女性達の買い物同行 S

(ガーディアンズコロニー:オリジナル)


「ラド様、ラド様〜この後、買い物に出かけません?」
ガーディアンズコロニー内にあるガーディアン宿舎の片隅に住む、ガーディアンのラドルスが昼食を食べている最中に、同居しているビーストの娘、りりながこう切り出した。
「買い物?」
うどんをすすりながら答える青髪のヒューマン、ラドルス。
「隣のレインさんと、上の階のリーファさん達が服を買いにいくそうなんですけど、一緒にどうですか?って」
「・・・服・・・ねぇ・・・。まぁ、暇だからいいか」
そういってドンブリのつゆを飲み干すラドルスの横でシルフィーネが呟いた。
「無謀な・・・」

待ち合わせの場所には同じガーディアン仲間である数人が来ていた。
既に女性陣が話をはずませており、その横で1人の男が座って呆れ顔でその様子を眺めていた。当然、ラドルスの知っている顔である
「おや、アルト・・・お前さんも来てるとはね」
アルトと呼ばれたヒューマンの男が口を開く前に、話をしていた女性の1人が振り向き、
「ああ、ラドさん。ご主人は今日一日私の財布と荷物持ちを引き受けてくれたんですよ」
そう言ったのはアルトと公私に渡ってのパートナーで、ラドルスの隣に住む、レインである。そして、その言葉にアルトが肩を落とす。
「ああ、皆まで言うな、なんとなく分かった・・・。しかし、お前さんも懲りないね」
そう言ってラドルスはポンッとアルトの肩を叩く。
「しょうがないだろ、俺は男って生き物に生まれちまったんだ」
そういって顔を上げたアルトであった。

メンバーの最後であったラドルス達が合流したので、クライズシティのショッピングモールへ向かう男女6人の一行、先頭を歩くのはニューマンのリーファと、その相方であるキャストのルミナス、その後ろをりりな、ラドルス、アルト、レインが並んで歩いている。
「で、とりあえず、ここでいいかな?」
と、リーファが示したのは先週オープンしたばかりの若い女性向けの店である。当然、ラドルスは来たことはない・・・
「ああ、ここって広告が来てましたね〜」
りりながショーウィンドゥに飾られた服を眺めて言う。
「ま、入りましょう」
レインが先頭になって一行は店に入った。

「で、これなんてどう?」
「その色リーファさんに似合いますね」
「へぇ〜、値段は思ったより安いのね」
「キャスト用の服まであるんだ、これいいなぁ」
「ルミ、そっちもいいんじゃない?」
「私が着れるサイズもあるんですね」
「こっちもかわいいなぁ」
「どれどれ?あら、いいんじゃない?」
そんなやり取りを眺めている男性二人・・・
「なぁ、ラドよ・・・今考えていること当ててみせようか?」
「なんだ?」
「来るんじゃなかった・・・だろ?」
「・・・なんで分かった?」
「・・・同じだからだ」
同時に溜息をつく二人・・・そんな二人を他所に、女性達の服選びは続く。
「ねぇねぇ、これ試着してみようかなぁ」
「いいんじゃない?」
「わぁ〜、こっちもいいなぁ・・・でも予算が・・・」
「私は財布がいるから大丈夫だけどね」
「いいなぁ・・・ルミィ、少し貸してぇ〜」
「だめぇ〜」
「ご主人!!寝てない!!」
「お、おう!!寝てなんかいないぜ!!」
「・・・」
無意味にポーズを決めるアルトと、転寝しかけのラドルス。
「りぃ、これなんかどう?」
「ん〜、ちょっと肩が出すぎです〜」
「じゃあ、こっちなんて」
「もっと出ちゃうじゃないですか〜」
「りりなちゃんは、もっとゆったりで布の多いのが好きなのよね」
「です〜。でも、これなんかいいかも・・・」
『それのほうが布少ないじゃん』
りりなの取った服に3人同時突っ込みが入る。
「それがいいなら、こっちもいいんじゃない?」
「そ、それは大胆すぎます・・・」
「それがいいんじゃない、ラドさんもイチコロよ」
「まぁ、もう落ちてるっぽいけどね」
『アハハハハハ』
「そんなことないですよ〜」
「そうなの?」
「ですよ」
『甲斐性無し』
「ところでラド様、こっちとこっち、どっちがいいです?」
「むにゃ・・・ひりゃり・・・」
「ラドさんってこっちの方が趣味だったんだ、意外〜」
「やっぱ、可愛い系の方がいいのねぇ」
「えへへ、ラド様が選んでくれたほうにしよ〜っと」
「私は・・・これも買っちゃおうかなぁ〜。いいよね、ご主人?」
「おお、好きにしてくれ・・・」
「おっし、好きにしよ〜っと」
「おい!!加減を・・・」
「却下!!」
「ルミ〜、やっぱり少し貸してぇ〜」
「却下!!」
「俺、今月の小遣い残るかなぁ〜」
結局、店を出たのは1時間半が経っていた・・・

