第8章 イルミナスの野望(前)〜ホルテスシティ防衛戦

(ストーリーモード:「イルミナスの野望」より)


ホルテス・シティ
惑星パルムの首都でもあるこの都市には西部には同盟軍の本部、東部にはガーディアンズのパルム支部がある。その同盟軍の本部を中心に暴走したキャストが破壊活動を開始し、更にマシンナリーもそれに加わり、ホルテス・シティは市街戦真っ只中となっていた。
そのホルテス・シティのシャトル発着場の前も例外ではなく、バリケードを築いて防戦するガーディアンズと同盟軍を中心とした暴走キャストとの戦闘が繰り返されていた。
「レイン!!応援は後どんだけくるんだ!?」
アルトが同盟軍の白兵戦部隊のキャストをナックルで殴り倒しながらバリケードの向こうにいる相方に向かって叫ぶ。今の彼の任務はパルムに降下予定のシャトルが全部到着するまでのステーションの確保であった。
「後2機・・・いえ、さっき到着したようだから、残り一機、それも着陸態勢に入ってるわ」
「ライアさん達は!?」
「ついさっき、入れ違いにモトゥブとコロニーに向かって発進したわ」
「おっし、そんじゃ後はその重役出勤なシャトルを待つだけか」
と言っている間にも、ステーションからビーストとニューマンとヒューマンの男3人が出てくる。
「遅れてすまない」
そういってアルトの横を駆け抜けていくヒューマンの男、アークが駆けつけ3人とばかり得意の双銃でキャストを次々に仕留めていく。ビーストの男、蒼が斧でそれに続いたが・・・
「あれ???」
ニューマンの男、ネツマッセが杖をかまえた所で顔をしかめる
「どうしました?ネツマッセさん」
レインがその様子に気付いて尋ねる
「いや・・・具体的な表現ができないんですが・・・鳥肌が立つような、空気が一瞬不快な感じになったんです・・・」
「調子が悪いのなら、本部に下がられた方が・・・」
「いや、大丈夫大丈夫」
と、レインと共にテクニックで援護を開始するのであった。

ホルテス・シティ上空
「くそっ、こっからでも戦闘の火が見えるってことは、結構大規模な戦闘になってるぞ・・・」
ラドルス機首カメラの映像を見て叫ぶ、ホルテスシティからは煙だけでなく、火や爆発がちらほらと見えている。
「落ち着け、お前が焦った所でどうしようもない」
フィレアが腕を組んで座ったままラドルスをたしなめる
「・・・すまない」
椅子に座りなおしつつも、組んだ腕の片手がトントンと肘掛を叩いているのをりりなはじっと見ていた。
と、シャトルが何かの衝撃で大きく揺れる、と同時に
「着陸体勢に入りますのよ〜、総員対ショック姿勢を取るのですよ〜」
スピーカーから、ヘルシンゲーテの声が響く
「ちょっとまて!!対ショック姿勢ってなんだよ!?しかも、なんか揺れてるぞ!!」
ラドルスがスピーカーに向かって叫ぶが、マイク機能のないスピーカーに叫んでも当然答えが返ってくる訳がない
「いいから、おとなしく言う通りにしろ。お姉さまも派手にいく気まんまんだな、フフフ」
そんなやり取りの間にも機体は翼から煙を出しながらステーションを通り越し、

