プロローグ


水は嫌いではなかったし、御風呂は好きなほうだった。

先日まで一緒にいたニューマンの娘は、温泉とは「おっきな御風呂だよ」と言っていた。

ただ、好き嫌いと、泳げる泳げないは別の話だった。

 主人であるローグスの首領の一団が旅行先のここニューデイズでオンマゴウグに襲われ、その隙をついて逃 げ出し、ケゴ温泉にたどり着いたけれど、この御風呂は大きすぎた。

疲れも忘れ、畔に座って湯気を楽しんでいたら、見事に足を滑らした。

一生懸命手足を動かすが、水面に顔を出せない。

このまま、溺れてしまうのかなぁ・・・と思ったとき、背後から抱きかかえられた。そして、そのまま岸に抱 き上げられる。

 振り向いたそのビーストの娘の前には、青い髪の男が立っていた・・・



 ニューデイズで原生生物の討伐をしていたガーディアンに、オンマゴウグが温泉への道中に出たと情報が入 った。なんとか追跡・退治したが、襲われたローグスと思われる一団は助けられなかった。

 照合の結果、そのローグスが人体実験目的の人身売買も手がけていると知り、更に後味が悪くなった。

善人とは言えない人達とはいえ、また助けられなかった・・・その思いがそのガーディアンの心を暗くさせて いた

 同行させていたPMの勧めで気分転換の温泉へと来て見たところ、何かが温泉の中で溺れていた。

 自分の胸の高さ程度の深さの温泉である。小動物か何かかと思って、抱きかかえてみた所、小柄なビースト の娘だった。紫の髪をツインテールにしたその娘の耳にはローグスの所有者識別札がついていた。

 怯えの表情で自分を見ているビースト娘の頭にタオルをかぶせ、その青髪のガーデイアンは言った。

「シルフィ、この娘の手当てと服を乾かしてやってくれ」



数ヵ月後、ガーディアンに入り、基礎研修を終えた娘の前に青い髪の男が現れ言った。

「今日から君のパートナーになるラドルスだ、よろしく」

「えーっと、えっと・・・私は・・・」

差し出された右手を握りながら、娘は自分の名前を言った・・・


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