サンプルを回収せよ!!

(ニューデイズ:「彼女からの極秘任務」より)


 惑星ニューデイズのオウトク・シティにあるガーディアンズ支部のカウンター前に二人のガーディアンがいた。一人は青髪のヒューマン、もう一人は紫の髪をツインテールにしたビーストの娘。二人は、あるミッションデータを見て考えていた。そのミッションデータは一分前に追加されていたもので、二人はたまたまその更新直後にそれを見つけてしまったのである。そのデータにはミッションの内容等はなく、依頼人名と、
 『個人的な秘密の依頼です。
  ほんとーに困ってます。
  時間がありません。
  急を要します。
  誰か助けて・・・』
というメッセージめいたものが書かれているだけであった。
「ん〜」
「どう思います、ラド様」
唸る青髪に、ツインテールの娘が問いかける。問われた青髪―ラドルス―は意を決して、その依頼を受ける旨、カウンターの受付に伝えたのであった。

 指定された部屋に入ると、一人のビーストが待っていた。
「はじめまして、私はブナミ・シーゴル。今回のミッションは私の個人的な依頼なの」
と、いって二人に席を勧めるブナミ、ラドルスとりりなは素直にその勧めに従う。
「えっと、わたしバカだから、上手く説明できなかったらごめんね」
「いや、不明な所はちゃんとこちらから聞くから、構わず進めてくれ」
「あのね、こないだ任務でシコン諸島のとある廃寺院周辺の侵食状況の調査に出かけたの。いつもドジばっかりしている私には珍しく、任務は無事成功!目的のサンプル収集をすることが出来た訳」
「・・・珍しく???」
「ラド様、し〜です」
「で、今日その報告会があって、サンプルを上司に提出する予定だったんだけど・・・」
「・・・レポート作成なら手伝えないぞ・・・」
「ラド様・・・」
「いえ、さっき確認したらそのサンプルデータがどこにもないのよ・・・。まったくもう、どこへいっちゃったのかしら?このままじゃ、今度こそクビになっちゃう・・・」
と、頭を振るブナミ、ラドルスが周囲を見ると、空き巣にでも入られたかのように物が散乱している。
「・・・なるほど、これは必死の捜索の後って訳だ・・・」
「で、今から私一人でサンプル収集してたんじゃ間に合わないので・・・」
「俺達に協力を頼みたいって訳だ」
「そう!!私にしては名案よね!?」
「いや。それは分からないが・・・」
「お願い、私が上司を誤魔化して時間稼ぎしている間にサンプルを取ってきて欲しいの」
と、両手を合わせて頭を下げるブナミ、ラドルスはそれを見つつ立ち上がり、
「OK、面白そうだ。その廃寺院の座標と目標の情報をこっちにくれ」
「ありがとう!!あと、この任務はくれぐれも極秘にして欲しいの、だって、上司にばれたら全く意味がないでしょ?レイラとは口裏合わせてあるから記録には残らないわ」
「了解。なんか、悪戯っぽくていいねぇ〜」
「・・・ラド様・・・」
「ほんと、お願いね〜。あなた達の行動に私の将来がかかっているわ!!」
部屋を出て行くラドルス達にブナミはブンブンと手を振るのであった。

 部屋を出て、受付の前に戻ったラドルス達を二人の顔見知りが待ち構えていた。
「やほ〜ラドさん〜」
二人のうち白いキャストの娘がラドルスに気付いて手を振る。その後ろで赤い髪をストレートにしたニューマンの女性が頭を下げる。
「げっ、ルミルミ・・・」
「あ、ルミ姉さまとてんて〜だ〜」
「てんて〜じゃないから!!」
「『げっ』ってなによ!!」
ズンズンとラドルスに詰め寄るキャストの娘、ルミナス。りりなの言葉に即突っ込みを入れるニューマンの女性、リーファ。
「それはそうと、レイラから話は聞いているわ。詳細は移動しながら教えて」
ルミナスの笑顔交じりの言葉に、一瞬呆然とするラドルスだったが、今回の任務の特性をい思い出して、二人を招きつつシャトルステーションへ向かうのであった。