「さて、次はこのアクセサリー屋ね」
と、ルミナスが指差したのは隣の店である
『ここで待ってるってのあり?』
見事に質問がハモったラドルスとアルト
『だめぇ〜』
だが、返事も(最後に1人「です〜」がついたが・・・)ハモっていた。
「あきらめろ、アルト」
「だなぁ、ラド」
肩を落として店に入る男性陣二人であった・・・
「あ、これもいい」
「これなんて、りりなの髪にあいそう」
「ん〜、似合うかなぁ」
「似合うって」
「どう思いますラド様〜」
「にひゃう〜」
「えへへ」
「この眼鏡、フレームいいなぁ」
「この髪飾りいいけど、高いなぁ・・・ま、いっか」
「よくねぇ・・・」
「あ、この帽子いいかも」
「どれどれ、いいわねぇ」
「いっそ、みんなでおそろいに・・・」
「それも、面白いかも」
「んみゅぅ〜」
「で、これなんてどう?」
「私にはちょっと似合いませんね、てんて〜に合いそうです〜」
「てんて〜じゃないから」
『え〜』
「ご主人、なに座り込んでるの!!」
「そんなことないぜ!!」
無意味にポーズを決めるアルト
「・・・」
「ラド様、寝てる???」
「おきゅてりゅにょ〜」
ひらひらと手を振るラドルス・・・(ぢつは寝てる・・・)
「まったく、まだ2件目だってのに情けない・・・」
『よねぇ〜』
「・・・『まだ』なのかよ・・」
「ご主人、何か?」
「なんでもねぇ・・・」
・・・店を出た時には夕方になろうとしていた・・・

「ただいま、6名様ですと、お席が離れてしまうのですが、お待ちになりますか?」
『4人2人でお願いします』
夕飯も一緒にということでレストランに入ったのだが・・・店員の案内にラドルスとアルトの声がハモった。で・・・
「・・・ラド様・・・だったんですよ」
「それだったら、うちのも・・・」
「それ、ほんとぉ?」
『信じられないよね〜』
店内の喧騒にまぎれて女性陣の声が少しだけ聞こえてくる
「こう、中途半端に聞こえるって精神衛生的に良くないと思わないか?アルト」
「ネタにされて笑われてるってのは確実じゃないか?ラド」
ドリンクバーのコーヒーを飲みながら、その声を聞く二人
「・・・で、あんのご主人が・・・」
「ラド様はそんなことしませんよ〜」
「それ、ほんとぉ?」
『信じられないよね〜』
「・・・レインさん、なんか怒ってるよ?」
「・・・思い当たるふしがありすぎて困るぜ」
「お客様、椅子の上には立たないで下さい・・・」
椅子の上に立ち、無意味にポーズをとるアルトであった。

「楽しかったですねぇ、ラド様」
「お、おう・・・」
「ちょっと、荷物置いてきますね」
「お、おう・・・」
結局、帰ってきたのは夜になってからだった・・・
「お疲れですねぇ・・・」
1人になったラドルスの所へシルフィーネがコーヒーを持ってくる。
「疲れたよ・・・」
「ま、女性4人の買い物に付き合うってのが無謀でしたね」
「ああ・・・ラド、覚えた・・・ってとこだ」

後日・・・
「ラド様、この後お買い物行きませんか?レインさんが一緒にいきませんか〜って」
「買い物・・・ねぇ・・・この後、用事が・・・」
「ふみゅん・・・」
「・・・あ、行ける行ける、用事なくなったんだっけ・・・」
「じゃぁ、行きましょう!!」
「お、おう」
百面相の様に表情を変えたりりなの前で、こわばった表情のラドルス。
「まぁ、こんなオチだってのは分かってましたけどね・・・」
その横でシルフィーネが1人呟くのであった。


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