遺跡に潜って、草原越えて

(パルム:「紅の巨獣」より)


 惑星パルムの首都、ホルテスシティ、その西部区画にあるパルムカフェ前を通りかかったラドルスとりりなは見知った姿を見つけ、声をかける。
「おや、ベイさんとμさんじゃないか、どうしたん?」
ラドルスの声に、テーブルに座っていた二人のキャストが顔をあげ、暫くラドルスとりりなを見ていたが、同時に頷く。
「なんですか?」
怪訝な顔でその様子を見ながら呟いたりりなにオクリオル・ベイが二人の肩に手を置き、
「はい、残りのメンバーが決定です」
『はいぃ?』
二人は訳も分からずにそういうしかなかった。

「全く、ちゃんと説明してくれればそれでいいのに、いきなりあれだもんなぁ〜」
数時間後、ラそう呟くドルスはりりなと共にオクリオル・ベイ、Typeμの二人に連れられてラフォン・レリクスにいた。二人の話では、ディ・ラガンがラフォン平原まで降りてきているのだが、その降下地点の広場が狭い林道からしか入れず、ディ・ラガンにしてみればいい標的になるとの事なのだが
「このレリクスで広場の反対側に出れるって訳なんですね」
オクリオル・ベイの説明にりりなが続き、オクリオル・ベイは頷く
「まぁ、ついでにここに住み着いた原生生物の浄化もしちゃうって事のようですけどね」
Typeμがそういって説明を結ぶ。
「しっかし、最近はディ・ラガンが平原まで降りてくることが多いなぁ」
ラドルスの言葉に3人は神妙な顔になる。
「これも、SEEDの影響でしょうかね」
「だろうね」
「にうにう」
等と言っていると、下り階段にさしかかる、階下にはゴ・ヴァーラの群れとジャーバが徘徊している。
「嫌な組み合わせだなぁ」
ラドルスはそういって肩をすくめる。
「ラドさんなら、苦戦するって敵でもないでしょう」
そう尋ねるTypeμにオクリオル・ベイが苦笑しつつ、
「ラドさんは昔、あの組み合わせによくフルボッコにされてたんですよ」
「言うなって・・・。まぁ、苦手だろうがなんだろうが、やるしかないのは変わりないけどな」
ソードを構えつつ、階段をゆっくり下りて行くラドルス、そこへ。
「んみゅぅ〜♪」
「クハハハハ」
「狙い撃っち〜」
ラドルスの頭上をフォトン弾が飛んで行き、目の前で小爆発が起こる。
「え〜っと」
階段の真ん中辺りで呆然とするラドルスにかまわず、3人は容赦ない攻撃を続け、あっという間に浄化してしまう。
「えいっ」
振り上げた剣の下げ場所に困り、とりあえずと、倒れたジャーバに剣を一突きしておくラドルス。
「ユ〜ア〜ジャーバスレイヤ〜、とか言っておきます?」
オクリオル・ベイの突っ込みにうなだれたまま首をふるラドルスであった