「さてっと、さくっとサンプルを回収して、戻るとしますか」
ナノトランサーからソードを取り出して軽く振りながらラドルスはそう言って周囲を見回した。
「こっちの準備はもうできてますよ〜」
杖をブンブンと振り回しながらりりな、それを上半身をかるく横に逸らしてかわしているリーファ。ライフルの残フォトンを確認しながら時間を確認するルミナス。
「タイムリミットは15分ってとこかな?」
「OK、ほんじゃ突撃!!」
ラドルスの号令の元、対象エリアに突撃していく3人、そこへゴーモンの一団が現れるが、ラドルスが接敵する前にルミナスのライフル、二人のフォースのテクニックでその先頭集団が瞬殺される。
「・・・こりゃ、今回出番無しかな・・・」
苦笑しつつも、ゴーモンの先へと進むラドルス。と、そこへカマトウズが突撃してくる。慌ててソードで横へすり抜け様に横腹を斬り裂くが、大した効果があったようには思えなかった。振り向き、そのまま斬り込もうとしたところへ、カマトウズの周囲に氷柱が聳え立つ。
「くっ、ギ・バータか・・・」
防御姿勢をとるラドルスだが、その足元から凍結が始まる。が、次の瞬間、凍結が解除される。見ると、りりなが杖をこちらへ構えて立っている。どうやらレジェネをかけてくれたらしい。そして次にレスタと、補助テクニックがかけられる。
「さんきゅ〜、りぃ」
「えへへ」
ギ・バータの後、前足を上げて突撃の姿勢をとったカマトウズにソードを横薙ぎに一閃し、その回転を利用し、唐竹で一撃を入れる。そこへ、ゴーモンの群れを突破してきたルミナスとリーファがそれぞれライフルとテクニックで援護を入れる。
「おっし、いける!!って・・・どわぁぁぁぁぁ」
もう一撃と思った時、重低音で響く足音に振り向いたラドルスは、突撃してきたカマトウズ2体にはねられ、宙を舞った。

「いたたたた・・・まだ、頭がクラクラする・・・」
廃寺院の入口で頭を軽く振りながら呟くラドルス。カマトウズはリーファとルミナスが笑いながら退治し、りりなが地面に落ちたラドルスを治療した。
「にしても、見事に飛んだよね〜」
「ちょっと面白かったかも」
「そこの二人、何笑ってるの!!」
ルミナスとリーファのクスクス笑いを指差し突っ込むラドルス。その脇でこっそりとクスクス笑いしているりりな。
「とりあえず、指定されたサンプルは最低数集まったけど、もう少しいけるかな?」
「ですね・・・いけるとこまでいってみましょう」
「で・・・ラドさん、道が二手に分かれているけど?」
ラドルスとりりなの会話に続いた後、前方を指差すルミナス。確かに道が左右に分かれている。
「残り時間を考えると、二手に分かれるのが一番じゃないかな?」
リーファの言葉に、自然と左にラドルスとりりな、右にルミナスとリーファと二手に分かれる4人。
「ま、こうなるよね・・・やっぱ。そんじゃ、あとでね〜」
苦笑しつつ、片手を上げてラドルス達に背を向けるルミナス達。それを見送り、ラドルスとりりなも先へと進む。扉を開けると、巨大なプレスが目の前で上下運動をしている。
「・・・典型的なトラップだなぁ・・・」
呟くと、微かに振動が起こり。天井から埃が落ちてくる。
「・・・ルミ姉さま、リミッター外れましたかね?」
「元々、そんなもんあったか怪しいけど、好きにやってるっぽいのは確かだな」
と、会話しながらもタイミングを計ってプレスを通り抜けるあたり、なんだかんだといってガーディアンな二人である。そこへテンゴウグが数匹現れるが・・・
「んみゅぅ〜」
りりなの放ったノス・ディーガが立て続けに炸裂し、ラドルスはその場で立ち止まったまま、それを見ている。
「ラド様〜、サンプルゲットです〜」
りりなが倒したテンゴウグの周囲でサンプルを採取し、ラドルスの所へテテテテテ〜っと走ってくる。そのまま部屋の先に進むと、大きな広間に出て丁度別の扉からルミナスとリーファが入ってくる。
「ルミ姉さま、サンプルゲットです〜」
「おおっ、さすがりぃちゃん。まぁ、こっちも採取したけどね〜」
「で、次はあの扉かな?」
「見取り図だと、あの先が最終ブロックですね」
リーファの言葉に、それぞれ武器を構えて扉をくぐると・・・一同は軽い眩暈に襲われる。
「くっ、トラップか・・・」
頭を振って周囲を見ると、ラドルスは最終区画らしい通路に立ってた。
「ん〜、強制的に二手に分けられるようですね」
後ろからの声に振り返ると、そこにはリーファが立っていた。リーファは口を開きかけるラドルスを指差し、
「てんて〜じゃないからね」
「くっ」
「・・・やっぱり・・・」
リーファがそう呟き肩をすくめると、遠くで高笑いがしたかと思うと、大きな振動が二人を襲う。見ると、遠くに火柱と立ち上り、雷球が舞うのが見える。
「ルミルミとりぃはあそこか・・・」
「みたいですね。意外とあの組み合わせは危険なのかな?」
「かもね、とりあえず合流しよう」
二人は通路を爆音の方へ向かって駆け出した。

