第19章 次の世代の為に…

(ストーリーモード:リュクロスへの道 より)


「やれやれ、SEEDもまめっちゃまめだよなぁ〜」
ガーディアンズ・コロニー内にある黒コート愛好会本部の食堂でコーヒーを飲みながらラドルスは呟いた。その正面では相方のりりながホットミルクを飲んでいる。これは食堂のメニューにはないのだが、食堂のおばちゃんがりぃの為に出してくれたものである。ラドルスとりりなはキノコ狩からそのまま一週間、クグ・レリクスでの対SEED防衛任務に就いており、やっと帰ってこれたのである。その間、SEEDの襲来は十数度に及び、その度に100体以上のSEEDフォームを撃退していたのである。
「SEEDってのは自分達の障害を本能的に排除しようとする習性があるからね。フォトンエネルギーが蓄積されていく封印装置は格好の的だよ」
ラドの斜め横で何かの書類を書きながら愛好会の実戦部隊の一つ、二番隊隊長の封神がラドルスに応える。
「まぁ、そんな事は分かっているんだけどね」
と、そこへ一人の老人が入ってくる。老人はカウンターへ向かい、厨房のおばちゃんに声をかける。
「すまないが、紅茶を一杯頂けるかな」
その声に聞き覚えがあったラドルスが振り返ると、思った通りの姿があった。
「トムレイン博士じゃないですか」
自分を呼ぶ声に、トムレインは紅茶とおまけと称したお茶請けを持ってその声の主の所へやってくる。
「お久しぶりだね。ラドルス君だったかな?ここ、失礼してもいいかね?」
頷くラドルスに、その隣の席に座るトムレイン。
「博士がなぜここに?」
「リュクロスの封印装置の防衛に黒コートが行く事になったから、その打ち合わせだよ。同時進行でジェネレータの設置も行うからね。博士の意見が聞きたかったって訳」
トムレインの代わりに封神がそう答え、それに頷くトムレイン。
「うまく、いきそうですか?」
ラドルスの問いにトムレインは少々うつむき加減になり、そのまま紅茶を一口だけ飲む。
「例のキノコのお陰で状況は多少良くはなったのだが、あくまで多少といった所でね。決して君達や同盟軍、ローグスが悪い訳じゃない、要求量に対する時間が問題なのだよ」
「兎に角、時間がないのだよ。すべてにおいて。」と呟いてトムレインは紅茶に再び口をつける。と、それを聞きながらも書類を書いていた方封神が立ち上がる。
「博士、ラドさん。局長にこの編成案を出しに行くので失礼しますよ。では、また今度」
「ああ、私ももう少ししたらレニオス君の所に戻る。そう伝えておいてくれないかな」
了解しまいした。と返事をして食堂から出て行く封神。それを視線で見送って。ふと、トムレインの顔を見たラドルスが口を開く。
「結構お疲れの様子ですけど、お年も考えて少々休まれてはいかがですか?」
「そうしたいのは山々だが、そうもいっていられんのだよ」
軽く微笑むトムレインだが、その笑顔には力がないのがりりなにも分かった。
「博士、少々失礼な言い方をするかもしれませんが、ご容赦を・・・。博士はメルヴォアやガジェットの件を必要以上に深く考えすぎているように思えます。その為に今も無理をなさっている」
トムレインはラドルスの言葉に暫し瞑目するが、その目をと同時に口を開く。
「確かに、君のように若い者にはそう見えるかもしれないかもしれないが、ガジェットはともかくメルヴォアでは多くの人が死にすぎた。全て私のせいなのだよ・・・この老体では償いきれない罪だよ。だからこそ、最後の仕事としてこの合の時を成功させ、SEEDを封印し、君達に平和なグラールで生きてもらう。これがせめてもの償いなのだよ」
「しかし、その世界で御自分が生きる事は考えていらっしゃらないでしょう」
「確かにそうかもしれないな。合の時後のグラールでの私はどこにいていいのか分からないのだよ」
「どっかの会社の研究所かそれともガーディアンズでもいいです。そこで相談役なり研究でもして過ごされればいいじゃないですか」
「そしてまた罪を犯すかもしれない。そうしたら今度はどう償えばいいのかね?」
