第6章 星霊祭

(ストーリーモード:「星霊祭妨害計画」より)


 ガーディアンズコロニー内にあるガーディアンズ本部にあるネーヴの執務室、そこには部屋の主人の他に数人のガーディアンが手渡された一枚のディスクをしげしげと眺めていた。
「なるほどね、先生も総裁もハナっからGRMとイルミナスの関係に気づいてたって訳だ」
やはり、ディスクを手の上で回しながらラドルスが横目で部屋の主を見る。
「ほほほほほ、そう言うなって。機密事項じゃったんだからのぅ」
青髪のガーディアンの視線を受けつつも、ネーヴは顎鬚をしごきながら笑うだけである。
「『じゃった』・・・つまり、もう機密事項ではないと?」
リーファがネーヴが過去形を使った事に気づき、確認の声をあげる。
「いや、通達範囲が広がっただけじゃ。イルミナスに関しては警戒対象として全ガーディアンに通達されるのじゃが・・・」
「このディスクの内容に関しては自分達だけという訳ですか」
と、呟くアーク。
「その中には、諸君等とライアやレオ達の収集した情報をまとめた物が入っておる」
「情報の共有ってとこですか・・・」
事が大きくなってきたって証拠か、と心の中で付け足すラドルス
「そんじゃとこじゃ、各自のチームで目を通した後は破棄するように、以上解散!!」
『了解!!』

「まいったね、こりゃ・・・同盟軍も一枚噛んでるとは・・・」
「前にマガシと戦った時にいたキャストさんはイルミナスの特務兵ですか・・・」
ラドルスの宿舎内、ラドルスとりりなはネーヴから渡されたディスクを見ていた。そこには各所で発見されたGRM社製の端末、そこ周囲で発生したSEEDフォーム、同盟軍の依頼でGRMが製造しているSEEDウィルス、そして・・・
「Aフォトン爆弾ねぇ・・・」
呟き、椅子に座ったままのけぞって天井を見るラドルス。天井の電灯が微かにチラついている。
「どうしました、ラド様」
りりながラドルスの顔を覗き込む
「いやね、事が大きくなりすぎだなぁ〜って思ってね。ガーディアンってよりかは正義のヒーローの領分になりつつあるなぁって」
「このまま宇宙から飛来した謎の大怪獣でも出てくればそうなりますね」
「SEEDも似たようなもんだと思うけどね、まだ人の手で解決できるモノではあるからな」
掛け声をあげて、椅子に座り直し、ラドルスは小声で呟いた。
「人の手で解決できるうちは・・・もう二度と諦めない・・・」
と、部屋の端末が受信音を鳴らし、ガーディアンズ本部からの通達を表示する。それは前もって知らされていたある任務の確認であった。
「星霊祭の警護のお知らせですね。明日の朝、シャトルで出発とのことで〜す」
画面を見たりりなの言葉はラドルスの予想通りである。グラール教団の祭事であるが、毎年巫女の暗殺予告を始めとした、妨害・破壊活動の予告状の見本市となりつつある。
「ま、今年はスペシャルゲストが来そうだから、気合いれないとな」
「は〜いです」

ニューデイズの首都オウトク・シティ、国教でもあるグラール教の教団本部も存在するニューデイズ最大の都市である。その町のシンボルでもあるオウトク山を眺めつつ、ラドルスとりりなは川辺の屋根付ベンチで「オウトクまん」なる肉入り饅頭で遅めの昼食を取っていた。
「前から気になってて、ちょっと冒険だったけど、結構いけるな・・・」
「饅頭というからお菓子と思いましたが、肉入り蒸しパンって感じですねこれ」
周囲には出店が立ち並び、ニューマンを中心とした多くの人が通りを歩いている。しかし、本番の夜になれば通りは人ごみで歩くのもままならない状態になるであろう。ガーディアンズにとっては毎年の恒例行事と化してる星霊祭の警護であるが、それだけの人々の中を警護する苦労に毎年頭を痛めているのである。
「おっと、ここにいましたか・・・」
と、ラドルスの前に巨大な物体が立つ。逆行に目が馴れ見えてきたその姿は紫色の巨大なラッピーであった。それが風船を片手に持ちこちらを見ている。
「・・・ベイさん?」
りりなが下から覗き込んで呟く。その呟き応えるように紫ラッピーがクチバシの部分を少し持ち上げると、そこにはオクリオル・ベイの顔があった。
「そんな着ぐるみで来るとは聞いてないぞ・・・」
「完璧な変装でしょう?こっそり星霊祭の警護というわけです」
なんだか、体中の力が抜ける感覚に襲われるラドルス。正直、その巨大ラッピーは周囲の注目を集めまくっている。警備のガーディアンとは分からないだろうが、「こっそり」の方は無理であろう。
「とりあえず、担当区域に向かうから、着替えて北門に来てくれ」
こめかみを押さえながら言ったラドルスに、
「了解です〜」
紫のラッピーは風船を持ってないほうの羽で敬礼したのであった。

