紅葉狩り

(ニューデイズ:「ミズラキ保護区防衛」より)


惑星ニューデイズの首都、オウトク・シティ。その中にある、フライヤーベース前に二人のガーディアンがいた。一人は青髪のちヒューマンの男、もう一人は薄い紫色の髪をツインテールにした小柄なビーストの娘である。
「で、ミズラキの木を荒らす原生生物を退治すればいいんですね」
ツインテールの娘、りりなが傍らの青髪の男、ラドルスに確認の意味で尋ねている。ミズラキ保護区で凶暴化した原生生物が暴れており、保護対象であるミズラキの木に被害が出ているという。その対処が今回のラドルスとりりなの任務であった。
「ん〜、教団にまかせてもいいとおもうけど、これが俺達の仕事だからね。ミズラキの木は紅葉が奇麗だから、紅葉狩りといこうかね」
「はいです〜」
二人はそのままフライヤーベースに入る。と、その直後数人の男達が大量のダン・ボウルを運んできて、フライヤーへの積み込みを始めた・・・

ミズラキ保護区、その名前の通り保護指定を受けているミズラキの木の保護を目的とした管理区域であるが、その区域自体が巨大なミズラキの木でもある。
「つまり、このミズラキの木さんは木の上に立っているんですね・・・」
「そういうこと、一見地面に思えるけど、既に木の枝の上を歩いているんだよ。ここは既に地上から100mってとこかな?」
「ほぇ〜」
口を半分空けながら周囲を見渡すりりな。と、遠くから剣戟の音が聞こえた。
「ん?他のガーディアンが来てるのかな?一応状況確認ってとこかな」
剣を抜き、その音の方向へ走っていくラドルス。りりなも杖を出してその後ろを走っていく・・・と、道が狭くなった場所で数人のガーディアンと思しき男達が原生生物を相手に戦っている。そしてその男達は揃いの格好をしていた・・・。
「ラド様、あの方たち、く・・・」
「ストップ!!それ以上言うな・・・」
振り返り、その男達を見ないようにしていたラドルスだが、原生生物を駆逐した先方に気付かれてしまった。
「おや、剣士殿ではありませんか。向こうに局長と副長がいらっしゃいますよ」
額を軽く押さえているラドルスに黒コートの男は笑顔で道を空けていた。

暫く道を進んだ先にかなり開けた場所があり、そこに6本の鉄パイプでビニール製の屋根を支えているテントが3つ建っていた。屋根は黒に白い文字で「黒コート愛好会」と書いてあり、その内の一つには「本陣」と書き加えられている。そのテントの屋根の下で二人の男がくつろいでいた。
「・・・何をやっているんだ?ゼロにゃとレニしゃ」
「誰かと思えば、剣士とりぃじゃないか。任務か?」
ラドルスにレニしゃと呼ばれた黒コートの男、レニオスはそういうと、右手に持っていたティーカップを横の机の上に置いた。
「今日は黒コート愛好会の紅葉狩りってとこですよ、ラドさん」
もう一人の男、ゼロがティーカップを片手にしながらそういって空いている片手を挙げて、挨拶する。見ると、他の二棟のテントの下でも数人の黒コートのガーディアン達がテーブルを囲んで談笑している。
「本当ならは、全員で一緒といきたかったんだが・・・、原生生物が大暴れしていてな。交代でここの防衛しながら駆逐をしている」
と、レニオスが傍らの通信機のスイッチを入れる。すると、「なんで、こんなにもゴーモンの大群が!!」「うぉぉぉぉ、やぁぁぁぁぁってや・・・」「わぁ、隊長が凍結したぁ」
「だれか、レジェネを!!」といった声が聞こえてきた。暫し瞑目し、考えるレニオス。
「・・・これ、どこだ?ゼロ」
「ん?一番隊の受け持ち区域の通信だと思うぞ」
「一番隊かぁ・・・まぁ、ジャバならいっか・・・」
そう呟き、スイッチを切るレニオス。
「いいのか!?苦戦しているようだったぞ!?」
そう突っ込んでから、しまったと内心舌打ちするラドルス。
「聞いたかゼロ、剣士殿が援護に向かってくれるそうだ」
仰々しく両手を広げてわざと周囲に聞こえるような声で、レニオス。その唇の端がニヤリと上がっているのをりりなは見逃していなかった。
「まぁ、なんか釈然としないが、元々原生生物の退治にきたんだ。行くか、りぃ」
「はいです〜」
「お〜、頼んだぞ〜」
テーブルの上の新たに置かれた料理皿からピザを一切れつまみながらレニオスとゼロは笑顔で手を振った。

数時間後・・・

「おう、ラドルス遅かったなぁ」
寿司を摘みながら、片手をあげて、ラドルスとりりなを迎えるレニオスとゼロ。
「ついでに周辺も回って一通り片付けてきたんだよ。それにしても、ずいぶんとお寛ぎのようだな・・・」
肩で息をしながら二人をじと目で見るラドルス。その横でりりなはゼロの手招きに応じてちゃっかりテーブルにつき、寿司に手を出している。その辺のスタミナはさすがビーストである。
「はははははは、ご冗談を。ちゃんと各員の配置を考えたりしてるんだぜ〜頭脳労働って奴さ」
「理屈は通っているが、なんか釈然としないんだよなぁ・・・」
「と、そういえばジャバはどうした?一緒じゃないのか?」
ラドルスはりりなの隣に座って好物の〆鯖を取っていたが、そのレニオスの問にしばし宙を見つめ・・・
「そういや、ビースト男の氷像を持って帰ってくるの忘れたなぁ・・・」
と、言ってそれを口に運ぶ。
「あれ?そういえば、ラド様が谷底に何かを蹴落としてませんでした?」
「そんな事もあったかな?まぁ、細かい事はいいんじゃないか」
出された緑茶をすすりながらりりなの問にすっとぼける。
「なんか、何回もゴーモン達の中心に突撃しては凍ってたんで、ラド様がイライラしてたような気もしましが・・・」
と、りりなも緑茶をすすりながら暫し考えていたが・・・
「まぁ、ラド様がいいというならいいんですね」
と、次は何を食べようかと皿を見渡し始める。
「そうそう、細かい事は気にするな」
「まぁ、それも一興・・・」
「だね・・・」
「これ、美味しいです〜」
と、談笑しながら寿司を食べる4人。

翌日、凍結したまま「なぜか」川を流れていた黒コート姿のビースト男性が救助されたとのニュースがグラールチャンネル5で流されていたが、それはまた別の話である。


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