第15章 暗黒惑星からの手土産

(特殊ミッション:「MAXIMUM ATTACK G」より)


 グラール太陽系に突如として現れた暗黒惑星、古文書にあった記載から「リュクロス」と呼ばれることになったそれに、第一次調査隊として向かっていたカナル・トムレイン博士と黒コート愛好会の面々が戻ってきてから1週間、ガーディアンズではあるシミュレーターへの挑戦が流行っていた。
「マキシマムアタックG・・・ねぇ」
挑戦したガーディアン達のコメントを部屋の端末で眺めながらラドルスは呟いた。
「頭文字とってMAGって呼ばれてるらしいですね」
りりながそんなラドルスの前にコーヒーカップを置き、自分もホットミルクのカップを持って隣に座る。
「らしいなぁ」
「というか、ラド様はやらないんですか?あれ」
りりなの問いに、ラドルスはコーヒーに口をつけ、
「いやね、ベイさんには声かけたんだけど、もう一人がなかなか確定しなくてね。あれって4人なんだよねぇ・・・」
「ふみゅ〜、レニしゃでも捕まえますか?」
りりなのさり気ない言葉に、ラドルスは暫し考え・・・
「そうだよな、『疲れているからヤダ』とか言うと思って声かけてないんだけど、戻ってきてから一週間経ったもんな。もう大丈夫かもしれん」
ラドルスはそう呟き、コーヒーを飲むのであった。

「疲れているからヤダ」
黒コート愛好会の局長室、レニオスはラドルスの言葉に雑誌に目を落としたままそう答えた。
「・・・」
次の言葉が見つからず呆然とするラドルスにレニオスは暫し天井を見上げ。
「なんなら、ジャバ貸してやろうか?」
「どうせなら、ゼロにゃがいいなぁ〜とか言っちゃ駄目か?」
「編成的に前衛がいいだろう・・・」
「そうだけどね・・・」
「ほい、決まり。後でジャバをそっちに行かせるからねぇ〜」
「しゃ〜ないなぁ〜、でもまぁ・・・戦力としては十分以上だからいっか」
ラドルスは呟きながら局長室を後にするのであった。

 翌日。
シミュレータールームに入ろうとしたラドルスであったが、丁度そこへルミナスが出てくる。
「おや、遂にへっぽこ剣士も出陣ですか?」
「まぁ、そんなとこ」
「で、それが噂のガーディアンスーツね、似合ってるじゃない」
「サンクス」
ラドルスはGRMから新開発の繊維で作られたブレイブスコートを着ている。青を基調としたそれをラドルスは動きやすさを重視して若干手を加えている。因みにりりなの服も同じ繊維で作られている。そんな会話をルミナスとラドルスがしている脇をリーファと見知らぬ娘が2人一礼して通りすぎていく。
「相変わらず、可愛いどころ連れ回してるなぁ・・・」
ジャバウォック二人を目で追って呟く。
「ここにも可愛い娘がいるんですけど?」
りりながジャバの服の裾を引っ張って呟く。
「俺はちっこいのには興味ない」
そっぽを向いて答えたジャバウォックの後頭部に、どこからともなくディメイトの箱が飛んできてその角が直撃する。頭を抑えつつ振り返えったジャバの視線の先にはラドルスとルミナスがそ知らぬ顔で話している。ジャバウォックを視線にも気づかないまま会話は進んでいる
「ふむん、3つ目のエリアで行き止まりなのか・・・」
「そうなのよ、どうやってもロックが解除されない扉があって、横にシミュレーターの終了ボタンがあるのよねぇ・・・」
「ふみふみ、いっそ扉に攻撃でもしてぶち破ってみたら?」
「もうやった」
「・・・あ、さいですか・・・」
冗談のつもりだった言葉へのルミナスの反応に苦笑するしかないラドルス。
「シミュレータ自体はラドさん達にとってもそんなに難易度の高いミッションじゃないと思うなぁ。って訳でがんばってねぇ〜」
手を振りながら去っていくルミナスを見送った一行はシミュレータールームへと入っていった。

