砂獣の翼、鉄の咆哮

(モトゥブ:「最凶の砂獣」より)


 グラール太陽系の第三惑星モトゥブ、地表の大半が砂漠や岩場という過酷な環境の中でも、人々は生活を営んでいる。その生活の場の一つ、ダグオラシティのガーディアンズ支部に二人のガーディアンがカウンターの前にいた。
そのうち一人が、カウンターにいる受付と話をしている。
「で、その巨大生物を退治するのが任務って訳か・・・」
「だな。目撃者が子供だったので詳細は不明なんだが、恐らく・・・」
「ディマゴラスだろうな・・・」
「しか考えられないな」
「また、厄介なミッションに鉢合わせちゃったね・・・」
と、肩をすくめる青髪のガーディアン・・・ラドルス。
本来は別の用事でモトゥブに来ていたのだが、その帰りに立ち寄った支部に、丁度ミッションが入ってきたのである。しかし、モトゥブ支部にしてみれば、厄介事が舞い込んできたときに、幸運にも目の前に押し付けられる人材がいたのだ。これを有効に使わない手はないのである。
「って訳だけど、いくか・・・りぃ」
「私はいつでもOKですよ〜」
「って訳で、行ってくる」
「おう、気をつけてな」

「クグ砂漠は相変わらずきついなぁ・・・」
「私は平気ですけどね」
とりあえずクグ砂漠の西部にある野営基地に向かって歩く二人。
「ビーストは丈夫だなぁ。しっかし、ほんとにこの暑さ、なんとかならんかね・・・」
「なんとかしましょうか?」
思わず立ち止まるラドルス・・・杖を取り出しで構えるりりな。
「カチーンと凍らせれば・・・」
「・・・遠慮させて頂きます」
「残念です〜・・・あや?」
空を見上げて止まるりりな、その方向を見たラドルスの目に大きな影が映る。
「ほい、どんぴしゃ」
「ディマゴラスですね」
最凶の砂獣と呼ばれ、ローグスさえもその姿に恐れおののくと言われるディマゴラスが大空を舞っていた。
「撃てるか?りぃ」
「無理ですね、ちょっと高すぎます」
一度は弓を構えたものの、撃てないと判断してそれをおろすりりな。
「俺のハンドガンは論外だしな」
そんな二人は視界に入らないといった風にディマゴラスはラドルス達の向かう方向へ飛んでいった。

西クグ方面野営基地、同盟軍がSEED殲滅作戦の為に建設したものを、ガーディアンの為にも一部解放しているもので、モトゥブの過酷な環境下でのミッションの補給・休息の場として、ガーディアンに重宝されている。
 その基地内の休憩所にラドルスとりりなは到着していた
「ふぅ〜、やっと一息つけるな」
椅子に座り、手で顔を扇ぐラドルス。そんなラドルスの前にりりながコーヒーを置く。
「お、サンキュ」
「えへへ、勿論ホットですよ」
「いくら暑くても、アイスは飲めないからね」
変な所でこだわりを持っている・・・
「で、どうされます?」
「どっかにおびき出せればいいんだけどな、剣で叩けない事にはどうしようもない」
コーヒーカップを片手に、周辺地図を眺めるラドルス。と、そこへ一人の大柄なキャストの男が入ってきた。
「おや、剣士殿じゃないですか・・・こんな所でホットコーヒーなんて相変わらずですな」
と、アイスティーを片手にラドルスの隣に座る
「ベイ殿か・・・」
「お久しぶりです〜」
ラドルス、りりなと同じく、ガーディアンズ所属のオクリオル・ベイである。
「こんな所で会うなんて奇遇ですな・・・と言いたい所ですが、実は剣士殿達を追って来たんですよ」
といって、ライフルを取り出すオクリオル。彼は任務内容によって、その制御プログラムを変更し、柔軟に対応する事ができるガーディアンである。
「正直、りりな殿の弓と剣士殿のハンドガンだけでは、あれの相手はきついですからね。」
「そいつは助かる」
と、ラドルスの携帯端末がアラームを鳴らし、モトゥブ支部からのメッセージを表示する。その内容を見てラドルスの顔色が変わる
「どうかしました?ラド様」
「ディマゴラスがこの先のエネルギープラントを襲っているらしい、りりな、ベイ殿、行けるか?」
「いつでもOKですよ」
「了解で〜す」

