第3章 コードネーム「ライア」

(ストーリーモード:「HIVE掃討作戦」より)


「ガーディアンズライセンスID認証・・・OKっと」
ガーデイアンズコロニーにある多層構造型の街ホルテスシティ、その最上階にあるガーディアンズ本部の一室で青髪の青年が一人で情報端末を操作していた。
「イルミナス・・・っと」
ガーディアンズのミッション情報のデーターベースを検索するが、該当するデータはなかった。しかし、青髪の青年、機動警護部所属のガーディアン、ラドルス自身が先日イルミナスのマガシと名乗る劣化クローンキャストと一戦を交え、それを報告している。また、直接は聞いていないが、その付近で同じ機動警護部のライアもイルミナスの者と遭遇していると推測される以上、0ではないはずなのである。
「つまり、他にも俺と同じ目にあっているガーディアンがいるかもしれないし、いないかもしれない・・・まさか、聞き込みする訳にもいかないしな・・・」
「その通りです。またこれ以上の詮索は職務規定に触れると警告しておきます」
突然端末から聞きなれた声がする。それは情報部のルゥのものである。
「ま、俺程度の腕じゃバレて当然だな・・・。了解、おとなしくしているよ」
「今までのあなたの行動パターンから、それが嘘である確率は98.9998%です」
そっぽを向きつつ言った嘘が即バレし、ラドルスは少し横によろめいた。
「ま、迷惑はかけないから、安心してくれ」
「情報を元に計算する必要もありません、それは100%嘘です」
今度は椅子からずり落ちた・・・
「それは兎も角、明日りりなさんを同行された上で本部に出頭してください、新しい任務があります」
「ほ〜い、了解したよ〜」
机から手だけだして振りながら「これは見えているのかな?」と思うラドルスであった。

翌日、ラドルスと明るい紫がかった髪をツインテールにしている小柄なビーストの娘−ラドルスの相方のりりな−は本部の受付にいた。
「ガーディアンズライセンスを照合しました。・・・って、ラドルスさんもですか・・・」
ラドルスのライセンス証の認証を行った受付のミーナの言葉が後半明らかに沈んだ。
「ラドルスさん『も』?」
「今回の任務は極秘任務なのですが、この機密保持契約の書類にサインをお願いしたいんです」
「ふむん」
「サインだけで信用が得られると理解して下さい」
「・・・なんかありました?」
ミーナの様子に怪訝な顔をしたラドルスに代わってりりなが直球な質問をする。
「それはね、さっき同じ書類にサインをする、しないで揉め事があったんですよ」
ミーナがどう答えようか迷っているうちに、横合いから声がかかる。見ると、ニューマンとキャストの女性が立っている。今声をかけたのはキャストの方である。
「てんて〜とルミルミか・・・」
「てんて〜じゃないから!!」
ラドルスの呟きにニューマンの女性が即突っ込みを入れる。
「ラドさん、リファで遊ぶのは後にして、サインしちゃってもらえるかな?もち、りぃもね。先にミーティングルームで待ってるね・・・」
キャストの娘がニューマンの女性のと合わせて2枚の書類をミーナに提出し、二人揃って奥に去って行った。
「ああ」
「はいです〜」
そう言ってミーナから受け取った書類にサインする二人であった。

