あるガーディアンのある普通の一日 Side-L

(パルム:「原生生物鎮圧」より)


「暇にゃぁ〜」
ある日の午後、ガーディアンズ・コロニー内にあるガーディアンの宿舎にて、猫が・・・基、ビーストの娘が一人、床を転がっていた。
「ラド様はシルフィちゃんとニューデイズに行っちゃったし・・・お部屋の片付けも掃除も洗濯も終わっちゃったし・・・」
右へゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・
「暇にゃ〜」
左へゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・
「暇にゃ〜」
右へゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・
「暇にゃ〜」
左へゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・ゴツンッ!!
「痛いにゃ〜」
棚にぶつけた頭をさすりつつ、ふとTVに視線を移すと、グラールモーニングという番組がやっていた。
『ここが、先日謎の生物が目撃されたと噂のラフォン平原です』
アナウンサーがまじめな顔をしてレポートしている画面の右下には、「ラフォン平原に未知の生物!?SEEDの侵食によるものか!?」と出ている。
「にゃじょのしんしぇいぶちゅ〜?」
床にうつ伏せになり、両手を広げたままの格好でビーストの娘、りりなはなんとは無しにTVを見る。どうやらラフォン平原をたまたま通りかかったおっさんが、謎の生物を見たというのだ。逆光の為によく見えなかったとのことだが、そのシルエットは今まで確認されたどの原生生物にも似ていないとのことである。
『で、これが目撃者が描かれた謎の生物のシルエットです』
アナウンサーが掌を上に向けると、そこに影絵のような映像が映される。四本足で真ん中辺りから直角に二本の腕のようなものが出た胴体が伸びている。
「・・・ん〜、丸っこいカマトウズ?もしくは噂に聞くガイノゼロスってやつですかね〜」
前者はニューデイズ、後者はパルムの原生生物だが、ローゼノム方面のラフォン平原での目撃例はない。ニュースは更に、この謎の生物を目撃・捕獲する為に多くの人が訪れていると伝えていた。そして・・・
「うにゃ!?出店まで出てるのですか・・・暇だし、ちょっと行ってみようかな・・・」
みゅ〜っと伸びをしてから、りりなは支度してパルムへと向かったのであった。

ラフォン平原の入り口はさながらお祭りの様な騒ぎになっていた。その中でりりなは両手に持った綿菓子を交互にパクつきながら歩いていた。
「人が多いですねぇ・・・まぁ、ここなら危険も少ないからいいんでしょうけど。ガーディアンの警護が必要かもしれませんね〜」
一応、ガーデイアン的な見方もしているりりなであったが・・・
「でも、私はお休みにゃのにゃ〜」
そういって綿菓子を又一口・・・そこでりりなは閃いた!!
「そうだ!!ついでにグリングリンアイスも買って帰りましょう!!」
食べ終えた綿菓子の串をゴミ箱に放り、りりなはグリングリン牧場への道を歩いていった。

「ここまでは流石に来てる人はいないですね〜」
ラフォン平原を杖を片手に歩きながら呟くりりな。と、りりなの耳に何かの声が聞こえた・・・
「ん?」
声の方へ走っていくりりな、茂みを抜けるとそこには・・・
「ポルティ?」
林の中、ちっとした空間で熊とポルティが対峙していた。ポルティの背後には十数匹のポルティが身を寄せ合って対峙しているポルティを見守っている。
「ピキ〜(今回は前の様に水辺では無いから負けないぞ!!)」
一鳴きして、熊に向かって突撃していくポルティ・・・そして、目前で大きくジャンプし、
「ピキキ〜!!(真・団子相殺拳!!)」
雄たけび(?)を上げながら何か技の様なものをしかけるが・・・

ザリッ!!

熊の右腕であっさり弾き飛ばされる。
「・・・何やってるんでしょう、あのポルティ・・・」
茂みの影でそれをじっと見ているりりな。その目の前で弾き飛ばされたポルティは地面に大の字に倒れている。
「ん〜、ポルティにレスタって効くんでしょうかねぇ・・・」
なんとなく他のポルティと違うものを感じ、杖を構えてレスタをかけようとしようとした時、遠くから地響きが向かってくる。
「・・・コルトバ?」
りりなの横を一匹のコルトバが駆け抜け、倒れているポルティに向かっていく。コルトバはポルティの耳元に顔を近づけ・・・ヨロヨロと立ち上がったポルティがそのコルトバの背に乗る。背に乗った途端なぜか元気になったポルティが片手を天に突き上げると共に、コルトバが前足を上げ、棹立ち状態になる。そしてその影をりりなは見たことがあった。
「・・・あ、あの影はこれだったんですか・・・」
半ば脱力しているりりなの目の前で、コルトバの背に乗ったポルティが顔の前で拳を握る
「ピキ〜(アーノルドよ、今が駆け抜ける時!!)」
「コル〜(応!!)」
そのまま、拳を振りかぶった姿勢のポルティを乗せて、コルトバが熊に向かって走っていく。
「ピキ〜(駆けろアーノルド!!疾風の如く!!)」
「コル〜(吼えろカイル!!戦神の如く!!)」
僅か数メートルの距離が長く感じる程駆け抜け・・・
『ピキ〜&コル〜(これが友情の一撃だぁぁぁぁ!!)』

ザリッ、バシュッ!!

熊の右手がポルティを、左手がコルトバをそれぞれ払いあっさり吹き飛ばす。
「・・・なんでだろう・・・今アルトさんが脳裏を横切った・・・」
と、熊がりりなに気付き、近づいてくる。それを見たポルティが片手を伸ばしながら何か鳴いているが、りりなには聞こえない。
「ん〜っと・・・これで十分かな?」
杖を一振り、ノス・ゾンデの雷球が熊の周囲を幾度か回り
バシュッ!!
雷球が弾けた後には熊が痺れで倒れていた・・・
「・・・さてっと、無駄な時間を使っちゃいました。アイスッ、アイスッ、美味しいアイス〜」
りりなは倒れた熊には目もくれずに、そのまま立ち去っていく。その後ろで、復活したポルティが倒れたままの熊の上で勝利のポーズを取り、周囲のポルティから喝采をあびていた。

・・・その後、目を覚ました熊によって起きた惨劇はまた別の話である。

その夜
「・・・なぁ、りぃよ・・・」
冷凍庫を開けたままの姿勢でラドルスは硬直していた。
「なんですか?」
「冷凍庫がアイスで一杯なんだが・・・」
「ああ、入りきらなかった分はお隣さんとかに御裾分けしましたので安心してください」
「・・・」
「そういえば、今日はどうでした?」
りりなの問に我に返ったラドルスはテーブルについて、コーヒーを一口飲んでから応えた。
「ああ、なぜかポルティを見かけてね・・それがなかなか珍妙な、というか面白い行動をとっていたんだ・・・」
「へ〜、私も面白いポルティを見ました。」
「ほう、まずはそっちから聞こうか?」
「はいです、え〜っとですね・・・」

ガーディアンズ・コロニーは今日も平和であった。


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