「流石トムレイン博士ってとこだなぁ・・・」
ラドルス達はどこかの森の入口に立っていた。しかし、それはシミュレーターのものである。
「しかし、道中の敵の撃破がそのままプロテクト解除になるって、奇妙なシステムではありますね」
りりながシミュレーター参加前の説明を思い出しつつラドルスに話しかける。説明によると、これはリュクロスから持ち帰られたものであり、解析してみた所いくつかのプロテクトが確認され、それらはシミュレーター内でエネミーを撃破していくと解除されていくことが確認されているとのこと。しかし、エネミーはグラール以外の生命体らしく、ガーディアンズのシミュレーターでの動作に合わせてグラール太陽系の原生生物に差し替えが行われているとの事である。
「なんか、作為的な物を感じるけどね。とりあえず行くとしますか」
「そうですな」
「うむ」
前半はりりなに、後半は3人を見渡してのラドルスの言葉にオクリオル・ベイとジャバウォックが頷き一行は森の中にある一本道を進んでいく。
「しっかし、パルムやニューデイズの木々とはまた感じが違うな・・・」
ジャバウォックが周囲を見渡して呟く。
「と、いうか・・・さっきから気になるのはあれとあれなんだよなぁ・・・」
ラドルスが空と木々の向こうを順に指差して答える。空には微かに巨大な人工物が、木々の向こうには白いドーム状の建物が見えていた。
「コロニー・・・にしてはかなり小さいですね。高度も低いですし・・・」
「どっちかというとでっかい宇宙船に見えますね」
額に手をかざしつつ空の人工物を見てのオクリオル・ベイの言葉にりりなが続く。
「っと、さっそくおいでなすった」
ジャバウォックの言葉に一行が前を見ると、数体のブーマの姿が見えた。ラドルスが剣を構えた横でジャバウォックが雄叫びと共にツインセイバーを構えて突撃していく。それを見たブーマがその右手をジャバウォックに向かって振り下ろすが、ジャバウォックはそれを左手に持ったセイバーで受け止め、右手のセイバーを横薙ぎしてブーマに斬りつける。
咆哮を上げて暴れるブーマの両手をかわしつつジャバウォックは止めを刺し、次のブーマに斬りかかっていく。と、その後ろに空中からラッピー・ポレックが降ってくる。
「おっと、あれはまずいな」
次のブーマに向かって突き進んでいくジャバウォックの背に向かって光弾を撃ち込もうとしたラッピー・ポレックをラドルスがソードで追い抜きざまに斬払う。
「っと、すまんです」
ようやく気付いたジャバウォックが最後のブーマを斬り倒す。それを見届けたかのように、ラッピー・ポレックが再び降ってくる
「どこから降って来てるんだよ!?」
文句を言いつつもソードを降り、着地したラッピーを斬っていくラドルス。
「まぁ、シミュレーターですからね」
オクリオル・ベイがラドルスの文句に律儀に答えつつマシンガンを掃射していく。
「あの宇宙船からだったりしてな・・・」
苦笑しつつラドルスは近づいてくるラッピー・ポレックを次々となぎ倒していくのであった。

「で、これが次のエリアか・・・」
ドームを目指して進んでみたものの途中で木々に阻まれ、途中で見つけたハンターと名乗る青年の助けを「あの手の輩はネットの中にいる方が安全っぽいしなぁ」と無視しつつ、迂回ルートを取ったラドルス達は途中で洞窟の入口を見つけてその中に入っていた。
「方向的にはあのドームの方へ向かっているようなんですけどね」
オクリオル・ベイが手元の端末を見つつ呟く。と、通路の奥から何やら声がした。
「ん?」
ラドルスが剣を構えなおして声のする方へ忍び寄る。そこは横道になっていたがその行き止まりに一人の少女が座り込んでいた。その後方で一行は横道を覗き込んでいるラドルス
を見ていたが、暫くしてラドルスが戻ってくる。
「ラド様?」
黙りこくったラドルスの顔を覗き込んで尋ねるりりなの頭にポンッと手を置いてラドルスは答えた。
「ブツブツ訳の分からない事言ってる女の子がいただけだ・・・無視して行こう・・・」

