遺跡調査隊護衛任務

(パルム:「遺跡の奥で眠るモノ」より)


ラフォン平原の一角、森が開けた平原に青髪の青年が座っていた。少し離れた場所には数人の男達が機材の調整を行っている。と、その男達の方から小柄なビーストの娘―ガーディアン機動警護部のりりな―がテテテと青髪の青年の方へ走ってくる。
「ラド様〜、準備ができたようです」
「サンクス、りぃ」
青年−ガーディアンズ機動警護部のラドルス−は立ち上がり、りりなの後について歩いていった。

数日前・・・
「今更、ラフォン平原のレリクスを調査?」
ガーディアンズ本部のカウンターでミッションの提示を受けて疑問の声を上げるラドルス。
ラドルスの懸念はもっともな話で、その対象となっているレリクスはSEED襲来直後から調査が行われ、既に終了しているはずなのである。
「それがですね。破壊したはずのスタティリアが新たに数体稼動しているのが確認されたそうで」
「・・・そんで、学者さん達の好奇心が刺激されちゃった訳か」
「そんな所です」
ラドルスの苦笑に笑顔で頷くミーナ。
「ま、スタティリアの相手もたまにはいいかな・・・このミッション受けるよ。詳細を教えてくれ」
かくして、ラドルスとりりなはラフォン平原のレリクスへと向かうことになったのである。

レリクスの内部は調査が完了しているということではあったのだが・・・
「なんかいますね・・・」
「いるねぇ・・・」
二人のガーディアンが得物を構えた事で、慌てて下がる学者さんズ。それを横目で見て苦笑するラドルス。まぁ、後ろにぴったり張り付かれるよりはマシである。前を見ると、ゴルモロがこちらに跳ねてきている。それをりりながノス・ディーガを放ち、その取りこぼし分をラドルスがハンドガンで狙い撃ちしていく。ほどなくして、ゴルモロの影は見えなくなった。
「もう、いいかね?」
柱の影から顔だけ出して、尋ねてくる学者さん達に手招きしてラドルスは先進む。その後ろを一列になってついていく学者達。その最後尾を歩きながら、ニューデイズにいるカルガモとかいう鳥の様だなと、一人クスクスと笑っているりりな。
「りぃ、何が可笑しい?」
青毛の親鳥が振り向いて尋ねるが、紫毛のヒナは「なんでもないです〜」と惚ける。
そんなやりとりをしつつも、途中で何回か原生生物と遭遇する。
「・・・原生生物の住処にされちゃってるな」
それを剣で倒しながら誰ともなしに呟くラドルス。調査中は流石に無理だが、その後は別に敷居がある訳でもないので、周辺の原生生物が住処としていても不思議はない。
更に、途中で時折学者さんズがラドルスとりりなにはただの模様にしか見えない壁等に興味を示す為、思ったより進行は遅い。
「何体いるか知らないけど、サクっとスタティリアを倒して戻るつもりだったんだけどなぁ・・・」
と、柔軟体操をしながら言ったラドルスに「とんでもない」と学者の一人がやってきた。
「我々が調査している間、破壊しないで、そのまましのいでいて欲しいんですよ。」
「・・・は?」

「・・・ミーナめ、帰ったら覚えていろ・・・」
周辺の安全を確認した上で、休憩をしているラドルスとりりな。その中で依頼票を再度見ながらラドルスは眉間に皺を寄せている。依頼票には「調査の障害になるスタティリアへの対処を願う」と書いてあった。これを勝手に『戦闘による破壊』と解釈したのはラドルスであるが・・・
「まさか、稼動中のデータ収集の間、ひきつけていろとは・・・学者、恐るべし・・・だな」
「で、どうするんです?」
「とりあえず、ミーナにはアルトでもけしかけて・・・」
「そういうことじゃないです!!」
横にちょこんと座ったりりなの問に、危険発言をするラドルス。
「冗談だって」
「いえ、目がマジでした・・・犯罪教唆はいけません」
「犯罪か?」
「あの人をけしかけて、ミーナさんが無事で済むと思いますか?」
「ま、その直前でレイン殿の鉄拳制裁が入って終了〜だろうよ」
「・・・なるほろ・・・」
と言っている間にも、学者さん達は目の前で作業をしている。現在ラドルス達がいる場所は広めの通路な為、ここにスタティリアを誘い込んでデータを収集しようと、調査器具などの設置を行っているのである。
「ラドルス君、準備ができた。よろしく頼む」
学者のリーダーがそう言って手を振っている。「気楽に言ってくれるよ・・・」という言葉を口の中だけに留めて立ち上がるラドルス。
「援護頼むよ、りぃ」
「まかせてください!!」
りりなの声援を背に通路の奥の扉を開けるラドルス。その奥でスタティリアが確認されたとの事であったが・・・

バタン!!

りりなには一瞬の硬直の後に扉を閉めてこっちに戻ってくるラドルスが見えた。彼は学者のリーダーの前までくると、こう言った。
「調査するのは一体でいいんだよな!!」
「まぁ、データさえ取れれば構いませんが・・・ん?一体???」
ラドルスの形相にタジタジとなりながらも、応える学者。と、りりなも扉を開けてその奥を見てみると。
うろつきまわっている5体のスヴァルタスが見えたのであった。

「ラド様がんばれ〜」
ダム・バータでスヴァルタスの一体を氷漬けにしながら声援を送るりりなの視線の先には、残る4体を相手に剣を振り回すラドルスの姿があった。りりなもあまり見ることの無い必死の表情をしている辺り、一見かなり苦戦しているようであるが・・・。
「これで残り1!!」
数を数えている辺りに若干の余裕があるみたいですね。とりりなは判断して調査用の足止めに専念する。
果たしてスヴァルタスはりりな特製の氷漬け以外は排除されたのであった。

スヴァルタスを調査用の部屋に誘導した上で再度りりながアイス・スヴァルタスを作っている間、学者はリストを見ながらラドルスを手招きして言った。
「では、まず最初は・・・移動目標に対する追跡能力・・・」
「移動目標って・・・」
「あなたです」
「・・・」

「これ、結構楽しいです〜」
肩で息をしながらしゃがみこんでいるラドルスの横でりりなが先ほどまでラドルスを追いかけ回していたスヴァルタスを氷漬けにしている。
「それはよかったね・・・」
「え〜っと、ラドルスさん。次は剣の振り下ろしの速度を・・・」
「その振り下ろした剣は受け止めていいのか?」
「いいえ、それでは速度が変わりますし、床の破砕痕も調べたいので全部避けて下さい」
「・・・」

「な〜んか、癖になりそうですね、これ」
肩で息をしながらしゃがみこんでいるラドルスの横でりりなが先ほどまでラドルスに剣を叩き込んでいたスヴァルタスを氷漬けにしている。
「それは・・・よかったね・・・」
「え〜っと、ラドルスさん・・・」
「ストップ・・・」
「なんでしょう?」
片手で学者の言葉を制止してラドルスは顔を上げて言った。
「残りの項目数を知りたいんだが・・・」
「ああ、後12項目ですよ・・・」
「・・・終わったら、あれは思いっきり破壊させてくれ」
「まぁ、データを取り終わったら構いませんよ」
このやりとりがあった数時間後の様子を、「あんな強烈な一撃は初めて見ました」と、後日りりなは周囲の人間に証言することとなる。

数日後、ガーディアンズ本部のカウンター前・・・
「ラドルスさん、ご指名のミッションがあるんですが・・・」
「ご指名?俺を?」
「ええ、ニューデイズのレリクスで・・・」
「断る!!」
そのまま回れ右で宿舎に帰るラドルスであった。


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