの刃が拡大展開された。
「なに!?」
小爆発の後、ハウザーが右手を押さえて飛び下がる。その機を逃さず、ラドルスが走りよち、大上段から一撃を叩きつける。フォトンの刃から粒子が星の様に流れその刃の軌跡を描く。ハウザーが左の掌を突き出すと、そこからフォトンの粒子ビームの様なものが出される。それは刃に当たり、ラドルスの体をよろめかせた。
「テクニック、いや、違うな・・・しかし!!」
そのまま、体勢の建て直しの勢いを利用して、右から剣を横薙ぎする。ハウザーはそれを右腕で防ぐ、右腕に剣が食い込むが、斬りおとすには至らない。一度刃を収め、そのまま間合いを開くラドルス。
「くっ、遊びが過ぎたようだな・・・!!」
ハウザーの腕が突然伸び、ラドルスの体に拳を叩きつける。また吹き飛ばされ、今度は壁に叩きつけられるラドルス。床にずりおち、よろめいた体に反射的に出した左手が懐から落ちた何かにあたる。見ると、ヒュージカッターmk2用のオプションパーツとして一緒に入っていた小型ジェネレータである。対SEED用のモノと説明書には書いてあったが、その機能は一か八かなんてものではなかった。が・・・
「今は、そんな事言ってられないな・・・。まったく、本当にこんな役は柄じゃないってのにな・・・」
そのジェネレータを剣に取り付け、立ち上がるラドルス。
「ほう、まだ立ち上がれるか・・・むっ」
その表情が周囲の空気、いやフォトンの変化に気づき、変わる。
「なんだ、このフォトンが抜けていく感覚は・・・貴様、何をした!!」
その視線の先では、ラドルスの持つ剣が徐々にそのフォトン濃度を高めていっていた。その柄には[L.F.S]との表示が点滅している。
「くっ、周囲のフォトンを全てって・・・持ち手のもなのかよ・・・」
急激な脱力感がラドルスを襲っている。意識が飛びそうになるが、ここで意識を失う訳にはいかなかった。
「これ以上は私でも少々まずい・・・ここで終わらせて貰う!!」
ハウザーが両手を突き出し、そこにフォトンが凝縮されていくのがラドルスでも分かった。
「あいつのフォトン粒子攻撃は剣で弾けるのはさっきの攻撃が刃に当たった事で証明済み、ならば・・・」
ラドルスは体の力を抜き、剣を構える。やや前屈姿勢となり、カウンター攻撃の体勢となる。
「これが貴様へのレクイエムだ!!」
ハウザーの両手から2本のフォトンビームが発せられる。駆け出し、衝突の直前でそれを剣の刃で防ぐラドルス。衝撃でよろめきそうになるが、徐々に間合いを狭めていくラドルス。
「悪あがきはよせガーディアン、滅びの運命には逆らえないのだ!!」
ハウザーが高笑いをする。
「あいにく、運命なんてものは信じてないのでね!!」
ヒュージカッターが負荷に耐え切れなくなり、小爆発を起こす。が、その直前にラドルスは剣を捨て、そのまま前屈姿勢のまま、数歩先のハウザーの懐に入る。
「なに!?」
「終わらせてもらうのは、そっちだ!!」
ラドルスの手の中にナノトランサーからカリバーンが転送される。そのまま、振り上げた時には、刃が展開されていた。そして、その数秒後、ラドルスの後方にハウザーの両腕が音を立てて落ちた。ラドルスはそのまま、ハウザーに斬りかかろうとしたが・・・一気に力が抜け、視界がぼやける。
「くっ、まだ・・・もう少し・・・なのに・・・」
「くっ、ここは一旦下がらせて貰うとするか・・・」
なんとか意識を保とうとしているラドルスの前でハウザーは元来た扉から姿を消した。

数分後・・・
「なんとか、歩けるようにはなったか・・・」
剣を片手にハウザーの消えた扉をくぐるラドルス。まだ走ることは出来ない・・・。よろめきながらも、総裁の部屋に入るラドルス。そこは無人で、戦闘の後があった。そして奥の扉が開いたままとなっている。
「こっちか?」
その先はエレベータがあり、そのまま最下層まで降りるラドルス。エレベータの中で徐々に体力が戻ってくる。エレベータが到着し、ドアが開くが、そこはシャッターが閉まっていた。
「この先は・・・中央制御区画か?」
端末で確認しようとしたとき、通信機が電波を拾った。雑音の中、聞き覚えのある声が微かに聞こえる。
「総裁?そして、ライア???」
それを聞こうとしたラドルスに背後から当身が入った。
「ぐっ」
「全く、探したぞ・・・」
薄れいく意識の中、ラドルスの視線はフィレアの姿を捉えていた。

ホルテスシティのガーディアン支部前・・・
「コロニーが落ちる・・・」
空を見上げたアークの視線の先には、夕暮れで赤く染まりかけた空を流れる火の玉があった。

居住区画シェルター前・・・
「残敵の掃討に入れ!!居住区画の安全確保が最優先だ。その後、行方不明者、要救助者の捜索にはいるぞ!!」
レニオスが黒コートに指示を出している。それを見ているルミナスの膝の上では泣き疲れたりりなが眠っていた。
「あのへっぽこはなんだかんだで大丈夫だと思うよ、りりなちゃん・・・」
その呟きにレニオスの声が重なる
「おい、この行方不明者リスト、ラドルスの名前は消しとけ」

'元'ガーディアンコロニー宙域
「ハウザー様、ガーディアンズコロニーがローゼノムに落着しました」
同盟軍の戦艦の中で黒い姿の同盟兵の報告を聞きながら、'両腕を組んで'立っているハウザー
「これで、本格的に事を進められるな・・・」

グラール太陽系のどこか・・・
「コロニーに上がってからの状況報告は以上ですわ、お姉さま。後は荷物を届けてお終いです」
星間航行用シャトルの中、フィレアがヘルシンゲーテに報告を行っていた。
「お疲れ様なのですよ〜。しかし、これから忙しくなりそうなのですよ〜」
「まずは、ルウの再起動ですね」
「なのですよ〜、あれが動いてないと、ガーディアンズのシステムは何もできなくって大弱りなのですよ〜・・・っと」
「どうしました?お姉さま」
「まずは、仕事の後の一服なのですよ〜」
通信機の画面に、タバコに火を点けるヘルシンゲーテの姿が映った。

ガーディアンズコロニー居住区画・・・
ガーディアンの宿舎、ラドルスとりりなの部屋の扉が開き、りりなが入ってくる。
その部屋は緊急コールが鳴った直後の状態のままだった。
テーブルに眠気覚ましと、ラドルスが少しだけ口をつけたコーヒーカップがそのままになっていた。
「せめて、流しにおいて置いて欲しかったですよ、ラド様・・・」
と言いつつ、それに口を少しつけるりりな。
「苦いです、ラド様・・・」
宿舎の玄関でルミナスとリーファはその様子を見守るしかなかった。

ガーディアンズコロニーの落着を狼煙としたかのように、イルミナスの破壊活動が始まり、更にSEEDが最飛来する・・・
グラール太陽系はガーディアンズ壊滅の中、混乱の一途をたどっていた・・・


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