第9章 イルミナスの野望(中)〜宇宙船ドック攻防戦〜

(ストーリーモード:「イルミナスの野望」より)


ガーディアンズコロニーの宇宙船ドック、総裁からの指示でルミナスはここで警戒にあたっている。ドック内を巡回していると、廊下に張り紙がしてあった。
「黒コート愛好会待機所 →」
ニューデイズの筆記用具である筆とかいうもので書かれたものであろう。まだ乾いてないらしく、一部墨なるものが垂れかかっている。
「なんだかなぁ・・・」
呟きながらその矢印の方向へ向かうと、ドック内に黒いビニールの屋根が見え始める。六本の鉄パイプでその屋根は支えられているのだが、その屋根には「黒コート愛好会」と白い文字で書かれていた。
「・・・普通は白いんだけど、特注品なのかなぁ〜」
その屋根の下では、黒いコートを着込んだガーディアンが左右に忙しそうに動いており、その中心ではその長―レニオス―が部下に指示を・・・
「おーい、ジャバ〜。紅茶お代わり〜」
出していなかった・・・いや、ある意味出しているが・・・
「何をやってるのぉぉぉぉ〜、レニしゃ〜!!」
近くの折りたたみ式机の上にあった銀色の灰皿をフリスビーの様に投げつけるルミナス。が、それはあっさりかわされる。
「何って、仕事の後の一杯ってやつだ」
「仕事・・・したの?ずっと座って呆けてただけじゃなくて?」
「ははははは、ご冗談を・・・呆けてなんかいないさ、ここに座って仕事中の一服を・・・」
と、灰皿に残ったタバコの吸殻の山を指で示す。
「まぁ、そんなことは置いといて、ちゃんとゼロ達には指示は出してある。しかし、いいのか?居住区にSEEDフォームが出たって話だぞ?」
と、白髪のビーストが紅茶のポットを持ってきたのに片手で応えながら、レニオス。
「それに関してはリファが問い合わせ済みでね、外部からの進入に備えて、ここの警備をしていろって、中は中の担当に任せるしかないってとこね。まぁ、リック君達だから心配いらないでしょ」
と、ルミナスは先ほど通信で話をしたキャストの女性を脳裏に思い出す。本人の心配はしていないのだが、密かに周辺施設の心配をしているルミナスである。その時、ルミナスの通信機が呼び出し音を鳴らし、ルウの顔が表示される。
「ルミナスさん、少々お願いしたい事があるのですが・・・」

ガーディアンズ・コロニーの周辺宙域、一つの衛星にルミナスと相方のリーファは無事取り付いていた。
「・・・こんなもの、いつの間に設置していたんだか・・・」
ルミナスが衛星の入力端末を探して周囲を漂いながら呟く。衛星は同盟軍の物で、試作の攻撃衛星だったとのことだが、それにコロニー防衛用の設定をして欲しいというのがルウの依頼であった。
「パラディ・システム????」
衛星のパネルに書かれた文字を見てリーファ、
「ん〜、なんでも衛星からの地上の攻撃支援を行うって計画だったようよ、これはその試験タイプで、精密射撃型だったみたい」
ルミナスの説明にふ〜んと頷くリーファ、そのリーファの手が端末のカバーに当たる
「おい、みっけ・・・ルミ〜あったよ〜」
「ナイス、リファ」
ルミナスが端末の前に浮かび、入力を始める。停止していた衛星に再び火が入るのがリーファにも分かった。
「よっし、これで完了〜」
ルミナスがパネルを閉じようとした時、ルウから通信が入った。
「衛星の復活を確認しました。そこでルミナスさん、さっそくですが、今から送る座標へ砲撃をお願いしたいのですが・・・、まだ、遠隔制御のラインが確立してないので、こちらからは撃てないのです。」
「了解〜、座標送って・・・って、パルム地表じゃない!?」
ルミナスの入力で画面に表示された座標を見てリーファが続ける。
「しかも、ホルテス・シティのど真ん中ね・・・これ」
画面に最大望遠の表示と共に、その座標の様子が映し出される。ボヤけてはいるが、戦闘中のようである。その中の何個かにターゲットマークが表示される。
「キャスト・・・かな、これ・・・」
「パルムで暴れている暴走キャストなのですよ〜。こっちで指示した時に撃ってなのですよ〜」
ルミナスの呟きに、知らない声が通信機越しに割り込む
「ルミ、特別回線での通信・・・」
「分かってる・・・」
今なのですのよ!!
指示されたタイミングで引き金を引く、衛星から数条のフォトンビームが地上に向けて放たれる。
「ナイスなのですよ〜、次、もう少し精密照射でお願いなのですよ〜」
と、画面に次のターゲットマークが表示される。と、カメラ画像に補正が入り、鮮明になったそれには・・・
「ルウが4人と、ラドさん達!?」
ターゲットマークはルウに示されている。
「ルウも例外ではなかったのですよ〜、さっさと撃って欲しいかったりする・・・なのですよ〜」
「って、1mも誤差の許容範囲がないじゃない!!ラドさん達に当たったら・・・」
別に大丈夫かな?とかいう考えが一瞬脳裏を横切るがそれを振り払うリーファ
「私が代わりに謝ってあげるなのですよ〜」
「・・・そういう問題じゃ・・・」
今なのですのよ!!
反論しかけたルミナスだったが、その声に引き金を引く、再びフォトンビームが地上に向けて放たれる。そして、それはルウ達に当たったのが画面で見えた。
「全弾命中なのですよ〜」
通信機の声にルウの声が入る
「制御プログラム起動しました。あとはこちらで撃ちますので、戻ってきてください。同盟軍に不穏な気配があります。」
「まさか、あそこもやられたっていう話じゃ・・・」
リーファの呟きに
「ニューマンの方は話が早くて助かります。すぐにコロニーへ戻ってきてください」
「誉められても嬉しくない・・・外れて欲しかった・・・」
肩を落としながらリーファはシャトルへと戻るのであった。