中央広場の奥に強行着陸した・・・

「なんだなんだ!?」
突然爆音がしたかと思うと、土煙で周囲の視界が悪くなる。叫んだアルトが土煙にむせている間にも暴走キャストが上から降ってきた何かに向かっていった。
「ご主人、最後のシャトルが降りてきたわ!!」
「降りてきたってよりかは落ちてきたって感じだけどね」
レインの声にアークがシャトルの周辺を確保しに、アルトと共に駆け出す。演舞のような二人の戦いに、シャトル周辺のキャストは蹴散らされていく中、更にシャトルから飛び出した人影がその演舞に加わる。
「遅いぞ、このへっぽこ剣士!!全くいい身分だぜ」
「まったく・・・、モトゥブで一戦やった後だってのに熱いね、お前さんは」
「俺はいつも熱いぜ!!」
と、アルトは親指を立てポーズを決める。
「ご主人!!ポーズ決めてないで、退路の確保に入る!!」
レインの声と共にアルトの後頭部に携帯食料の缶が放物線を描いてヒットする。そこへ、シャトルから降りてきたフィレアがラドルスに耳打ちする。
「すまないが、私とお姉さまは別行動をさせてもらう」
へ?と振り返った時には二人の姿は薄くなった土煙の向こうに消えている。
「お二人は西区画にいっちゃいました〜」
りりなが片手で口元を押さえながら杖を持った手で西を示す。
「ま、別系統で動いているんだ、しゃーない。アルト、レインさんの言うとおりここを放棄するぞ・・・主力は支部か?」
「お前を待ってたんだ、偉そうにいうな。支部前で支部の建物とフライヤーベースを防いでいる。」
「・・・了解、先頭はアルト、殿は俺にまかせろ」
ガーディアン達はアルトの斬り込んだ箇所を軸に支部へ後退していく。その間もラドルスは追撃してくるキャストをソードで斬り払っていく。
「同盟軍だけでなく、一般のキャストまで暴走している・・・」
しかし、躊躇している余裕はない、浮かんでくる迷いを振り払いながら剣を振るうラドルスに頭上から知っている男の声がかかる。
「ラドルス!!そのまま走れ」
いつの間にか中央区画と東部区画を結ぶトンネル状の歩道まできていたラドルスは一気に東部区画側へ走り出す。それを撃とうとしたキャストを一人の男が斬り捨て、ラドルスと並んで走り出す。
「やっぱり、イーサン・ウェーバーか」
「久しぶりだな・・・よっと」
イーサンが端末のスイッチを押すと歩道の天井が崩れ、何人かの暴走キャストを下敷きにしつつその瓦礫で通路を塞いだ。
「これで時間が稼げるな・・・」
「ああ、礼を言っておく」
と、その場を去ろうとした二人の背中で瓦礫が音を立てて吹っ飛んだ。
『はいぃぃぃ!?』
瓦礫が吹き飛び、開通した通路にいたのは3体のクリナビートSであった。
「やっかいなのが来たな・・・が、しか〜し!!」
叫んで横に飛ぶラドルス、イーサンも逆方向へ飛ぶ。そこへ、東部区画の入り口に待機していたガーディアンの一斉射撃が始まった。ほどなくしてクリナビートSはスクラップと化していた・・・