「今回の任務なのですが、同盟との共同作戦に参加して頂きます」
ミカリス・ゲイドと名乗った黒服の女性のキャストの言葉に、ラドルス、りりな、ニューマンの女性―リーファ―と、キャストの女性―ルミナス―の表情が一変して固いものになる。
「協同作戦か・・・自分は封印装置以来、ガーディアンズとしてはHIVE破壊の一件以来だな」
他の3人が一向に口を開かないので、自分の役割と判断したラドルスが口を開く。
「はい、今回も前回のモノと変わりません」
ミカリスがそう言ってスクリーンに映像を出す。そこには数か月前に消滅したはずのモノが映っていた。今度はラドルスも声が出せない・・・
「どういうこと?これはHIVEじゃない。もう、存在しないはずのモノがどうして」
リーファの言葉にミカリスは頷く。
「確かに、あのHIVEは破壊しました。しかし、HIVEというのは、侵食された衛星の総称でした・・・」
「それって、衛星の数・・・いくつか忘れたけど・・・最悪、そんだけのHIVEが存在するってこと?」
ルミナスの言葉にミカリスは再び頷き、映像を切り替える。今度はHIVEの拡大映像が映っている。そして、その映像の横にはそのHIVEの名称らしきものが書いてあった。
「ライア?なんかのコードネームか?」
内面的には兎も角、表面上は平静を取り戻したラドルスがその名称に気づきミカリスに尋ねる。が、なんとなく察しはついていた。
「まぁ、HIVE何号と番号もついているのですが、それぞれに同盟軍がコードネームをつけているのです」
「つまり、今回行くのはライアって名前のHIVEと言う訳か・・・一つ聞きたい」
「なんでしょう?」
「最初のHIVEの名前は何て言ったんだ?」
「・・・ハルです」
「OK、コードネームに関してはなんとなく分かったよ」
グラールチャンネル5のメインキャスターであるハルは同盟軍には受けが良くないと聞いたことがある。「あの」ライアに関しても同様の噂を聞いたし、士気高揚も兼ねてその辺の名前を付けているのだろう。・・・とラドルスが考えを巡らせている最中もミカリスの説明は内部のものになっていた。同盟軍の部隊が中央制御室を目指し、それをガーディアンズを中心とした支援部隊がSEEDを掃討しつつ、サポートするといったものだ。
 最初のHIVE−ハル−は戦艦からの一斉射撃で破壊したが、これはA・フォトンを撒き散らし、SEEDを活性化させる。ラドルスに言わせれば、やってしまってから言うなよ。というとこだが、分かった以上は一つ一つ、攻略していくしかないのである。
「・・・以上で説明を終えます。何か質問は?」
ミカリスが一通りの説明を終えて一同を見回し、質問が無いことを確認した上で、再度シャトルのポート番号と時間を告げ、解散となった。

HIVE「ライア」、ガーディアンズコロニーの周囲に点在する発電用衛星・・・だったものである。
「さてっと、俺はHIVEは初めてなんだが・・・」
ラドルスが周囲を見回しながら剣を出す。同一型の衛星の内部には行った事がある彼であるが、内部はすっかり変わっており、有機的な・・・何かの体内に迷い込んだような錯覚にとらわれる。
「ラド様・・・」
と、りりなが袖を引っ張る。「なんだ?」とりりなを見ると、壁を指差している。その先には・・・
「なんか、見覚えのある名前だな・・・」
"アルト参上!!"
と、壁に落書きがしてある。しかも、「アルト」と「参上」の間に小さく「&レイン」と書いてある以上、同姓同名の別人ではないであろう。軽くこめかみを押さえながらも、同時にあるいことに気づく
「成程、最近の大量休暇取得は「これか」・・・」
「どういうこと?」
ルミナスが愛用の銃器の数々を順繰りナノトランサーから出し、チェックしながらラドルスの呟きに反応する。しかし、それに応えたのはルミナスの相方であった。
「つまり、極秘任務に行ってきますとは言えない以上、休暇を取った事にして、こっそりうHIVE掃討任務に就いたってことよ」
「そういうこと。だから、多少は覚悟しとかないといけないな」
武器のチェックと所持品のチェックをしつつラドルスが険しい顔になる。
「なんのですか?」
「知っている顔が大量に倒れているかもしれない・・・ってことだ」
なにげなく、合いの手を入れたりりなだったが、ラドルスの回答に顔がこわばるのであった。
「まぁ、俺の知っている連中は100回位殺しても死にそうにない奴ばかりだから、大丈夫だとは思うけどね」
「私達は除外してるんだよね、ラドさん」
「まっさかぁ〜。筆頭を除外できるかってんだ。さてっと、行こうかね。フォワードは俺とルミルミ、バックスはてんて〜とりぃで・・・」
「はいですぅ〜」
「てんて〜じゃないから!!」
一同は内部へと進んでいった。