「そんな事言っていたら何もできませんよ。メルヴォアのような事がありましたが、少なくとも博士の研究でA・フォトンの危険性も確立されたのです。でなければ、今回の合の時もA・フォトンで行われ、同じ過ちを繰り返す所でした」
「そういって貰えると少しは気が楽になるよ」
一旦言葉を切り苦笑するトムレイン。
「それにしても、ガーディアンズというのは強い組織だな、ライア君をはじめとして皆に迷いがない。だからこそ、コロニーの落着から短期間でここまで持ち直せたのだろうね。これは、単に好奇心からの質問なので、答えてもらわなくてもいいのだけど。ラドルス君はどうしてガーディアンズで戦っているのかね?」
「自分は単純ですよ。ただ、自分の信じる事の為だけに剣を振るっている。それがたまたまガーディアンズ内であったってだけです。今の仕事が自分的に一番正しいと思っただけなんですよ。本当に」
「それが君の正義という訳なのかね?以前小耳に挟んだのだが、君もある事件に対する罪の意識を持っているとも聞いたが、その贖罪なのかね?」
トムレインの言葉にラドルスは軽く首を振り、
「確かに、あの時・・・記念式典の日やモトゥブでの殺処分の時、救えなかった、護れなかった命に対する贖罪の意識は確かにあります。」
ラドルスは一旦言葉を切り、りりなの方へ視線を送る。当人は半分以上眠りかけてふねをこいでいる。
「それらは生きて彼らの命を背負う事が罪滅ぼしになると思っています。しかし、それ以上に強いのは、この娘を始めとする自分の知り合いを護りたいという想いです。SEEDはその為の障害になる。だから、自分は今剣を振るってるんです。グラールが滅んでしまってはそれたはできませんからね。」
「生きて罪を背負い続ける。そして、二度と同じ過ちはしない為に前に進む。なるほど、私もそういった考えができればいいんだけどね・・・」
「若輩者が出すぎた事を言い過ぎました。重ねて謝罪させてもらいます」
「いや、逆に言ってもらった事を感謝したいくらいだよ。私がラドルス君達へ、そしてラドルス君達も次の担い手へ・・・そうやってグラールの平和が続いていくのが普通な世の中にいたいものだね。では、私もレニオス君の所へ行かねばな」
立ち上がったトムレインにラドルスは半儀礼的に封印装置へ行かれる際の護衛を申し出る。
「明日にはクグ・レリクスの封印装置の調整に行くが、護衛はアルティノア君が付いてくれるそうだから何も心配いらないよ」
「彼女なら安心ですよ。よろしく伝えて置いてください」
「確かに伝えておくよ。では、失礼するよ。」
トムレインを見送った後、ラドルスは完全に寝入ってしまったりりなに上着をかけて冷めてしまったコーヒーに口をつけようとする。すると、目の前に湯気をたてたコーヒーカップが差し出される。その手の先にある食堂のおばちゃんの顔に向けて一礼して、ラドルスは新たらしいカップのコーヒーに口をつける。おばちゃんは横で寝ているりりなの顔を見て苦笑する。
「まったく、ガーディアンズってのはかっこつけが多いね。かっこつけるなら素直にりりなちゃんを護って、一緒に生きて行きたいから戦うんだって言った方がポイント高いのにねぇ」
「生憎と、素直じゃないんですよ、自分は・・・」
「おやおや、否定しなかったねぇ〜」
クスクスと笑うおばちゃんに何も言えずに黙ってコーヒーを飲み干したラドルスはりりなを背負って立ち上がる。
「ついで言うと、ここのコーヒーも嫌いじゃないんでね。合の時が終わった後も飲みにこさせてもらうよ」
「嬉しい事言ってくれるね。もちろん、りりなちゃんと一緒にいつでも来な、待ってるよ」
ラドルスは片手を挙げて、食堂を出て行くのであった。

 翌日、ニューデイズの封印装置の守備についていたラドルスとりりなであったが、暫くして準備が完了したとの報告と、守備をグラール教団へ引き継ぐ旨の連絡が入る。
「引き続き、コロニー経由でパルムの封印装置へ向かってください」
「了解」