 洞窟を進んでいくと、ある扉を境に壁が人工の物に変わった。
「エリアが変わりましたね」
オクリオル・ベイの言葉に肩で息をしながら頷くラドルス。そして、そのまま座り込んでしまう。
「流石に疲れた・・・」
「ですね、私もヘトヘトです〜」
「なんだったんだ、あのラッシュは」
ラドルス、りりな、ジャバウォックと並んで座っている横でキャストのオクリオル・ベイは銃や杖のフォトン残量のチェックを始める。
「ベイさんのSUVがなかったら危なかったな・・・」
一つ前の部屋に入った途端、これでもか!!という数のヴァンダ・オルガが襲ってきたのである。個別にくる場合にはそれ程でもないのだが、一斉に火炎攻撃をしてくると手練のガーディアンでも梃子摺る事がある。
「ルミルミの話だと、この先で行き止まりらしいんだがなぁ」
ナノトランサーから飲み物を取り出して口をつけながらラドルスが誰にでもなく呟く。
「私も、そのような話を聞いています」
「らしいな」
オクリオル・ベイ、ジャバウォックと言葉を続ける。
「ところでラド様・・・」
「どうした、りぃ?」
「ふと思ったんですけどね・・・ここって、リュクロスの昔の姿なんじゃないでしょうか?少なくとも昔のグラールのどこかではない気がするんです」
「ふむん」
りりなの言葉を顎に手をやって吟味するラドルス。
「確かに、その可能性はあるが・・・否定するにも肯定するにもその材料が足りないな」
「ふみゅん、確かにそんな考えがふっっと浮かんだだけですしね」
「まぁ、そのへんの情報がプロテクトの向こうにあればいいのですが」
「にしても、ここってあのドームの地下なのかね」
そう言ってジャバウォックが周囲を見渡す。
「の、ようですな。かなり深いようですけど」
「なんかを掘り出した・・・いや、掘り出す為の坑道って感じなんだよなぁ」
オクリオル・ベイの言葉にジャバウォックが再度言葉を続ける。
「ふむん、ルミルミが言ってた扉がその目的地だったりする可能性はあるな・・・っと」
ラドルスはそう言いながら立ち上がる。
「それも行って見れば分かる・・・かな?」
「ですね」
応えてりりなも立ち上がり、一行は探索を再開した。