ガーディアンズのパルム支部内、外では散発的に戦闘の音が聞こえているが、十分持ちこたえている様子である。
そんな中、ラドルスはイーサンやアルト達と休憩の為に支部に入った。
「で、なんでお前がここにいる」
「ちょっと同盟軍本部に用ああったんだが・・・この騒ぎで入れなくなってね。と思ったらターゲットがコロニーに上がったようなので、ステーションに来たって訳さ」
ラドルスの問にナノトランサーから何かを出しながら答えるイーサン、そしてその何かをラドルスに向かって放る。
「なんだ?ヒュージカッター??」
受け止めて見るとGRM社製のソード、ヒュージカッターのようだが、細部にいろいろと違いがある。
「mk−2だとさ、ここに来る途中で看取ったGRM社の人間に、ガーディアンに渡してくれって託された。このメンツの中じゃソードの扱いが一番上手いのはラドルスだろ?」
それに頷く一同、上手いというより、それしか使わないって思いもありそうだな、とラドルスは思ったが・・・
「このメンツの中ってなると、イーサン・・・お前が一番になるんじゃないか?」
「俺はガーディアンじゃないからな、そのもう一個の包みに説明書と付属品がある」
イーサンに言われて、包みを開くラドルス。その説明書を読んで・・・
「・・・これ、まともに動くのか?」
ラドルスの反応にアルトが説明書を覗き込む。
「GRMの試作品か・・・、っても、こりゃイチバチな機能だな、それ。光フォトンのようだし、SEEDフォーム相手に使ってみたらどうだ?」
「まぁ、こういうのは嫌いじゃない・・・使わせて貰おう」
そういってmk−2をナノトランサーにしまうラドルス。
「で、出来れば俺もコロニーに行きたいんだが・・・」
イーサンが一同を見渡して呟く
「コロニーに何かあるのか?ターゲットって言ってたようだが」
アルトの問にイーサンはこう答えた。
「今、コロニーにカール・F・ハウザーがいるんだ・・・」
『なにぃぃぃぃぃ〜!!』
イーサンの声が聞こえたガーディアンが一斉にイーサンの方へ振り返った。
カール・F・ハウザー、イルミナスのNo.2にして実働部隊の指揮官、あのマガシのオリジナルと目されている人物でもあり、今のガーディアンズが一番確保したい人物である。
「シャトルステーションはもう無理だから、フライヤーベースから無理やりにでも上がるしかないかな?緊急用のシャトルが地下に配備されているはず」
アークが呟く、ラドルスも同意見だったが・・・
「でも、今上がったら、間違いなく狙撃されますね」
蒼がラドルスの懸念を代わりに言葉にしてくれた。
「狙撃?」
と、イーサン
「先ほど、後方に対空砲装備型のクリナビートがいましたから・・・」
レイン続く
「それを全部倒した上でないと俺も上には行けないな」
と、立ち上がるラドルス。
「俺も?」
と、アルト
「ハウザーには今日の礼をしたい・・・我儘なのは分かっているけどね。でも俺にも意地ってのがほんのちょっぴりあるんでね」
「あらら、こりゃ引き止めるのは無理って奴だね」
「ラドさんらしいですね。そういうことならば、サクっと倒しちゃいましょう」
と肩をすくめるのは、アークとネツマッセ
「ラド様〜、私も一緒しますよ!!」
りりながテテテとかけよる。
「ああ、もちろんだ。シルフィもな」
「当然です」
と、大きな振動が一行を襲う。そして、オクリオルが支部に入ってきて叫んだ
「大変です!!フライヤーベースが破壊されました!!」

外に出たラドルス達の目に映ったのは炎上し、崩れていくフライヤーベースであった。そして、それを破壊したモノの周囲には多くのガーディアンが倒れていた。
「ルウ・・・」
ラドルスがそのモノの名を呟く、
「ターゲット確認、駆除に入ります」
ルウはツインセイバーを取り出し、ラドルス達に向かって走ってくる。と、その背後から・・・
『ターゲット確認、駆除に入ります』
更に3体のルウが同じく迫ってくる。それを、アルトと蒼、そしてイーサンが受け止め、最初の一体をラドルスが引き受ける。更に暴走キャストが数体やってくるが、
「こっちは俺達にまかせて!!」
支部から音遠が出てきて、斬りかかる。それを時雨が後方からの援護攻撃で仕留めていく。更に・・・
「ここからなら、全部狙い撃てますね」
オクリオルとミツが支部2階のベランダからライフルでキャストを撃ち抜いていく。その合間をアークが駆け抜け、セイバーと短銃を持ち替えつつも得意の近接射撃で仕留めていく。
「りりなちゃんはけが人の治療をお願い!!」
「はいです」
ネツマッセとレインのテクニック攻撃の合間をぬってルウの攻撃で怪我をしたガーディアンを収容していくが、大半は既に手の施しようがなかった・・・
そんな中でも4体のルウを相手にガーディアンがそれぞれ戦い方で戦っているが・・・
「ルウ、普段もこれくらい本気で戦えってんだ!!」
アルトが叫んでいる通り、普段のルウ以上の戦闘力で防戦するのが精一杯となっている。と、そこへ頭上から光が舞い落ち、暴走キャスト達を撃ちぬいた。
「SUVですね・・・どこから!?」
と叫んだベランダのオクリオルの隣にいつの間にかポニーテールの女キャスト、ヘルシンゲーテが立っていた。
「コロニーからなのですよ〜。次、本命行くなのですよ〜」
ヘルシンゲーテは誰かと通信しながら、ずっと階下の戦闘を見下ろしていたが・・・
「今なのですのよ!!」
叫ぶと同時に、上空から光を今度はルウを捉える。それは4人のガーディアンが図らずも同時に間合いを取った瞬間だった。
「ほう」
思わずオクリオルが感嘆の声をあげる。が、その時にはヘルシンゲーテの姿はそこにはなく、ベランダを飛び降り、階下で暴走キャストをその斧でなぎ払っていた。
「なんだ、今の光は・・・援護射撃?どこから?」
誰にともなく、疑問の声をあげながらも傷を負いつつもまだ稼動しているルウと戦うラドルス。
「そいつはまかせたぜ!!」
アルトがナックルでルウの胴体を貫き、そのまま走り抜けていく。そこは当初の目的であるクリナビートがいる方である。
「援護なしで何ができると思っているんです、ご主人!!」
レインがそれに続き、同じく受け持ちのルウを倒した蒼が、そして、アークがアルトに続いて走っていく。
「とはいえ、ベースがあんなになって、シャトルは無事なのか?」
呟くラドルスにヘルシンゲーテが叫ぶ
「フィーちゃんから確認完了の通信なのですよ〜。緊急時用のシャトルはなんとか発進可能な上に、特別大サービスで現在発進準備中なのですよ〜」
「という訳だ、さっさとその人形を片付けて、こっちへ来い!!」
ヘルシンゲーテの声の最後に通信機からのフィレアの声が重なる。
「先行ってるぞ、ラドルス!!」
セイバーの一撃でルウを両断し、イーサンがフライヤーベースの方へ走っていく。
「では、私がここを受け持ちますので、ラド様は上へ・・・」
シルフィーネがツインセイバーを手に割り込む。
「シルフィ!?」
「そんなちまちま戦ってたら、日が暮れます。さっさと行ってください」
「すまない!!」
フライヤーベースへ走っていくラドルス。
「りりなさんも早く!!」
ネツマッセの言葉に頷いてそれを追うりりな・・・
「後は・・・私達が『あれ』を壊して道を作るだけですね」
と、ベランダから飛び降りてきたオクリオルがライフル片手言い、ちゃんと階段で降りてきたミツとネツマッセが頷く、そこへヘルシンゲーテが斧を手にやってきて、
「では、へっぽこ剣士達の花道作りに行くとしますか、なのですよ〜」

