第17章 イルミナスの滅んだ日

(ストーリーモード:野望の果て より)


 ラドルスとりりながライア総裁の呼び出しを受けたのは、同盟軍本部の作戦から暫くたったある日の事であった。
「なんだろうね」
「なんでしょうね」
新しい任務なのか、それとも何かバレタのか。後者であった場合は思い当たる節が多すぎて特定ができないな。と、ラドルスが内心苦笑していると、ガーディアンズ本部の入口に人だかりができていた。
「ん?」
怪訝に思いその人だかりの後方でジャンプしながらその中心を伺ってみるラドルス。りりなはその足元でラドルスの言葉を待っている。
「ん〜・・・誰かが簀巻きで吊るされているようなんだが・・・」
「ジャバさんかアルトさんですかね?」
りりなが知り合いのガーディアンの名前を出す。ラドルスも直に浮かんだ顔であるが・・・
「どうやら、クランプさんのようだな」
「ビースト女性は美しくない・・・とか叫びましたかね?」
「暫く前にモトゥブの酒場の前でローグスらしい三人組が『ビーストの女性は世界一美しい』って1000回程言わされたらしいけどね」
等と話していると、近くに見知ったガーディアン―黒コート愛好会の封神―の姿が見えた。
「ふ〜さん、これはなんの騒ぎなんだ?」
「ああ、ラドさんか。なんでも、ネーヴ校長が亡くなった・・・」
『え!?』
一瞬硬直するラドルスとりりな。
「・・・と、勘違いして大騒ぎしたそうだ」
「なんだよ、おどかさないでくれ」
わざとそこで言葉を切ったな。と思いつつもそこまでは口にはしないラドルス。
「それはそうと、総裁のとこに行くんだろ?」
封神の言葉に一瞬驚きつつも、あんたも?と聞き返すラドルスに、封神は肩をすくめて。
「本当は局長が呼ばれたらしいんだが、こんな時に適役なジャバの奴がまだ本調子じゃないんでね、その代役さ。そんな訳だから、一緒に行きますかね」
その言葉にラドルスとりりなは頷き、封神と共に本部に入っていくのであった。

ガーディアンズ本部内の総裁室に通されたラドルス達は先に部屋にいたカーツとルゥに軽く一礼して部屋に入った。入れ替わりに二人はライアに一礼後、部屋を出て行く。
「さて、時間が無いので即本題に入ろう」
ライアはそういって、現在の状況説明に入る。ガジェットの量産基地が見つかり、そこにネーヴ校長達が潜入したこと。その任務はガジェットの有爆装置の無力化であり、それ自体は達成していること。基地へのミサイル攻撃の準備は完了していること。しかし・・・
「ネーヴ先生と同行していたイーサン・ウェーバーがミッシュン完了後にイルミナスに捕縛され、イルミナスからはその身柄との引き換えにコード解除を要求してきている。って訳ですか」
封神の確認の意味もある復唱に頷くライア。
「で、その救出部隊から基地に潜入するとの連絡がきたのは数分前の事だ。しかし、基地内ではジャミングがかけられていて、通信が出来ないために、今後のの状況確認は出来ないと思ったほうがいい」
ライアの言葉にラドルスはフッと微笑し
「まぁ、切り札はこちらにあるとはいえ、救出作戦が難しいこの状況で基地の破壊を優先しないとこが総裁らしいですね」
ラドルスの言葉にライアは何か言いたげな表情をしたが、それをすぐに消して言葉を続ける。
「で、お前達には基地の外縁部まで行って貰いたい。場合によってはそのまま基地に潜入する可能性もある」
ライアはディスプレイに基地周辺の地図を表示させて、ルートと待機場所を指示していく。りりながそれらの情報を端末に入力していくのを横目にラドルスはライアに向き直り尋ねる。
「で、救出部隊ってのは・・・彼女ですかね?」
「彼女と、イーサンの妹だ。状況が状況だが、本人の意思を汲んでの編成だ」
「救出部隊のミッション時間を考えると、のんびりはしてられないですね。」
りりなの言葉に頷き立ち上がり。ラドルスはライアに一礼して部屋を出、りりなと封神もそれに続く。その廊下を歩きながらラドルスは端末でガーディアンの現在位置情報を検索する。
「もう一人欲しいとこだけど・・・おっ、丁度いいのがモトゥブにいる。」
ラドルスはそのままその相手をモトゥブのフライヤーベースで待つように連絡し、返事を確認する前にシャトルに乗り込むのであった。

「まったく、一方的に連絡してきてそのまま編成要請だしてきて・・・更に見たら最後なミッション情報まで送りつけてくるんですから・・・」
苦笑しつつも準備万端で待っていたのはミツであった。既に現地まで行くフライヤーの手配まで済ませてもいたのは流石である。
「文句は飛んでいる最中にまとめて聞くから、さくっと出発!!」
それもそうですね。と呟くミツをはじめとした4人のガーディアンを乗せたフライヤーはモトゥブの空を目的地へを飛んでいくのであった。

