ガーディアンズ・トーナメント

(オリジナル)


 ガーディアンズ・コロニー内の一角にある多目的競技場、ある日そこでガーディアンが中心となったトーナメントが行われていた。
「おう、こんな所にいたんか」
競技場の外、出店が立ち並ぶ道の脇にあるベンチに座っているラドルスとりりなを見つけたアルトが片手を上げてラドルスの隣に座る。ラドルスとりりなは出店で買ってきた料理を膝の上に広げてちょっとした昼食を取っている。アルトも買ってきた鶏肉を齧りつつ、談笑していると、
「おやおや、剣士殿、こんな所にいるとは気付きませんでした」
「さっきまでベイさんと中を探してたんだけど、やっと見つけたよ」
ジャバウォックとオクリオル・ベイが並んでやってきた。
「ところで、さっき参加者の一覧見てきたんだけど、剣士は出ないのか?」
ジャバウォックの何気ない問にアルトとりりな、そしてベイが苦笑する。ラドルスはムスッっとしたまま、ハッシュドポテトを齧っている。
「・・・なんか、まずいこと言ったのかな、俺」
「いいえ〜、ラド様は前回出た際にですね・・・」
「一回戦で瞬殺されたんだよ」
りりなに続いてアルトが言葉を繋ぎ、最後にクククと笑う。ラドルスは額に皺を三本つくりながらコーヒーを飲んでいる。
「・・・って、この剣士を瞬殺できるって何者?」
ジャバウォックの見立てでも、ラドルスの腕は中の上といったところではあるが、そうそう瞬殺されるレベルではないはずである。
「前回のハンター部門優勝者でしてね、女性の片手剣使いだったんですが、決勝戦ほぼ瞬殺だったんですよ。今は・・・」
「先日迄エンドラム機関に出向していたらしい、あっちでも『魔女』と呼ばれてたらしいよ」
オクリオルの言葉に、ラドルスはそっぽを向きながら呟く。
「まぁ、それが理由って訳でもないけど、疲れるから今回は客席からりぃと観戦モードって訳だ」
「ふふふ、ということは俺の優勝のチャンスが・・・」
ジャバウォックの言葉に、他のメンバーが生暖かい視線を送る。それに気付き怪訝な顔をするジャバウォックにりりなが一枚の紙を見せる。
「トーナメント表?ああ・・・そういえば俺の隣が決まる前に出てきたんだっけ・・・って!!」
ジャバウォックは紙を持ったまま石になる。
「優勝のチャンス・・・あればいいなぁ〜」
ラドルスがさっきの仕返しとばかりにクククと笑う。ジャバウォックの名前の横には「レニオス」と書かれていた。

「洒落で出るだけ出て、一回戦でサクっと負けて『やっぱ俺はそんな強くないな』というのがやりたかったんだが・・・お前が相手となれば話は別なんだな、これが」
試合場の中央、ジャバウォックの前には見知った上官が立っている。試合場は15m程の円形で、ハンター部門では相手に降参するか、場外か気絶で10カウント取られる、もしくはガーディアンスーツに仕込まれているセンサーによって測定される打撃ポイントが一定値に達した時点で負けとなる。
「え〜っと・・・降参してもいいっすかね?」
おずおずとジャバウォックが尋ねるが、レニオスがフッっと肩をすくめる。
「敵前逃亡は高高度バンジー・・・言わなかったか?」
「冗談じゃなかったんすか・・・あれ」
「俺は年中無休でまじめだぜ、超をつけなかったのが局長の優しさって奴だな」
この大嘘付・・・と、心の中でジャバウォックが突っ込みを入れたと同時に、開始の合図がかかる。南無三!!と、覚悟を決めて剣を構えたジャバウォックの背後に既にレニオスが周っている。
「早い!!」
「違うな、お前が遅いんだ・・・」
スピニングストライクの蹴りを背中にまともにくらい、吹っ飛び&転がりで場外に落ちるジャバウォックであった。
「ま、運も実力のうちってね・・・」
「ですね」
特盛りトリプルバニラアイスを食べつつ、呟くラドルスとりりなであった。
ちなみに、レニオスは二回戦で試合開始同時に降参し、
「やっぱ俺はそんな強くないな」
と周囲に呟いていたという・・・。

「・・・なんで、お前がハンター部門にいるんだ?」
「一応、今ハンター系だからですよ、ご主人」
専用ナックルを構えるか迷っているアルトの前に立っているのはレインである。
「まぁ、試合は試合・・・手加減はしないぜ!!」
「はいはい・・・」
横を見ながら答えるレインの耳に開始の合図が聞こえる。
「いっくぜぇぇぇぇぇぇ、いきなり必殺技なアルトォォォォォ」
拳を振り上げつつ突撃するアルトに、レインはどこからとも無く輪にしたロープを取り出し、笑顔のままそれを左右に引きビシッと鳴らす。
「ひぃぃぃぃぃ」
その音でなぜか、その場でうずくまり頭を抱えるアルト。そこへ妙に手馴れた手つきで無抵抗なアルトをぐるぐる巻きにし、試合場の外まで引きずって行き、最後は場外に蹴落とす。
「・・・条件反射って怖いねぇ〜」
「ですねぇ〜」
超特大たい焼きを食べつつ、呟くラドルスとりりなであった。
なお、レインは2回戦で当たったヒューガ・ライトが試合中にも関わらずレインをお茶に誘い始め、そこへ『なぜか』乱入してきたアルトがヒューガをどつき倒した為、反則負けとなっている。