ニューデイズは惑星表面の8割が水に覆われており、その水面上の浮島を大地としている都市もある。そんなオウトク・シティの近くにある浮島の一つにラドルスとりりな、そしてオクリオル・ベイはいた。ここは聖地エガムへの巡礼路の起点となる場所で、星霊祭とその後には聖地巡礼のニューマン達が往来するはずである。
「にしても、巡回して1時間で既に時限爆弾2個か・・・」
「まぁ、簡単な代物でしたけど、明日にでも爆発していたら大変なことになっていましたね」
ラドルスの言葉に続くオクリオル、
「まぁ、そうなんだけどね・・・」
と、正面を見て硬直するラドルス。その目の前にはSEEDフォームの姿あった。
「ラド様いう所のスペシャルゲストさんですね」
SEEDフォーム、パノンが群れを成して歩いてくる。それはゆっくりな動きなのだが、
「ああ、間違いないな。にしても・・・数が多いな・・・」
現在いる場所は巡礼路への道でも大通りに属する所なので、道幅的にはちょっとした空き地位はある。下手に囲まれて、袋にされてはパノン相手といえどもたまらない。と、ラドルスは通信機のスイッチを入れる。接敵までの時間的な余裕が若干あるうちに報告だけは、ということである。
「ルウ、ラドルスだ・・・SEEDフォームに遭遇した」
ラドルスの呼びかけに通信機にルウの顔が出る。
「既に他の場所でも同様の報告が出されています。星霊祭は中止となりました」
「そうか・・・現在位置はマークしているな、この周辺のSEEDフォームを浄化してから再度指示を貰う、以上」
「了解しました」
通信機に映ったルウの顔が消え、グレーの画面に戻る
「周辺のSEEDフォームを浄化ですか・・・結構な数ですよ?」
オクリオルがライフルを構えつつラドルスの横に立つ。
「とはいえ、まさか『数が多いので逃げます〜』とは言えないでしょ。この後ろはそのままオウトク・シティ直行コースだしね」
と、おどけている間にもパノン達が此方に歩いてきている。
「念の為にって事でこいつを持ってきておいて正解だったな・・・」
と、ラドルスが構えるのはシルフィーネの作成した対SEED用フォトン強化型のソードである。シルフィーネが「会心のでき」と言ったそれに、フォトンの強化圧縮処理も行っており、並みのSEEDフォーム相手ならば、十分通用する一振りであろうとラドルスは思っている。ぞくに、光フォトンと言われる理由となった白いフォトン光がソードを構えたラドルスの顔を照らす。
「それでは、援護よろしく!!」
『了解』「です」「で〜す」
二人の声を背に緩やかに駆け出すラドルス、と、数歩目に出した足でそのまま地面を蹴り、一気に間合いを詰め、パノンの先頭集団の目前に止まる。
「そこです!!」
と、オクリオルがライフルを連射し、ラドルスの目前のパノン数体を倒し空間を作る。
「ナイス!!」
ラドルスはそのままバットのスィングの要領でソードの横一回転を行う。その刃に巻き込まれたパノンが煙となって浄化されていく。
「もういっちょ!!」
一回転でで勢いがついた足で地面を蹴り、そのまま逆回転で二振り目、更に同じ要領で三振り目を加え、次々とパノンが煙となっていく
「と、袋にされちゃたまらないっと」
ラドルスの攻撃で空いた空間にパノンが入り込みラドルスを囲もうとするが、その前にラドルスは後ろに下がる。
「んみゅぅ〜」
ラドルスに向かっていたパノンの目前に雷球が飛来し、パノンを巻き込んで弾ける。りりなの放ったノス・ゾンデである。その空間に再び入り、ソードを横に振るい、再度後退しようとした時、視界の端に浮かぶ物体が見えた。
「ベイ殿、3時半の方向!!」
振り返らずに叫びつつ、後ろにジャンプするラドルス。その直前までいた場所にフォイエの炎が着弾し、弾けた。
「ラド様!!」
りりながそのフォイエを撃ったガオゾランに向かってノス・ゾンデを放つ、ガオゾランはワープしそれをかわそうとするが、ノス・ゾンデはそのワープ先に浮遊して行き、ガオゾランの顔面に直撃し、弾けた。が、よろけつつも、ガオゾランはその場に浮いたままである。どうやら、法撃への耐性能力のせいで十分な効果を得られなかったようである。
「いやなのが居ますね・・・しかし、狙い撃ちます!!」
オクリオルがライフルを構えなおして、数発撃ちこむ。それはガオゾランに全て命中し、煙となって浄化された。しかし、その向こうには更に数体のガオゾランの姿が見える。
「ラド様〜、まずいですよ!!一旦さがりましょう!!」
パノンの群れを越え、ガオゾランと戦っているラドルスに、パノンを倒しながらりりなが叫ぶ。
「ダメだ!!下がったら町にSEEDフォームを入れてしまう!!」
最後のガオゾランを倒し、振り返ったラドルスの目の前に、今度はディルナズンの姿が見えた。
「ラドさん!!」
今度はオクリオルが叫ぶ、確かに3人で戦うには数が多いが、ここを退いてもオウトク・シティには星霊祭の警護でガーディアンもグラール教団の衛士もいるのである。入り口で十分防げるとオクリオルは見ていた、そしてラドルスも・・・
「くっ・・・」
ディルナズンの一体を斬り倒し、りりなとオクリオルの所に下がるラドルス。と、その後方を数体のキャストが塞いだ。そのキャストの姿にラドルスは見覚えがあった。
「イルミナスの特務兵!!」
「退路が塞がれましたねぇ・・・」
「ふきゅ」
と、ラドルスの目前でディルナズンの一体の胸にフォトンの矢が刺さった。その飛んできた方向を見ると、オウトク・シティの方向から10人弱の人影がこちらへ向かってきている。その人影は迎撃に向かったイルミナスの特務兵も倒し、ラドルス達の方へ向かってくる。
「その青髪、やっぱりラドか」
集団の先頭を走ってきたヒューマンの男がラドルスに片手を上げ、隣に立つ。見ると、その男を含め、集団は皆黒いコートを着ている。
「レニオスか・・・ってことは、さっきの矢はゼロか?」
「そういうことだ。まぁ、援護させてもらうぞ、総員かかれぇ!!」
ラドルスの問に正面を見つつ答えたレニオスが右手に持ったセイバーを掲げ、掛け声と共に振り下ろす。
「うぉぉぉぉぉぉ、やぁぁぁぁぁぁぁってやるぜぇ!!」
先頭の白髪のビーストがナノブラストを発動し、青いオーラを纏いながらSEEDフォームの集団に突撃していく。それを黒コートの集団が各々の武器を手に追う。それを見送りつつ、ラドルスもソードを構え直し、
「もう一暴れさせてもらうか・・・」
呟いて、黒コートの集団を追って突撃していった。りりながノス・ゾンデを放ち、オクリオルもライフルで狙撃していく。同時にどこからともなく、フォトンの矢が飛んできて、SEEDフォームを倒していく。
形勢逆転、程なくしてイルミナスの特務兵共々、SEEDフォームは全て浄化されたのであった。