イルミナスのガジェット量産基地の外縁部で待機していたラドルス達にライア総裁から連絡が来たのは到着して30分程経過した時であった。その時、待機場所にはモトゥブ支部から後続として来た医療チームと、その護衛の一員として同行してきたアルトとルミナス姿があった。
「作戦は成功し、ハウザーも仕留めたらしいが、急を要する負傷者がいる。直に救援行動に入ってくれ」
「了解」
ライアからの通信にラドルスは『ハウザーが倒れたか』と脅威の一つが取り除かれたという安堵感と自分の手で決着をつけたかったという一抹の無念が混じった思いを巡らせたが、りりなが服の裾を引っ張って行動を促した為に頭を一振りしてそれを振り払い、『俺もついていくぜ』と一方的に言い、ラドルス達の返事も聞かずについて来たアルトと、『レインさんから監視をお願いされているから』と肩をすくめて同行を申し出たルミナスを加えた一行は医療チームの安全確保の為に先行して基地内部へと入る。しかし、入って直にミツが端末情報を見て呟く。
「自分と向こうの位置表示マーカーと周辺の地図表示は生きているんですけど・・・向こうとの通信が出来ませんね」
「こっちもだ・・・ジャミングが完全に解除されてないってことか?」
アルトも端末の通信機能を操作して同意の声を上げる。ラドルスが視線を向けると封神とりりなそしてルミナスが黙って頷く。
「なんか嫌な予感がするな・・・」
右手に持っている武器を握り直して呟いたラドルス。それを待っていたかのように通路の向こうから何かの影が向かってきた。
「特務兵か!?」
ラドルス達を視認し、グレネードを構えた10人弱のキャストの姿を認めてソードを構えて駆け出すラドルス。その横をアルトがソードを、封神がツインセイバーを持ち走る。と、そのアルトの前に黄色い影が立ちふさがり、立ち止まったアルトに向かってナックルをつけた右腕を叩きつける。
「くっ!!」
それをソードで受け止めつつ、反動を利用して間合いを空けるアルト。その間合いを詰めようとする所をアルトはソードで牽制する。そして、ナックルキャストが立ち止まったその隙に自分も武器をナックルに変え、インファイトに持ち込む。そんなアルトの助けに入ろうと振り返ったラドルスの足元にグレネードが炸裂する。
「うぉっと」
それらを避けつつ視線を前方に戻すと、グレネード持ち達の中でその双剣を振るう封神の刃をすり抜けてセイバーを持ったキャストが二人こちらに向かって走ってくるのが見える。
「すまん、そっちを頼む!!」
「ラドさんはセイバー持ちを!!」
封神、ルミナスの順で声がし、グレネード持ちの一人がルミナスのものであろうライフルに撃たれて体勢を崩す。その横のグレネード持ちもミツのライフル弾にグレネードを弾かれる。
「右側はお任せしました」
りりながラドルスの脇に立ち、左側を走ってくるセイバー持ちに対してノス・ディーガを放つ。そしてもう一人のセイバー持ちがラドルスに向かってその武器を下段から振り上げる。それを半歩下がってかわし、その脇腹へソードを叩きつけようとするが、キャストはそのまま飛び上がりラドルスのソードの横薙ぎを飛び越える。・・・が、
「甘い!!」
ミツが空中のそれい対してすかさず狙いをつけてライフルを連射する。流石にそれはかわせずに吹き飛ばされるセイバー持ちキャスト。床に叩きつけられ、立ち上がる前にソードをその胸に突き立てるラドルス。セイバー持ちは数度痙攣してそのまま動かなくなる。
ミツに対して親指を立てた左拳を見せ、もう一人のセイバー持ちはりりなに近付けもできないことを確認し、そのままグレネード持ちに突撃していくラドルス。そして、それを妨害したくても、前方に立ちふさがった小柄なビースト娘のテクニック攻撃に一方的に翻弄されるセイバー持ちキャスト。が、そのテクニック攻撃が一瞬止まる。フォトン切れか?と一歩踏み出してセイバーを振り上げたキャストにりりなのレグランツが炸裂する。セイバー持ちはそのまま壁に叩きつけられたままレグランツの衝撃を受け続け、動かなくなる。それを確認した後、ラドルスへの援護攻撃に切り替えるりりな。そして、その脇でアルトはナックルキャストと拳を撃ち合っていた。
「なんか、あっちで別世界が出来てるんですけど、援護しなくていいんですかね?」
「あんだけ近いと間違えてアルト君撃っちゃいそうだし、いいんじゃない」
ライフルを撃ちながら隣で同じくライフルを構えているルミナスに尋ねるミツに一瞬アルトの方を見てルミナス。が、その直後に何かを思いついた様な顔をして叫ぶ。
「みんな、避けて!!」
ルミナスの意図を察して通路の左右に散るりりなとラドルス、慌てて敵の中を壁際に向かって走っていく封神、そして、
「一番目立つ所に立ちやがれ!!」
キャストに組み付き、そのまま通路の中央にキャストを投げ飛ばすアルト。その直後通路を白光が突き抜ける。ルミナスのSUVから放たれたその光が消えた時には通路に動く敵の姿はなくなっていた。
「相変わらずおっそろしい威力だなぁ」
アルトがキャストの残骸を見て呟くが、ナックルを構える。その様子に前を見たラドルス達の前に赤い影が歩いてくるのが見えた。
「成程、イーサンや小娘の後詰が既に入ってきてたか」
独白したのはその両手にツーヘッドラグナスを構えるマガシであった。