「おや、総取り殿はガンナー部門にいらしたのですか・・・」
「うん、サイコロで決めた」
ガンナー部門の準々決勝、手堅く勝ち進んでいたオクリオル・ベイの相手はのほほんと構えるゼロであった。
「ふむ、いざとなれば近距離戦に持ち込むという訳ですか・・・」
オクリオル・ベイが光波砲を構えるのと同時に試合開始の合図がかかる。と、オクリオル・ベイの足元にトラップがばら撒かれる。
「やはり、そうきましたか!!」
光波砲を数発撃ってその場を離れるオクリオル・ベイ。しかし、ゼロはそんなオクリオル・ベイの横に回りこみ、足払いをかける。
「しまった!!」
仰向けに倒れるオクリオル・ベイの胸に片足を乗せ、弓で一番ポイントの高い打撃ポイントに狙いを定めたゼロであったが・・・
「これは、白銀の悪魔との勝負にとっておきたかったんですがね・・・」
突然、オクリオル・ベイの胸が左右に開く!!
「なに!?」
開かれた胸の暗闇の中、目を光らせた何かが蠢いている。『それ』が何かと確認しようとしたゼロへ向かって、『それ』が一気に飛び出してきた。
「ぐはぁぁぁぁ!!」
顎にカウンターを喰らい、のけぞりながらも大量の『それ』の体当たりを受けて、一気に打撃ポイントが赤ラインを超えるゼロ。
「ふっ、油断大敵ですな」
立ち上がり、気絶したゼロにそう呟いたオクリオル・ベイに・・・
「ゼロの気絶によりオクリオル・ベイの勝利!!しかし、同時に反則負けとし、この試合は勝者なしとします!!」
「なんですと〜!!なんで反則なんですか!!」
審判団に向かって抗議するオクリオル・ベイであったが・・・
「原生生物を攻撃に使っていいとは規約にないんじゃぁぁぁぁぁ!!」
怒鳴る審判団を始めとして、観客席の前の方にいたガーディアンもオクリオル・ベイの体内に格納され、今は周囲を攻撃しているラッピーポレックの対処に追われていた。
「ま、ネタとしては面白いよね」
「ですね〜」
特盛り焼きそばを二人で取り分けつつ、呟くラドルスとりりなであった。

「まさか・・・決勝があなたとはね・・・よく寝落ちしなかったものだわ」
ガンナー部門の決勝戦、ルミナスの前にいるのはセイランであった。
「寝る前に、一撃必殺!!」
グレネードを掲げて胸を張るセイラン。
「あ、なるほど・・・ボンマ・ドゥランガね」
自分への反射ダメージによる打撃ポイント超過さえ気をつければ、確かに一撃必殺である。因みに、
「自爆覚悟があるのかないのか、ドゥランガをバカスカ撃ってくるんだもの、やってられませんよ!!」
と対戦したガンナーの一人が半泣きでインタビューで語っている。
そして、決勝戦開始の合図がかかる。
「そんじゃ、こっちも一撃必殺!!」
ルミナスが手を天にかざすと、SUVユニットが降りてくる。
「ほへっ!!」
「ゲージはずっと溜めてたの。はい、これでおっしまい(はぁと)」
シュトルムアタッカーのミサイル(訓練弾)に揉みくちゃにされ、吹き飛ぶセイラン。しかし、勝者宣言後に審判団がその無事を確認しようとすと、彼女は寝息をたてていた。
「『あの』ルミルミに勝てる訳ないよねぇ〜」
「ですね〜」
一羽丸焼きラッピーを取り分けつつ、呟くラドルスとりりなであった。

「ハンター部門優勝はヒューガ・ライトさんか・・・ま、順当なとこですかね」
呟くのは『初戦敗退負獣ジャバ』と書かれたはちまきをしめ、同じ文言のたすきをかけたジャバウォックである。
「フォース部門優勝はてんて〜だったのか・・・」
と言ったは同じ黒コートなのに、普通の格好のゼロである。
「・・・てんて〜じゃないしぃ〜、今回はりりなちゃんとマヤさんが出て無かったからね。でも、ルミ以外誰も観戦に来なかったのは酷くない?」
試合終了後、お好み焼き店で二人の優勝祝いをやっている一同、
「あんな、テクニック乱打で特殊フィールド張られている中にいけるかっての」
アルトがお好み焼きを半分に切りつつ呟く。フォース部門は身の安全からか、直接見学者は少なく、大半がモニター観戦をしている。
「まぁ、今日はめでたい日なんだじゃんじゃん食べよう!!」
「ですね〜」
『お前等、観戦しながらずっと食べてるだろ〜!!』
3人前のお好み焼きを一つに纏めつつ、呟くラドルスとりりなに一同の突込みが入るのであった。



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