 今度はキャストやマシンナリーを中心としたエネミーが出てくる中、坑道を進んでいくと、大きめの四角い部屋の中央部分、周囲をネットに囲まれた中に転送される。ラドルスが「嫌な予感・・・」と呟いた途端特務系キャストを中心とした部隊が襲ってくる。
「またかよ!!」
ラドルスとジャバウォックの悲鳴交じりの文句が響く中、一行はなんとかそれを撃退する。ネットが解除され、広間を探索するラドルスがある扉の前のスイッチに気付く。
「これがルミルミの言ってたスイッチかな?」
「でも、ラド様・・・扉にロックかかってませんよ?」
りりなの言うとおり、その横にある扉のロックは開いている。ラドルスが一歩踏み出すと、扉は開き、その向こうには転送装置がフォトン光を放っているのが見えた。
「・・・まぁ、進むしかないよなぁ」
ジャバウォックが意を決してその中に飛び込む。
「だな」
苦笑してラドルスとりりなが続き、最後にオクリオル・ベイが転送装置の中に入る。いつもの転送と同じように一瞬の光の後、ラドルス達は小部屋の中に立っていた。そこはたま今までとは異なった風景であった。
「レリクス?いや・・・なんか違うなどちらかというと・・・」
「HIVEに近いですな」
オクリオル・ベイの言葉にラドルスが頷く。
「でも、SEEDとは違う感じですね」
と、壁を杖でつつきながらりりな。他に道もないので小部屋から出る一行・・・と、そこへ黒い影が現れ、ラドルスへ向かって飛び掛る。
「くっ!!」
持っていた剣でその影を払うラドルス。フォトンとフォトンがぶつかる音がしてラドルスの剣と鎌の様な武器がせめぎあっているのが見える。そして、その武器の先には一人のキャストの姿があった。
「キャストなのに、なんなんだこの殺気は!?」
「グ、ギギギギギ・・・」
うめき声とも機械の軋みとも取れる音を発して、そのキャストは後方に一端飛び跳ねるが、その着地の反動を利用して、即間合いを詰めてくる。が、ラドルスはそれを予期し、振り下ろされた鎌を左に一歩動いて避け、そのまま左足を軸に体を時計回りに回してキャストの後ろに回りこむ。更にその反動を乗せた剣をキャスト対して横薙ぎに叩き込む。そのまま吹き飛ぶキャストであったが、受身を取り立ち上がり、剣を構えたラドルスの間合いの数歩先まで歩み寄り、鎌を持ったまま腕をダラリと下げて立ち止まる。その時間的空白で我に返った3人は即援護の体勢を取る。
「オモシロイ、オモシロイゾォォォォォ!!」
突然キャストが咆哮を上げる。それと同時に周囲に満ちていた殺気が霧散する。
「オマエハモット美味く、ツヨクナル、ソレマデハマツトシヨウ」
「・・・美味しく・・・」
キャストの言葉に背筋に悪寒のようなものを感じるラドルス。そんなラドルスの目の前を通り過ぎてキャストは扉の前に立つ。
「コッチダ・・・」
「どうやら、案内してくれるようですな」
「大丈夫か?なんかやばそうだぞ?」
「さっき、最初の攻撃を受けた時ですけど。あんなマジメな顔してるラド様久々に見ましたよ・・・」
「あのなぁ・・・」
苦笑しつつも、「まぁ、なんとかなるさ」と言ってキャストについて行くラドルス。そしてそれを追う一行。その先でSEEDフォームがキャストとラドルスを襲っているが、二人ともそれを難なく打ち払っていく。
「なんか、大丈夫そうですね」
りりな言葉に、「なのかなぁ〜」と歯切れの悪い返事をするジャバウォック。そんなジャバウォックの反応をよそに、キャストはその後もラドルス達と共闘の姿勢を貫く。
だったのだが・・・、ある転送装置の前で突然苦しみだす。
「!?」
それぞれの武器を構える一行の前でキャストの周囲に黒い煙が立ち昇る。
「これって、SEED化の前兆!?」
りりなの叫びに一行の緊張が高まるが、煙はそのまま呻き声を上げるキャストを包み込み。その声が消えたかと思うと、煙の中でもうっすらと見えていた姿が煙に溶け込むように消えていく。そして、煙が晴れるとやはりその姿は無かったのである。
「なんだったんだ。あれは・・・」
「このシミュレーターの中に残ったなんかの記録・・・と言ったところでしょうか?」
ジャバウォックの呟きにりりなが続く。それを聞きながらラドルスは転送装置の前に立つ。
「ここが終着点っぽいな・・・」

 その頃、ガーディアンズコロニー内のシミュレーター管理室は大騒ぎになっていた。突然の第四エリアの解放と同時に解除されたプロテクト部分の解析による情報整理、そして第四エリアで検知された巨大なデータの存在。それらがほぼ同時並行に発生した為に、ガーディアンズはシミュレーターの一時停止を決定し、ガーディアンの退避が行われていた。
「第三エリア迄のガーディアン退避完了しました!!」
オペレーターの報告にカナル・トイムレイン博士が頷き、第四エリアの状況報告を求める
「第四エリア探索のガーディアンは二組、一組は連絡が取れたので退避中なのですが・・・」
「もう一組はどうしたのかね?」
トムレイン博士の言葉にオペレーターは暫し何かを整理するような間をおいて
「シミュレーターの可動状況から第四エリアにいるのは確かなのですが、こちらから現在位置が特定できないのです」
「なんだって!?誰のパーティーなんだい、それは!!」
オペレーターの報告の最後に部屋に入ってきたライアの言葉が重なる。その勢いに気圧されて黙ってしまったオペレーターから紙をひったくる様に取り上げたライアは、そこに書かれた名前に苦笑する。
「なんだかんだ言って、ちゃっかり事の中心に関わってくるんだな、お前は・・・」
そんなライアの横でトムレイン博士はラドルス達の現在位置の把握ともう一つのパーティーの退避誘導の指示を出しているのであった。