「サンクス、危ないところだったよ・・・」
流石に疲れて木の幹に寄りかかったまま、ラドルスは戻ってきたレニオスと横に並んで歩く弓を持ったヒューマンの男に片手を挙げて礼を言う。
「正直、間に合わないと思ったんだけどな」
と、レニオス。彼らはオウトク・シティの警護に就いていたが、ルウから連絡を受けてラドルス達の救援に向かったという。
「殲滅後の報告ってのがなかったせいですな」
そう言ったオクリオルはラドルスの脇に座りこんでいる。因みにりりなはウトウトしながらラドルスの足に寄りかかっている。
「でも、こっちも大変だったんだぜ。オウトク山が消えたり、教団施設にイルミナスが入り込んだり、イーサン・ウェーバーが目撃されたり、その辺片付けてから来たんだから」
ゼロがそういって肩をすくめる
「いや、来てくれただけで感謝しているよ。」
そういってラドルスはそっと座る。りりながその肩にもたれかかって寝息を立て始める。
「・・・相変わらずだなぁ」
その様子を見てレニオスが苦笑する
「まぁね。で、イーサンが出たって、どこに?」
「教団施設の中でライアが見たって話だ。彼女は教団施設内を誘導されたと言っているそうだけど、詳しいことは、ルウにでも聞けば分かるんじゃないかな」
と答えるゼロに、頷くレニオス
「誘導・・・ねぇ」
何かが引っかかるラドルスであったが、それの答えが出るには情報が少ないと思い、それ以上考えるのは止めた。
「その眠り猫さんを起こさないように、静かに帰えりますかね」
オクリオルの言葉に一行は頷き、撤収するのであった。

後日、教団はオウトク山はエネルギー供給装置が回復した為に復活したと発表、同時に教団の星霊主長ルツはイーサン・ウェーバーを正式に告発した・・・


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