「こいつ、なんか異様に強いんだけど!?」
「例の劣化コピーじゃなくて、話に聞いてたエンドラムのマガシ並ですよ、これ」
アルトとミツの言葉にマガシの前でソードを構えて内心頷くラドルス。今目の前に立っているマガシはラドルス達6人を苦もなく一度に相手にしているのであった。
「時間が無い!!ここは俺に任せて、医療チームを連れて奥へ行ってくれ!!」
「フッ」
ラドルスがルミナスへ叫ぶと同時にマガシがその双剣を同時に突き出して突撃してくる。それを右にかわすラドルス。マガシの剣はそのまま壁に突き刺さり、壁を破る。
「!?」
勢い余った形でそのまま壁の向こうへ消えるマガシ。その穴の前に立ち、ルミナスに顎で奥へ進むように再度促し、ラドルスはそのまま通路の穴の中に入る。りりなが慌ててそれを追う。
「どうする?」
アルトの問いにルミナスは後ろからこちらを伺う後方の医療チームを手招きし、残った一同と共に通路を奥へと進んでいくのであった。

「さて、あのメンバーを通してくれた事に礼を言えばいいのかな?」
ソードを構えたまま、通路の穴から入った部屋の中で待っていたマガシにラドルス。
「単なる気まぐれだ、礼には及ばんさ」
剣を持ったまま両腕を左右に広げて答えるマガシ。
「ラド様!!」
後方から自分にかけられた声にその主を確認することも当然なく、『まぁ、来るとは思ったけどね』と口の中で呟くラドルス。そして、そのままマガシに斬りかかる。
「ほう」
同時に自分に向かって放たれたノス・ディーガの軌道からバックステップで抜け。ラドルスのソードを左手の剣で受け止め、感嘆の声を上げるマガシ
「わざわざ声を掛け合う必要もないという訳か」
そのまま右手の剣を振るうマガシ。ラドルスはソードを一度押し込んだ後に左手を軸にして身体を床に滑らせ、そのままマガシの足元を払う。体勢を崩したマガシに向かって追い討ちの雷球が直撃し、マガシは苦悶の声をあげて床に倒れる。
「もらった!!」
回転の反動を利用して立ち上がったラドルスは倒れたマガシの頭に向かってソードを突き刺す。が、マガシは身体を転がしてそれをさけ、ラドルスのソードはそのまま床に刺さる。それを床から抜く前にマガシの蹴りがラドルスの襲うがそれをソードから手を放し上半身をそらしてかわす。しかし、今度はマガシの起き上がりざまの横薙ぎが襲い掛かる。ラドルスは数歩下がって更にかわし、向き直った時には、目の前にマガシの突きが迫っていた。
「くっ」
フォトンとフォトンが触れ合う音がし、ラドルスが咄嗟に取り出したソードがマガシの双剣の片割れを弾き飛ばす。そこへりりなの雷球が立て続けに放たれ、マガシがそれをかわしつつ、床に落ちた剣を拾おうとする。
「ラド様!!」
りりなが声を攻撃を促す声にラドルスは手元にあるソードを見たまま硬直していたラドルスが我に返り、一瞬躊躇した後にそのソードを振るう。それを拾った方の剣で受け止めたマガシであったが、ラドルスのソードはその剣を形作っていた炎のフォトンを砕き、マガシの腕に喰い込む。
「くっ、それがハウザーが話していた武器か!!」
ラドルスはそれには答えずにソードを戻し、再度斬りかかるが、マガシが残った剣をラドルスに向かって投げつける。それをソードで弾いた時にはマガシはりりなの雷球をかわしつつ部屋の穴から外に出ていた。
「逃がしちゃいましたね」
りりなの言葉に何も言わず、ラドルスは持っていたソードをしまい、床に刺さったままだったソードを抜く。
「使っちまった・・・な」
ラドルスの小さく呟く声が微かに耳に入ったりりなであった。

ラドルスとりりなはネーヴ校長達と基地内に囚われていたオルソン・ウェーバーを救出し基地を脱出してきたルミナス達と合流し、同盟軍の駐留ポイントまで戻った。イルミナスのガジェット量産基地はミサイル攻撃で完全に破壊され、同日ガーディアンズはイルミナスの壊滅を宣言する。また、GRM社もイルミナスへの関連の証拠を入手したガーディアンズによって捜査の手が入るのであった。

グラール太陽系の脅威の一つであったイルミナスが壊滅した事により、ガーディアンズを始めとするグラール太陽系の各勢力は対SEEDへと動き出すのであった。
そんな中、再度リュクロスで調査を行っていたトムレイン博士が帰還する。その報告の中には第四の封印装置に関するものがあったのである・・・。


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