ルミナスとリーファが再び宇宙船ドックに戻った直後、アラームがドックに鳴り響いた。
「ほうほう、同盟軍の戦艦が一隻こちらに向かっているそうだけど?」
ティーカップを傾けながらレニオス、周囲では黒コートの集団が戦闘準備をしている。
「レニしゃはマイペースねぇ・・・」
呆れた声に振り向くと、そこには光希がTypeMμを連れてやってきていた。
「優秀な副官がいるんでね、これは余裕ってもんなのさ」
「優秀な副官って・・・あれ?」
TypeMμが指差した先には、隠れ場所ではなく、狙撃場所を探しているゼロがいた。
「・・・あれだ」
「で、同盟軍はどうするの?」
一行に話が進まないと仕方無しにルミナスが話を強引に進める。
「とりあえず、ここで防ぐしかないだろうな」
ティーカップを置いてレニオス。
「流石にこの戦力で戦艦は沈められないものね・・・多分」
リーファが顎に手を添えながら呟く、内心はルミナス辺りならできるかもと思っているのは表情にも出さない。
「とりあえず、ルミナスとTypeMμとウーバーのSUVで先制攻撃、その後は白兵戦で防ぐしかないな」
レニオスが机上に簡単な配置図を書きながら説明を行う。
「援軍が期待できない以上、ここで止めるしかないわね・・・ってウーバーさんいつの間に?」
「ずっといたぜ?」
「小さいから気づかなかった・・・」
「なんだと!!」
ウーバーが反論しようとした時、衝撃が走った。
「どうしたの!?」
光希の叫びにTypeMμが端末を操作、答えをはじき出す。
「戦艦がコロニー下部に衝突、膨大なAフォトンリアクターを放出中!!」
「それって、SEEDを呼んでるってことじゃ!!」
「だろうな」
リーファとレニオスが言っている側から、コロニーの外を映すモニターにSEEDがコロニーに向かって飛来しているのが映し出された。と同時に、同盟のシャトルが戦艦からドックに向かっているのが見える。
「しゃーないな、仕事するとするか」
レニオスが立ち上がり、傍らに置いてあるセイバーを取る。そうしている間にもドックのエアロックを抜けて同盟兵が入ってきた。
「は〜い、同盟の団体さんごあんなぁ〜い」
光希がそういって杖を振るうと、ドア付近が炎に包まれる。一瞬ひるんだ同盟兵の前にルミナスとTypeMμが立ちはだかり・・・
「全員射程内に補足、いっけ〜!!」
ルミナスとTypeMμのシュトルムアタッカーが同盟兵を一掃する。が、一部の同盟兵がそれをすり抜けて突撃してくるが・・・
「本日のお勧め商品は、こちら!!」
ウーバーのギガス・エスパダがその同盟兵をなぎ払った。
「・・・威力は見ての通りだぜ!!」
決めるユーバーの横を黒コートの集団が駆け抜ける。その先頭にはレニオスがセイバーを振り上げている。
「全員突撃!!同盟兵を一人も通すな!!」
「了解!!」
レニオスに向かってきていた後続の同盟兵にフォトンの矢が刺さる。どこかに潜んだゼロのものである。そこへレニオスが突っ込み、周囲の同盟兵を次々と倒していく。
「・・・ちゃんと戦えば、結構な腕なのにね」
それを横目に見ながらルミナスがライフルで同盟兵を狙撃していく。横でTypeMμとウーバーも同様にライフルを撃ち、リーファと光希はテクニックを放っている。それに黒コート同好会が加わっているが、戦況はどうにか互角といった所であった。
「でも、このまま消耗戦になったら・・・」
ルミナスが呟いた時、戦線の一角が崩れた。見ると、同盟の重装兵が黒コート愛好会を倒して突き進んできている。