「んまぁ〜よく燃える事!!」
リーファのテクでSEEDフォームが炎の壁と化し・・・
「はいはい、順番に撃ってあげるからね〜」
ルミナスがグレネードで残りのSEEDフォームを一掃する。が、一息つく間もなく、空間の一点が黒く淀み、新しいSEEDフォームが沸いてくる。そこをりりながバータで足止めし、ラドルスが横薙ぎで倒していく。しかし、それでも奥からまた新手がやってくるのが見え、ラドルス達は浄化の完了した前ブロックへ下がり、扉をロックする。
「ふぅ〜、ルミルミのスコアはいくつになった?」
「100迄は数えてたけどね・・・もう、そんな事している暇もなかったしね」
「俺なんか、30でやめちゃったよ」
「私は数えてすらいないよ。第一、何匹巻き込んだか分からないし」
「私もてんて〜に同じです〜」
「てんて〜じゃないから!!」
そんなやり取りをしつつも、武器にフォトンを補充し、自らも簡単に水分と栄養の補給をする。会話からは推測できないが、一応熟練ガーディアンのカルテットなのである。
「さて、ラウンド2といきますか」
「んみゅぅ〜」
と、扉のロックを外したラドルスの前に巨大な剣状の何かが向かってきた。それを剣で受け止めてから見ると、果たしてディルナズンが扉の前に立っていたのである。
「ディルナズンが1!!」
叫んでラドルスは一旦その両手を受け流し、横に動いて扉の空間を空ける。ディルナズンはラドルスの方に体を向けると。リーファとりりながディーガとバータを放つ。よろめきつつもディルナズンは最初に見つけた青い人間を探すと、それは武器を変えて自分に向かってきていた。両手を振るうがその人間は頭を下げてそれを交わし、その右手の片手剣を振り上げつつ飛ぶ。デイルナズンの右腕が斬り落とし、今度は落下に合わせて剣を振り下ろす。
頭から胸元までを斬られ、ディルナズンは後ろに倒れた。見ると周辺の小型SEEDフォームは一掃されていた。
「手伝ってくれてもいいと思ったけど・・・」
セイバーをしまいながら、ぼやいたラドルスに
「あの手の大型は「俺におっまかせ〜」って言うと思って」
と返すルミナスであった。

SEEDフォームの掃討を行いつつも先に進む一行、すると、大きな部屋に出た。
「ここで他の通路と合流しているようね。地図によると、この先の区画で受け持ちは終了なんだけど・・・」
とリーファが見回した先に、人の形をしたものがいくつか床に転がっている。駆け寄ってみるとガーディアンスーツを着た女性が倒れている。
「・・・」
リーファにはNDでの研修会で見かけた顔であった。それだけでなく、ラドルス、りりな、ルミナス、それぞれが見知った顔を見つけ、立ちすくんでいた。
「誰かいるのか?」
声がしたのはその時である。しかも、一行の知っている声である。声は広間の角にある小部屋−地図によると元は倉庫であったらしい−への扉から聞こえた。扉を開けるとそこにはラドルスの隣に住んでいる住人の姿があった。
「アルト、無事だったか・・・レインさんも」
怪我をしているものの、意識もしっかりしていそうな二人を見て、ラドルスは内心安堵する。
「奥に何人か生き残りがいる。俺達が一番怪我が軽かったんでな・・・」
「ここで何があった?」
アルトとレインのペアでも防戦に回らなければならない相手とはなんだろうか。嫌な予感がしつつも、ラドルスは聞かざるをえなかった。
「SEEDフォームならへっちゃらなんだが、そこで合流した同盟軍がいきなり撃ってきたんだ」
「なに!?」
「俺だって信じられなかったさ。しかし、事実なんだからしょうがないだろう」
「あいつらは一部はそのまま先に進みました。数が減ったのでなんとかなったんです。こっちはガーディアンズだと言っても『ギギギ』とか言って話にもなりませんでしたし」
アルトの言葉にレインが続く。
「意図的にって訳ではなさそうだな。ここのせいか・・・まぁ、それだけで詮索していてもしょうがない。てんて〜、アルト達を俺達のシャトルまで連れて行ってくれ」
「てんて〜じゃないけど、了解」
「俺も手伝ってやりたいけど、すまないラド」
「怪我人はさっさと退散した」
しっしっと手を振ってから背中を向け片手を上げ、最終区画に向かうラドルス一行であった。

