フォースになりたい!?

(オリジナル)


「何?ジャバの奴がフォース修行を始めたって?」
黒コート愛好会の本部、平日の午後を局長室でブルースを聴きながら、のんびりと紅茶を飲んですごしていたレニオスは、副長ゼロの言葉にカップを持ち上げようとしたその手を止めた。その目の前には副長のゼロと一番隊副隊長が立っている。
「修行っていうか・・・今は基礎講習を受けているってのが正解」
「ふむ。まぁ、悪いことではないな。本格的にフォース職をやらないにしても、その特性を知る事でミッション中にそれに合わせた的確な動きができるかもしれないしな。」
カップを持ち上げ紅茶を一口飲むレニオス。
「まぁ・・・それがなくても、愛好会メンバーの戦闘訓練に対して基本的に制限は設けるつもりはない。ジャバの講習中は副隊長、君に隊の運用は任せる。さがっていいぞ」
「はっ」
副隊長は敬礼し、部屋を出て行く。ドアが閉まった後、ゼロが口を開く。
「レニしゃ、ジャバはフリフリの服で魔法少女もどきになってるそうだ」
「ほほぉ〜、それは面白いな」
『ハハハハハ』
その声をドアの外で副隊長が聞いて青ざめていた。
「隊長が・・・フリフリ・・・」
ふら付きながら局長室の前を去っていく副隊長、彼にはその後のレニオスの声は聞こえなかった。
「面白い冗談だ」

 ガーディアンズコロニーのカフェのオープン席でお茶をしていたラドルスとりりなの前に、アルトが座る。
「どした?にやけて・・・なんか面白いネタでも仕入れたか?」
ブラックのコーヒーを飲みながらラドルス。その横でりりなはホットミルクの入ったカップを両手で包むように持ち、それを傾けている。
「いやね・・・黒コート愛好会のジャバウォックがさ・・・」
「ついに本部職員へのセクハラで訴えられたか?」
「ジャバたん・・・自業自得ですね・・・」
勝手に話を進めて瞑目する二人に、アルトは慌てて言葉を続ける。
「いやいや・・・あいつがフリフリピンクスカートにファンシーな杖持ってフォースやってるんだってさ」
『ぶっ』
二人は何も飲んでいない時であったことを感謝した。

「・・・えーっと、確認しよう・・・」
いつの間にか同じネタを仕入れてきたガーディアンが何人か集まってしまているカフェでラドルスが仕切る形で話を始める。
「『あの』ジャバウォックが、ピンク服着て、しかもフリフリつきで、マジカルっぽい杖振り回して、フォースやってるって?」
ラドルスが一同の証言をメモし、重なっている証言を纏めたものを読み上げる。そして、それに頷く一同。
「きっと、こんなですよ・・・『フカフカモコモコプリンプリン』」
りりなが杖を片手にその場で呪文を唱えながら、くるくる周る。
「りりなちゃんなら可愛いけど、『あれ』がこれをやってると・・・」
「『規制ギリギリ表現でへ〜んしんっ』・・・ってか」
りりなのくるくるを見ながら、レインとアルトとが言葉を続け、アルトの言葉に一同が何かを想像し、大爆笑する。何事かとその集団を見る通行人達、なんとか笑いが納まった所を見計らってラドルスが呟く。
「新番組『まじかるジャバ☆るん』お楽しみね(はぁと)・・・ってとこか?」
再び大爆笑する一同、それは暫く収まる事はなかった。そんな中、ラドルスはコーヒーを一口飲んで呟く。
「・・・面白そうだな・・・」

 惑星ニューデイズのガーディアンズ支部、その中にある訓練場で、ジャバウォックはフォースの基礎講習を終え、次の講義の為に鼻歌まじりに廊下を進んでいた。と、妙な視線を感じ振り返る。
「・・・気のせいか?」
頭を振りまた廊下を歩いていくジャバウォック。暫くして、天井と床下から微かな声がした。
『あぶないあぶない』

「違う違う、もっと腕を伸ばして、浮気した男の頭を叩くように振り下ろす」
訓練場の庭で、マヤ教官がフォース志願者を相手に杖の使い方講座を行っていた。
「ほら、ジャバさん、腕はもっとこう・・・」
にやけた顔で杖を振るっていたジャバウォックの腕をマヤが取って振り上げさせる。と、ジャバウォックの腕にある感触が・・・
「マ、マヤさぁ〜ん!!俺と、俺とォォォォォォ」
「きゃぁ!!」
弾けた様に両手を挙げてマヤに向かって駆け寄ろうとしたジャバウォックであったが・・・
「グラビティィィィィィィ、ブレイク!!」
マヤとジャバウォックの間に割って入った青い影が、ジャバウォックにソードを叩き込む。
「ち、ちち、ふともも、しりぃぃぃぃぃ〜」
と、吹っ飛んだジャバウォックの落下地点で、黒い影がスピニングブレイクを全段叩き込み、再びジャバウォックは吹き飛ばされる。
「いたたたた・・・な・・・何が・・・」
と、転がり、視界がぼやけたジャバウォックの目に床に置いてある10個程の何かが写る。と、それが何かを瞬間的に察知したジャバウォックは悲鳴をあげ・・・ることができなかった。
周囲がEXフリーズトラップの冷気に包まれ、氷の塊と化したジャバウォックを囲むように3つの影が立っていた。
「え〜っと、あなた方は?」
クロスボウを片手に恐る恐る尋ねたマヤにその影は、
『あ、通りすがりのラッピーですので気にしないでくださいピヨッ』
青と黒2羽、計3羽のラッピーは片手(?)をシュタッっとあげてそのまま走り去っていったのであった。
「通りすがり????」
氷塊の傍らで、マヤと訓練生は呆然とするしかなかった。

 数日後・・・黒コート愛好会本部。
「局長・・・」
ボロボロになったジャバウォックが局長室に入ってくる。
「おや、フォースの基礎講習は終わったのか?」
「終わりましたけどね・・・」
と、ふらつきながらもソファに座るジャバウォック。と、懐から一枚の紙を取り出す。
「この張り紙、局長の差し金でしょ?オウトク支部中に張られていて酷い目に会いましたよ・・・」
「なんのことだ」
とぼけるレニオスに、ジャバウォックが差し出した紙には、ピンクでフリル付の服を着たジャバウォックの絵が描いてあり、『マヤ教官の乳は俺のモノ、文句あるやつはかかってこい!!』と大きく書いてる。それを暫し見つめたレニオスだが・・・。
「・・・ふむん。格好はともかく、似ているじゃないか」
「最初の感想、それですか!!喧嘩売られまくりで洒落にならんかったんですよ!!」
立ち上がり、指差しで突っ込みを入れるジャバウォック。
「ふ〜ん」
「『ふ〜ん』って・・・」
「昔から言うだろう・・・『まぁ、ジャバだから、いっか』と」
「うわぁ」
それ以上何も言えなくなったジャバウォックであった。

 ガーディアンズ・コロニーのカフェにて・・・
「ま、ジャバだから、いっか」
「ラド様、もうあんな絵は描きたくないです・・・まだ気分が・・・」
渋い顔でホットミルクを飲むりりなにラドルスはその頭を撫でながら
「ごめんごめん、でも似てるって評判だったよ。まぁ、アイス買ってあげるからさ」
「ううう。それで我慢しますです」
後日、大量のアイスの箱に閉口するラドルスであった。


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