「全く・・・、派手に壊しているな・・・」
入り口を見つけ、地下通路を進むラドルス。そこへ、
「ラド様〜」
りりなが後ろから追ってくる。
「おっ、きたな・・・」
「当然です〜」
なんとか追いつき、肩で息をするりりな。
「ほらほら、そこ!!いちゃつかない!!」
奥からフィレアの声がする。見ると小型のシャトルがあり、イーサンとフィレアがコックピット席に座っている。
「ラドルス達は後ろだな・・・」
イーサンに促されて、席に座る二人。
「そいや、あのPMはどうした?」
「残って足止めになってくれた」
フィレアの問に答えながら体をシートに固定するラドルス。
「では、外の連中を信じて発進するとするか・・・」
フィレアがレバーを引いた・・・

「ふぅ〜クリナビートはこれで全部かな」
「ハハハハハ、俺達に敗北はない!!」
アークが周囲を見渡し動くモノがないのを確認している時にアルトはクリナビートの残骸の上でポーズを取っている。暴走キャストもあらかた片付いている。
「なんとか勝てました〜」
シルフィーネは動かなくなったルウにソードを突き立てて、止めをさしていた。そこへ、振動が起こり、一行の目の前で一機のシャトルが宇宙へ向けて飛び立っていった。それを無言で見送る一行・・・と、別の場所・・・西地区の同盟軍本部からも二機のシャトルが飛び立っていった。
「くっ、あの距離じゃ届かない・・・なのですよ」
「同盟軍ですね・・・コロニーへ向かったようです」
悔しがるヘルシンゲーテの横でオクリオルがシャトルを眺めつつ呟く
「まぁ、飛んでいったものはしょーがないですよ。俺達が次にするのは、周辺の安全確保と怪我人の収容かな」
時雨が座り込みながら言い、それに一同は頷き、分担を決めて散るのであった・・・が、
「ご主人!!いつまでも夕日に向かってポーズとってない!!」
レインの投げた石がクリナビートであったモノの上でポーズを取っていたアルトの後頭部に当たり、アルトは前のめりに倒れるのであった。

ガーディアンズにとっての長い一日はまだ半分も終わっていない・・・


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