通信を切り、やってきたグラール教団の護衛士に守備を引き継ぎオウトク・シティへ戻ると、PPTステーションにミツとTypeM μの姿があった。
「おや、お迎えがつくとは聞いてなかったな」
「こんにちは〜なのです」
「いえ、自分はモトゥブからパルムへ向かう途中なので、ついでに拾っていけって総裁に言われたんですよ」
ミツの回答に「だろうな」と苦笑して、シャトルに乗り込むラドルスとりりな、シャトルがニューデイズの引力圏を出た辺りでTypeMμが口を開く。
「聞きましたか?GRMからLSSジェネレータが35基提供されたんですよ」
「なに!?」
その話に驚くラドルス。どこからそんな資金が?と尋ねると
「ヒューガ・ライトですよ、イルミナスへの協力を行っていた償いとして、資産を解放して、その資金でLSSジェネレーターを用立てしたそうです」
なるほどね・・・と呟くラドルス。
「お陰で、希望が見えてきましたよ。キノコの余剰分をリュクロスの方にまわせるそうです。後ですね、話は変わりますけど、あのトニオがプロポーズしたんですよ」
「ほう」
「ええ!!お相手は誰なんです?」
女の子らしく、その手の話題に目を輝かせるりりな。
「例の、ドン・タイラーのとこにいたリィナって娘らしいんですけどね。相手も了承したらしいですよ」
「それはめでたいが・・・というか、LSSの方は兎も角、なんでトニオの方もそんな詳しい情報が流れているんだ?」
「いやね・・・それが・・・、トニオの奴、オープン回線開きっぱなしでプロポーズしちゃったんですよ」
シャトルの操縦席からクスクス笑いながらミツが答える。
「それはそれは・・・俺も、聞きたかったな。トニオの奴、暫くはいい玩具だな」
「ですねぇ〜」
「総裁もさっそく合の時を成功させなきゃならない理由が増えたってからかってましたね」
TypeMμの言葉に「まったくだ」と呟いて窓の外を見ていたラドルスの端末が通信を拾う。
「ん?」
ミツ以外の3人がオープン回線での通信に耳を傾ける。曰く、パルムの封印装置の制御室が襲われており、現場にいるライアから至急制御室へ向かうよう指示がでているとの事であった。
「まずいな・・・」
呟くラドルスの視線の先の窓にパルムが映る。その様子にりりなが「嫌な予感がします」と呟き、他の二人も頷く。
「ミツ、封印装置はデネス湖だったな」
「ですね。今、丁度今正面ですね。宇宙からでも少し降りれば視認もでき・・・まさか!!」
「湖があるから、降りられるだろ?」
卵があるから目玉焼き作って。といった調子で応えたラドルスに、
「・・・やれやれ、やっぱりね。軌道計算するから、少し待ってね」
肩を竦めてTypeMμがナビ席に座り、端末に入力を始める。ラドルスは後部座席について手持ちの装備品のチェックを始める。
「りぃ、封印装置の地図をチェックだ。どの入り口から入っても制御装置にいけるようにしといてくれ」
「はいです」
りりなはシートベルトをつけなおして、端末と睨めっこを始める。
「進入角度調整完了、大気圏突入準備OK!!」
「ホルテスから管制に従うように警告きてますけど・・・?」
「そんなん無視!!突入してくれ!!」
TypeMμとミツの言葉にラドルスが無責任な指示を出す。
「まぁ、返事分かってて聞いたんですけどね」
ミツはやれやれと最後に呟いて、シャトルを降下させる。大気圏突入の振動とノイズに混じって封印装置での通信が微かに入ってくるが、あまり状況はよくはないようである。やがて、振動が弱くなり、窓から白い雲が見えるようになる。
「ラドさん!!9時方向にガーディアンズのシャトルが!!」
「なに!?」
窓からミツに言われた方向を見ると、雲海にまぎれてシャトルらしき物体がラドルス達のものと平行して降下しているのが見えた。
「ラド様と同じような事考えた人がいるんですねぇ〜」
ラドルスの横から顔をひょこっと出してりりなが呟く。その間にもシャトルは降下していき、雲の間からデネス湖と封印装置の姿がはっきりと見えてくる。
「並行するシャトルから何かが射出された!?」