「あらら・・・先頭にいるのはカーツじゃない・・・まずいかな・・・」
リーファが同盟兵の先頭をいくキャストを見て一瞬躊躇するが、とりあえずは・・・と、周囲の同盟兵を倒していく。
カーツ達は黒コート愛好会をつきぬけ、居住区の方へ向かっていく・・・と、その前にゼロが立ちはだかる。重装兵の何人かをソードの一振りで払い、カーツへと突撃するゼロ、そのまま無言でソードをカーツに叩きつけるが、カーツはそれを軽々と弾き、足払いでゼロを倒す
「劣等種が・・・」
カーツがソードを振り上げようとした時、ノス・ゾンデの雷球がカーツの周囲を回り・・・カーツの右腕で弾けた。カーツの手からソードが落ち、ゼロはその隙に立ち上がり間合いを取り、そのままレーザーカノンを撃つ。が、カーツはそれもかわし、そのまま居住区へのドアをくぐり、ロックをかける。
「くっ、逃がしたか・・・」
悔しがるゼロがノス・ゾンデのきた方向を見ると、同盟兵の中に、青い髪と、紫のツインテールのさきっぽが見えた。その横にはイーサン・ウェーバーの姿もあった。
「流石に3連戦はきついな・・・」
ソードをふるい、同盟兵をなぎ払っていくラドルスだが、さすがに疲労が出始めていた。
「ラド様、ここはおまかせです!!」
りりながラドルスの前に出る。一斉にりりなに斬りかかろうとする同盟兵。しかし、それはりりなの周囲に発生した氷に阻まれそのまま氷ついた。それをルミナス達がライフルで狙撃していく。
「ラドさん、どうしてここに?パルムにいたはずじゃ!?」
ルミナスがライフルを撃ちながら青髪に向かって叫ぶ。
「ちょっと会いたい人がここにいるって聞いてね・・・」
「おしゃべりはそこまでだ、さっさといけ」
ラドルスの横に立ったキャスト―フィレア―がショットガンを撃ちつつラドルス達の道を作る。
「とりあえず、居住区側の出口まで下がろう、あそこなら入り口が狭いから狙撃が容易になる」
レニオスがツインセイバーをで両側の同盟兵を切り払いながらラドルスの方へやってくる。
「その辺の判断はまかせる。居住区に入ったら俺達はちと別行動を取るけどね」
「はいよ・・・全員、居住区まで撤退!!」
レニオスの号令の元、ドックを守っていたガーディアン達はゼロとレニオスを殿にして、居住区へと下がっていった。

居住区に出たラドルスの目に映ったのは荒れ果てたクライズ・シティであった。木々は倒れ、中にはSEEDに侵食されたものもある。
「こんな所にまで入り込んだのか・・・」
後方では陣形を立て直したガーディアン達が、追撃してくる同盟兵を相手に遠距離射撃を中心に防戦に入っていた。と、イーサンが階下の広場を見て・・・
「カーツとライアだ・・・」
その声にラドルスも広場を見るが、丁度死角に入ってしまい、姿は見えない。
「すまないが、俺はライア達の援護に行く・・・。ハウザーも気になるが、彼女はこれからのガーディアンズに必要な存在だ」
「わかった。俺はとりあえず本部に向かう」
「俺達・・・ですよ、ラド様」
イーサンとラドルスのやりとりにりりなが訂正を入れる。
「それじゃ、ラドルス。また会おう!!」
イーサンは片手を挙げてそういうと、階段を下りていった。
「それじゃぁ、りぃ・・・俺達もいくぞ」
「はいです」
ラドルスとりりなはガーディアンズ本部への階段をあがっていった。

その時既に、ガーディアンズ・コロニーはパルムの衛星軌道を外れていた・・・



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