 そんな外の様子等当然知らずにラドルス達は巨大なSEEDフォームとの戦闘中であった。
「外見は、ディー・ロレイそっくりの癖になんなんだよ、こいつは!!」
水路の様な所でイカダに乗り、そこから空を飛んでいる巨大な口を持った蛇の様なSEEDフォームをハンドガンで撃ちつつ何度目かの文句の言葉を叫ぶラドルス。
「端末は『ダーク・ファルス』って表示してますけど・・・聞いたことありませんよね」
と、ライフルでSEEDフォームから飛んできた丸い物体を撃ち落しながらオクリオル・ベイ。ジャバウォックも手持ちのハンドガン、りりながノス・ゾンデを次々に放ち、その巨体の頭に当てている。と、その顔の部分が剥がれ落ち、口がその大半を占める丸い頭が現れる。
「そんなとこまでそっくりかよ!!」
同時に、ラドルス達の横に舞い降り、寄ってきたSEEDフォームに対して剣を叩き込むラドルス。すると、それは咆哮をあげながら空中をのたうち・・・そのまま水路に落ちる。
「やったか?」
「ですかね・・・」
「で、あれはなんですかね?」
りりなの指差す方向を見ると、水路が広場の様になって途切れているのが見えた。そこは円筒形になっており、上には星がいくつか見える。そして、中央には光が差していて何層かの魔方陣がうっすらと見え・・・
「ん?」
何かが変だ・・・と思ったラドルスの前でその景色が次第に薄れていくのであった。

「で、そのままシミュレーターは強制終了って訳かい」
「そういうこと」
シミュレーターの一件3日後、ガーディアンズ・コロニーにあるカフェでラドルスの話にアルトが呟く。
「俺達はHIVEもどきに入った所で戻る様に言われたから、そのキャストも巨大SEEDフォームも見れなかったけどな・・・俺も手合わせしたかったぜ・・・」
アルトの言葉に苦笑しつつ、コーヒーカップを手に取るラドルス。
「あれっきり、再起動できなくなったんだって?」
「みたいですね。でも解析は一気に進んだようですよ」
オクリオル・ベイがラドルスの問いに応え、一枚の告知文を見せる。それにはシミュレーターの停止の連絡が告げられていた。
「結局、なんだったんだろうか。あれは・・・」
ジャバウォックの言葉にラドルスは暫し宙を見上げ・・・。
「鍵が掛かっていると、開けたくなる・・・そんな人の性を突かれた様な気がする・・・」
「と、いいますと?」
オクリオル・ベイの相槌交じりの問いかけにラドルスは視線を戻し。
「なんか、そんな気がするだけさ・・・これも判断するには材料が足りなさ過ぎってってね」
「ふ〜ん」
と、呟いたジャバウォックの端末が呼び出し音を鳴らす。
「やれやれ・・・局長のお呼び・・・だ・・・」
愚痴交じりの呟きを漏らしながら端末の画面を見たジャバウォックの表情が驚きのそれに変わる。
「どうしました?とうとう首になったりしました?」
りりなのおどけた口調の冗談にジャバウォックはマジメな声で返す。
「黒コートに出動命令が出たらしい・・・これから作戦会議だそうだ・・・って訳で失礼する」
テーブルを囲んでいる面々に一礼して本部へと向かうジャバウォックを見送ったアルトがカップを両手で包むように持ち誰にともなく、
「やれやれ、今度はこっちも忙しくなりそうだぜ」
と言った。アルト自身にも確証があっての発言では無かったのであろうが、その言葉は見事に的中するのであった。

この日の午後、ガーディアンズは以前止まぬ暴走キャスト問題の解決の為として、同盟軍本部及び施設への強制侵入作戦を行う旨を全ガーディアンに通達した。


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