 ラドルスとリーファがゴーモンを倒し、サンプルを採取しつつなんとか爆音の発信源へ到着すると、床や壁が焼け焦げた広間にたどり着いた。その中央にはルミナスとりりなが背中合わせに立っていた。
「あ、ラド様〜やっほ〜」
「遅かったね〜」
ブンブンと笑顔で手をりりなと、ルミナス。周囲の惨状にとりあえずどうきりかえすか言葉を選んでいるラドルスとリーファ。
「で、ラドさんラドさん」
「ん?」
ルミナスの言葉に我に返ったラドルスに、今度はりりなが言葉を続ける。
「この先にちょっとやっかいなのがいるんですよ・・・」
「やっかいなの?」
答えながら、ルミナスとりりなが先に進むのでとりあえずついて行くラドルス。階段を下りると、転送装置が光を放っている。りりなの手招きに従ってラドルスはその上に立つ。りりなが補助テクニックを順番にかけきった所で、ルミナスが笑顔で
「そんじゃ、がんばってね〜」
「なっ」
ルミナスがスイッチを入れると、ラドルスの姿は3人の前から消える。
「ルミ〜、この先何がいるの?」
その転送装置の近くまで歩き、指差してリーファは相方に尋ねる。
『ん〜、カガシバリ〜が2体』
「うむ、行かなくて私正解」
ルミルミとりりなの答えに、転送装置から3歩下がるリーファ。丁度、遠くから聞きなれた声の悲鳴が聞こえるが3人は聞こえない振りをする。そんなこんなで3人が談笑を始めてから暫くして、転送装置の上に肩で息をするラドルスの姿が現れる。
「お、お前等〜」
『いや〜ん、そんな怖い顔しちゃ駄目〜』
示し合わせた通りに声を合わせて、笑顔で手をパタパタと振る三人。
「・・・くっ、まぁ・・・時間がないから、戻るとするか・・・」

「あ、あれ???え?ウソ!?」
オウトクのガーディアンズ支部に戻ったラドルス達を迎えたのはブナミの驚きの声であった。
「こんな短時間でこれだけのサンプルを集めたの?はぁ〜、アナタ達は私と違ってホント優秀なのね。すごいなぁ、何だかちょっと申し訳ない気がするわ・・・」
頭を振りながら肩を落とすブナミの最後の言葉にラドルスが疑問の声をあげる。
「申し訳ない?」
「そんなことより、それを持って報告会に急いで下さい」
ラドルスを遮ってりりながブナミに渡したサンプルを示す。が、ブナミは暫く考え込んでしまう。怪訝な顔をする一同に、意を決したかの様に顔を上げ、ブナミは言葉を続ける。
「やっぱり、あなた達には話しておくわ。実は・・・サンプルを無くしたと思ったのは私の勘違いだったの」
「なんだ、勘違い・・・ほへっ!?」
ブナミの言葉に相槌を入れようとしてすっとんきょうな声をあげリーファ。
「あの後、直に見つかって報告会も無事に終えたわ」
呆然とするルミナスとリーファ。そして、りりなは横にいるラドルスの様子が徐々に危険な方向に向かっているのに慌てていた。
「無理言って引き受けてもらったのに、ホントごめんなさい!も、勿論報酬はそれなりに用意したわ。お陰で私は来月いっぱいお昼抜きだけど・・・仕方ないわよね。はぁ〜」
「はぁ〜じゃないだろ〜!!」
再び肩を落として頭を振るブナミにラドルスが立ち上がり、(流石にフォトンは出していないが)セイバーを振り上げる
「うぁぁぁぁぁ、ラド様ぁぁぁぁぁ」
「こっちは宙を飛ばされたり、ダブルラリアット喰らったりしたんだぞぉぉぉぉ!!」
ガーディアン支部にラドルスの声が響き渡った。

 暫く後・・・
「次にあんなことしたら食後のコーヒー抜きにしますよ」
「はいはい」
頭にコブを3つつくったラドルスにりりながお説教をしている。
と、そこへニューデイズ付のルゥがやってくる。
「皆さん、漫才は終わりましたでしょうか?」
「漫才やってる訳ではないけど、何か?」
ルミナスが応対に出ると・・・
「いえ、ブナミさんも悪気があった訳ではないのです。大目に見てあげて下さい。まぁ、システムへの干渉は別のペナルティを受けてもらいますけど」
『へっ?』
言うだけ言って去っていくルゥの背中を呆然と見送る4人であった。


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