エネルギープラント・・・その上空で電撃散弾や大岩で好き勝手にディマゴラスが暴れている。プラントから警備の同盟軍が攻撃をしているが、大した効果は与えたように見えない・・・と、その顔へ横から何かが飛来し、大爆発を起こした。
怒りの咆哮を上げディマゴラスが振り向くと、高台に3つの小さな影があった。その内の一人が巨大な物体を構えている。
「どうやら連射は無理のようですね。まぁ、こっちをターゲットに変えてくれたようですがら、よしとしましょう」
と呟いたオクリオル・ベイの前には、巨大なグレネードと思わしきものがあった。それはアンカーで固定されていたようだが、それも大きく地面にめりこみ、撃ったオクリオル・ベイの足も同様に大きく地面にめりこんでいる。大柄なオクリオル・ベイでなければ、支える事もできなかったであろう。
「というか・・・これ、ほんとにグレネードか?それと、さわるなよ、りぃ・・・」
ラドルスがその砲身に砂をかけながら言う。砲身もかなりの熱を持っているようである。
「ひぁ」
慌てて砲身を突付こうとしていた指を引っ込めるりりな。そして、杖を出して自分を含めた全員に戦闘に備えて補助テクニックをかけていく。
「テノラの試作型実体弾のグレネードで『ツヴァイ』というらしいですが・・・、これは携行武器にはできませんね。」
「ふむん、テノラの試作武器試験の依頼も同時にこなすって訳だったのか」
「そんなところです」
「まぁ、十二分に役に立ったから無問題っと」
そういって愛用の剣を抜いたラドルスの上にディマゴラスが飛来していた。

「おっし、いくぜ・・・ブレイク!!」
ラドルスの掛け声と共に3人はそれぞれの方向に散る。その場所に電撃散弾が叩きつけられ、そこにあったツヴァイが木の葉の様に吹き飛ぶ。
「狙い撃ちます!!」
オクリオル・ベイのライフルがディマゴラスの片翼を撃ち抜き、バランスを崩したディマゴラスのもう片翼をりりなの弓から放たれたフォトンが貫いた。たまらず、墜落するディマゴラス。
「落ちてこないと、斬れないんだよね〜」
巨体墜落の衝撃を剣を地面に突き立ててしのぎつつ、その腕に剣を叩きつける。りりなとオクリオル・ベイもそれぞれの武器でディマゴラスに攻撃を加えていく。と、突然地面から巨大なミミズが3人の足を捕らえた。ガーディアンが動けなくなった隙に羽を再生したディマゴラスは再び、その巨体を空へと舞わせる。
「あらら、飛んじゃったよ・・・」
「も一度落とせれば・・・」
「んみゅぅ〜」
と、ディマゴラスを見上げていた3人へ、ジシャガラと大岩が飛んでくる。
『うわぁぁぁぁぁぁ』
たまらず、3方へ散るガーディアン・・・
飛んで来る雷撃散弾を避けつつハンドガンで翼を攻撃するラドルス、しかし効果があるようには見えない。と、その翼で爆発が起きる。見ると、衝撃に耐え切れず後ろに吹き飛ぶオクリオル・ベイとツヴァイがラドルスの視界に入る。
「ナイスだ、ベイ殿!!」
翼の大半を吹き飛ばされ、再び地面に落ちるディマゴラス。苦しみながらもその腕を振るい、近づく小さな物体を払いのけようとするが、その物体は小癪にもそれを掻い潜り、その体にニ度三度と剣を突き立てた。
抵抗をするディマゴラスにラドルスの剣、体勢を立て直したオクリオル・ベイのライフル、りりなのバータがその生命力を奪っていく・・・。
 そして、遂にディマゴラスは土煙を上げて地面に倒れたまま動かなくなった。

『かんぱ〜い!!』
ダグオラシティにある、ガイールの酒場でディマゴラス討伐の祝杯を上げる3人のガーディアンがいた。
「にしても、ベイ殿・・・左腕は大丈夫か?」
「ええ、調整は先程済ませましたよ」
ツヴァイの2射目は体を固定できなかった為、左腕が損傷していたオクリオル・ベイである。それでも、ライフルで正確な射撃をしていたのだから大したものである。
「はいは〜い!!りりなもがんばりました」
立ち上がって手をあげるりりな
「だな、りりなもがんばった」
「えへへ♪」
「相変わらず、仲がいいですな」
りりなとラドルスのやり取りに呟くオクリオル・ベイ、人間ならば微笑んでいるといった所であろう。
「にしても、あれもSEEDの影響なんでしょうかね?」
「だろうな・・・今のところ人間に影響がないってのがせめてもの救いだよ」
「なんの話ですか?」
急に真剣な顔になったラドルスとオクリオル・ベイの間にりりなが割り込む
「りぃには分からない難しい話さ」
「むぅ〜」
「ははははは」
「ま、なにはともあれ、ミッションコンプリートだ、かんぱ〜い」
『かんぱ〜い』
ラドルスの声の後に二人の声が唱和した。
ダグオラシティの夜はまだこれからである・・・


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