 レリクスを進んでいく(途中幾度か原生生物との遭遇があったが、ラドルスが剣を振るう前に浄化完了となった)と、太陽のものらしき光が見える。
「出口・・・かな?」
ラドルスが先頭になって、その光の中に入ると、そこにはラフォン平原のどこからしい、林の合間の開けたが空間が広がっていた。
「左手奥になんか林道が見えるけど、あっちかな?」
「今、現在位置を確認中・・・きました。それっぽいですね」
Typeμの言葉に携帯端末を操作していたオクリオル・ベイが答える。ほむほむ、と呟きながらラドルスがレリクスの出口から平原に出て、周囲の確認をする。何もない事を確認し、その手招きに応じて、残りの3人も平原に出る。と・・・
「なんか・・・地面が揺れてない?」
呟き、Typeμが片膝をつき地面に片手をつく。
「そうか?」
「んみゅ?」
「気のせいでは」
Typeμの言葉に3人が首を傾げながら周囲を見渡すと、何かバキバキという音が聞こえてくる。
「・・・なんだ?ディ・ラガンか?」
剣を構えて周囲を警戒するラドルスがふと林の一点を見ると、その木々をなぎ倒して何かが広場に躍り出た。
「・・・え〜っと、コルトバ?」
その巨体に一瞬呆然とするラドルス。
「ゴル・ドルバです。コルトバの大型種ですよ、ラド様」
りりながそういいながらラドルスの脇に立ち杖を振るう。地面を数条の土煙が走り、ゴル・ドルバに直撃する。が、ゴル・ドルバは大きく前脚を上げると、そのままラドルス達の方へ走ってきた。
『うわぁぁぁぁぁぁぁ』
たまらず、その場から左右に散る4人。ゴル・ドルバはそのままラドルス達がいた場所に突撃し、レリクスの柱に激突してその動きを止める。
「隙あり!!」
そのまま後ろからラドルスが斬りつけるが、あまり大きなダメージを与えたようには見えない。そして、その横腹にフォトン弾が2つ着弾するが、それも同じ様な結果に見えた。
「ふむ、噂には聞いてましたが、銃は今ひとつ効果がないようですな」
「だね」
オクリオル・ベイとTypeμが銃を構えたまま呟き、顔を見合わせてから、ラドルスの方へ向く。そして・・・
『って訳で、がんばれラドさん!!』
ひらひらと手をふるガンナー二人。
「どの辺が『って訳』なんだよ!!」
抗議しつつも、ラドルスを敵と見なして頭突きをしてくるゴル・ドルバを避けつつ、その首筋に剣を叩きつけていくラドルス。その少し離れた場所からノス・デイーガを放つりりな。と、再びゴル・ドルバが大きく前脚を上げると、それを力強く地面に叩きつける。土煙と共に衝撃波が近くで剣をかかげていたラドルスを襲い、ラドルスの体の自由を奪う。
「ぐっ」
すぐさま攻撃に入ろうとしたラドルスであったが、衝撃波によるものなのか、体の痺れを感じ、剣が振れない。その異変に気付いたりりなはナノトランサーから別の杖を出し、それを振るう。りりなを中心として光の輪が周囲に広がり、それがラドルスに触れる。レジェネの効果で痺れが取れたラドルスは手から落ちそうになっていた剣を握りなおして、ゴル・ドルバに横薙ぎの一撃を叩きつける。
「サンキュ〜、りぃ」
「んみゅぅ〜♪」
そこへ、オクリオル・ベイが赤いフォトン弾を撃ち込む。たちまち炎に包まれるゴル・ドルバ。
「そういえば、こんなモノがあったんですよねぇ〜」
「すっかり忘れてたよね〜」
と、そのまま火フォトンのライフル弾を撃ちこんでいくガンナーズ。炎による苦痛からか無茶苦茶に広場を走りまわるゴル・ドルバ。そして、自分の間合いに入ってきた時を見計らって的確に剣を叩き込むラドルスと、テクニックを叩き込んでいくりりな。そんな攻撃を暫く繰り返していくと、ゴル・ドルバは広場の壁となっている木々をなぎ倒したまま動かなくなったのである。

「で、あんだけ近くで騒いだので心配したんですけど・・・あれですか」
木々の陰からゴーグルで見たディ・ラガンに苦笑するオクリオル・ベイ。そこには丸くなって昼寝をしているディ・ラガンの巨体があった。
「あ〜やっていると、猫みたいですね」
りりなの言葉に「でっかすぎるけどな」と応えて苦笑するラドルス。
「で、どうします?」
Typeμの言葉に、ラドルスは腕を組み暫し考えて・・・
「この組み合わせじゃ、俺が前衛で3人に後方支援しかないような気がするが・・・」
「でしょうな」
ラドルスの言葉にオクリオル・ベイが笑みを交えて続き、残る二人も異口同音に「ですね」と続いた。
「では、そういうことで・・・」
デイ・ラガン用にと持ってきた氷フォトンのソードを出し、軽く振って突撃の姿勢を取るラドルス。ガンナーズも氷フォトン弾を装填し、構える。りりながそんなパーティーメンバーにありったけの補助テクニックをかけて、準備OKと頷く。
「そんじゃ、いきますかね!!」
剣を横に構えながら、林からディ・ラガンのいる広場へ駆け出すラドルス。後方からライフル弾が2条、ラドルスの両頬をかすめてディ・ラガンの体に当たり、その巨体が異変に気付いてみじろぎする。
「一気に片をつける!!」
ラドルスは叫んで剣を叩き込んだ。

「・・・で、斬れたのはそれだけだったって訳だ」
コロニーのカフェでアルトがコーヒーを一口飲んで呟いた。その前ではラドルスがテーブルに顎を乗せてふてくされている。そして、その横でりりなはホットミルクを飲んでいる。
「しゃーないだろう。一太刀入れたとこで飛んじゃったんだ」
「結局その後、降りて来なかったので、私とベイさんとμさんで撃ち落したんですよ」
りりなの説明に、アルトが高笑いする。
「アハハハハ、さすがのラドも空飛んでる敵にはなす術なしか」
「お前さんの拳だってそうだろうが・・・」
ラドの言葉にアルトはちっちっちっと、舌を鳴らしながら人差し指を左右に振る。
「俺にはスタイリッシュな双銃テクがあるから、問題無しって訳だ」
「あ〜さいですか」
ますますふてくされるラドルス。それを見てりりながふと思いついて言葉を続ける。
「でも、ラド様も銃持ってますよね?」
「ん?趣味じゃないんだよ、おいらは剣振ってナンボなの」
その言葉にアルトとりりなは肩をすくめて呟いた。
『それはラド/ラド様の我儘って奴だ/です〜』


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