TypeMμの言葉通り、シャトル底面から何かカプセル型のものが2つ射出される。
「そうか!!脱出カプセルで先行するつもりか・・・なるほどな」
と、席を立って振動によろめきながら床のハッチを開けるラドルス。りりなもシートベルトを外して、その後に続く。
「危険だよ!!」
「制御室の守備隊から緊急援護要請の信号が出ました。かなりやばいです!!」
TypeMμの言葉にミツの報告が重なり、「って事だから」と、ハッチを閉めるラドルス。
「やれやれ・・・普段はのほほんしているのに、こんな時は人が変わるんだから」
「逆よりはいいと思いますよ」
TypeMμの言葉にミツが苦笑した時、シャトルに振動がおこり脱出カプセルがモニターに映し出される。それを見送りつつ、ミツが操縦桿を握り直す。
「とりあえず、これを湖に降ろさないといけませんね」
「だね」
そう応えてナビゲーションを始めるTyprMμであった。

 カプセルはデネス湖の湖岸ギリギリの所に着弾し、ラドルスとりりなはボートを出さずに封印装置の所まで走っていく。ラドルスの視界の端にミツとTypeMμが乗ったシャトルが降下していくのが見えたが、振り返っている余裕はなかった。
「ラド様、制御室からの通信が途絶、封印措置が停止しました」
封印装置内に入った所で、横を走るりりなの声にライアの割り込み通信が重なる
「誰でもいい!!制御室へ向かって封印装置を再起動させるんだ!!」
その声の大きさに一瞬耳が痛くなったラドルスだが、頭を振って走り出す。途中SEEDフォームが何体か現れるが、倒すことよりも前に進む事を優先して斬り進んでいく。と、そこへガイノゼロスが姿を現す。
「くっ、時間がないってのに」
カリバーンを構え直し、ガイノゼロスに正対するラドルス。
「時間がないなら、瞬殺すればいいのですよ〜」
ラドルスの横を黒い影が走りぬけていく、見ると何度か見たポニーテールがラドルスの目の前を通り過ぎ、ヘルシンゲーテが初めてみる片刃の赤い斧を振り上げてガイノゼロスの前に向かって行く。その頭上に振り下ろそうとガイノゼロスが振り上げた腕に、立て続けにフォトン弾が着弾し、軌道が逸らされたそれはヘルシンゲーテの脇に叩きつけられる。ヘルシンゲーテはその腕を駆け上り、肩から飛び上り、天井を反転して蹴りつけ、その勢いで頭上から斧を叩きつける。が、それは肩口に食い込んだだけで止まってしまう。
「まずい!!」
我に返ってカリバーンを手に駆け寄ろうとした時、ラドルスの横にいつの間にか立っていたフィレアがそれを片手を挙げて制する。
「近付くと危険だ」
「なに?」
「あ・・・」
りりなの声にヘルシンゲーテを見るラドルス、ヘルシンゲーテの斧の刃とは反対側からフォトン光が放たれ、そのまま斧は肩口から一気に床までガイノゼロスを斬り裂く。
「すげぇ〜」
感嘆の声を上げたラドルスの横で、突然フィレアが持っていたライフルを数度撃ち放つ。前方で倒れるSEEDフォーム。その横を別の斧に持ち替えて走っていくヘルシンゲーテの姿が見える。
「時間がないのだろう。感心している暇があったら先に進め」
そういって走り出すフィレアに「ああ」と言って走り始めるラドルスとその横についていくりりな。
「さっきのシャトル、あの二人だったのですね」
「だな、あの二人なら納得だ」
4人で通路を突き進み、何体のSEEDフォームを倒したのか数えるのも面倒になった時、そこで周囲の雰囲気が一変する。
「封印装置が、再起動した!?」
近くにいたSEEDフォームを撃ち倒して、フィレアが周囲を見渡して呟く。
「誰かが制御室に到着してくれたらしいな・・・でも、誰が・・・」
剣の汚れを一振りして落として、誰にともなく、呟くラドルスの耳には再起動させた人物が誰なのかとライアとカーツがやり取りしているのが通信機ごしに聞こえていた。
「とりあえず、制御室に向かおう。こんだけのSEEDフォームがいたんだ、怪我をしているかもしれない」
頷き、通路を先に進む一行の前から女性が一人歩いてくるのが見えた。