「銃声?」
通路を進むルミナスが呟き、駆け出す。ラドルスには何も聞こえなかったが、キャストのルミナスだから聞こえたのだろうと、一緒に駆け出す。
通路の先は扉が一つあり、その先が最後の部屋のはずである。ロックはかかってないので、扉はラドルス達を感知し、自動的に開く。
剣を持ち部屋に入るラドルスの前に、瓦礫を盾に同盟軍兵の銃撃を凌いでいるガーディアン達の姿があった。
「あれ、ミツさんですね」
りりながその中の一人、ライフルで応戦しているヒューマンの男性を指差す。
一緒に銃で応戦している黒い大型の男性キャストと眼鏡の男性ヒューマンもラドルスには見覚えがあったが、名前を思い出す前に駆け出していた。
「ギギギ」
同盟兵がラドルスに気づき銃を向けるが、ラドルスは自分で彼らを斬るつもりは全く無かった。
「全員射程内に補足、いっけ〜!!」
ルミナスの頭上に転送マーカーが出現し、そこからSUVのシュトルムアタッカーが出現する。ルミナスがその引き金を引くと、ミサイルが一斉発射され、部屋にいた同盟兵を一掃する。
「大丈夫か!?」
部屋内のガーディアンに駆け寄ろうとしたラドルスの近くに倒れてた同盟兵が立ち上がった。驚き、剣を構えたラドルス。と、銃声が響き、同盟兵の頭部が吹き飛ぶ。それでも体が銃の引き金を引こうとした時、ラドルスと同盟兵の間に黒い影が入り込み、その手に持っていた斧で同盟兵の体を縦に割る。
「油断大敵なのですよ」
斧を下ろした影、黒い躯体に白銀の髪をポニーテールにした小柄なキャストの女性はそういってポケットからタバコを出し、火を点ける。ラドルスが横を見ると、もうひとつあった扉の前に同じ躯体でこちらは髪をそのまま流している女性キャストがライフルの構えを解いている。
「あなた達は、任務完了なのですよ」
タバコを銜えながらその女性キャストはラドルスに向かって微笑む。
「仕事が終わったら即撤収なのですよ〜。でも、二つ注意があるのですよ」
「なんだ?」
「この同盟兵に関しての報告はしないことと、これに関しては口外無用なのですよ。これに関しては、私達のお仕事なのですよ」
「ああ、わかった。それと、助かった。ありがとう」
右手を出すラドルスにその女性キャストは、
「利き手を素直に出すのは感心しないんですよ〜」
と言いつつ、そのまま背を向けて去っていき、ラドルスはそのまま立ちすくんでいた。

「なんか、最近は口外無用ばかりだな」
自分の宿舎に戻り、コーヒーカップを片手に呟くラドルス。りりなはホットミルクの入ったカップを両手で包むように持ちながら頷く。
「でも、よかったですね。収容した皆さんは無事で、アルトさん達は1週間程で退院できるそうですよ」
「ま、心配はしてないさ。にしても・・・」
「なんです?」
「なんか周囲がキナ臭くなってきた。こないだ言ってたローゼノム旅行はちょっと先になりそうだな」
「・・・ですね。でも絶対行きましょうね」
「ああ」
そういってコーヒーを飲み干すラドルスの視線の先には窓越しにパルムが青い光を放っていたのであった。



ガーディアンズコロニーの一室、黒い躯体に白銀の髪の女性キャスト2人が報告をしていた。
「例のモノはキャストにも有効の様なのですよ。念の為と試作ワクチンを投与されていなかったら私達もあぶなかったなのですよ」
「・・・」
「それと、暴走現場の付近でアノ端末を見つけましたんですよ〜。以前、モトゥブの施設で見つかったのと同型なのですよ」
「・・・」
「以上なのですよ〜」
「・・・」


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