「ターゲット補足・・・やっぱりいましたね、ヘルガ」
ヘルシンゲーテが斧を構え、フィレアがライフルを構える。
「おやおや、あの裏切りマシンナリーの試作品達じゃないか、久しいねぇ」
ヘルシンゲーテの横に立ちソードを構えたラドルスであったが、ヘルガの言葉に
「裏切りマシンナリー?」
思わず隣のヘルシンゲーテを見てしまう。
「ラド様!!」
りりなの声に視線を戻すと、目の前にヘルガの姿があり、その鋭い爪がラドルスの顔に突き立てられようとしていた。
「くっ」
手に持ったソードで壁をつくるラドルスだったが、その爪にソードのフォトンが砕かれる。しかし、その直後、りりなが放った弓のフォトンアローがヘルガの腕に突き刺さる。
「試作品の次は実験体か!!まったく、出来損ない達が目障りだよ!!」
叫ぶヘルガの体が変化し、赤い髪をなびかせたSEEDフォーム化する。
「ラケルィゼン、フォトンチャージは完了してますかなのですよ〜?」
ヘルシンゲーテは斧を構えつつ通信機に尋ねる。通信機のディスプレイにチャージ時間が残り350秒である旨が表示された後、カウントダウンが始まる。
「こんなことなら、さっき使うんじゃなかったなのですよ」
フィレアと目配せし、突撃するヘルシンゲーテの視界に、脇で体勢を立て直したラドルスがナノトランサーから新しい武器を取り出すのが見えた。そのソードから強烈なフォトン光が放たれ刃が形成される。
「L.F.S.!?」
軽い脱力感にそのソードが何かを悟るフィレアとヘルシンゲーテ。が、そのままヘルシンゲーテはヘルガを軸に半時計周りに回り込み、横薙ぎで胴体を斬り裂き、反対側から接近したフィレアがその背中に手持ちのショットガンをヘルガに突きつけ、そのまま連射する。
そして、正面からラドルスがエルディザートを手にヘルガに斬りかかる。ヘルガは4本の髪の毛の束で応戦するが、ラドルスはそれを払い、刃で弾きつつ、ヘルガを壁際に後退させていく、
「人間ごときが!!」
ヘルガは右手を突き出し、その掌にフォトン光が発生するが、上からの残撃がその腕を切り落とす。
「出来損ないか!?」
床に叩きつけられた斧を持ち上げるヘルシンゲーテに髪の毛を叩きつけようとするが、何かの気配を感じて、後方に飛び跳ねるヘルガ。その地面にノス・ゾンデの雷球が着弾して弾ける。
「実験体もいい気になるんじゃないよ!!」
「・・・いい気になってるのはお前だ・・・」
ヘルガの目の前にラドルスが剣を逆袈裟で斬ろうと間合いを詰める。その背中を串刺しにしようと後方から髪の毛が2本、襲い掛かるがその髪の毛はラドルスの体を貫通したように・・・見えただけだった。
「な!?」
驚いた時には真横の壁、天井と順に蹴ってその勢いでヘルガの背中を袈裟斬にしたラドルスの姿があった。よろめくヘルガへ真横に剣を振ろうとしたラドルスであったが、ヘルガの髪の毛がその刃に絡まり、動きを止める。次の瞬間にはその髪の毛は斬り裂かれたが、ヘルガはその一瞬の間全てを逃亡の為に使った。
「逃がすか!!」
フィレアがライフルを撃つがそれは髪の毛に阻まれ、ヘルガの体には届かなかった。
「今日の所は目的は果たしたから見逃してあげるよ!!」
捨てセリフを残して壁に溶け込むように消えたヘルガ。その壁を憎らしげに見つめるヘルシンゲーテの通信機にチャージ完了の声が入る。
「遅い!!なのですよ〜」

 制御室に到着したラドルス達に知らされたのは、封印装置を再起動したのはトムレイン博士であり、博士自身はフォトンの光に希望を託して逝った事であった。
 ガーディアンズ総裁ライアは博士の死を公表すると共に最後の封印装置へ向かう最終作戦の発動を宣言する。ラドルスとりりなも先行して出発した黒コートの面々に合流すべく、ガーディアンズ・コロニーで準備を始めたのである。
 
 トムレイン博士から託されたものを次の世代へと託せるように・・・


メニュー 奮闘記メニュー 目次


inserted by FC2 system